圧迫面接の記憶
圧迫面接なんてね、要らないんですよ。本当に。
かつて私がある施設の面接に行った時の話です。
そこは株式会社が運営しているグループで市内に新たな施設を建てるという事で興味を持って電話しました。
面接場所となっている事務所はアパートの一室。
不安と期待を感じながら部屋に通されます。
面接を担当するのはトップの方と総務の方、後は施設長だという方の3名。
私の経歴をしばらくじっと見つめていましたがやがて、トップの方が口を開きます。
「A施設の理念は何ですか?」
A施設とは10年以上前、私が初めて務めた施設です。
はっきり言います。『知らんがな』。
そもそも基本的にそこと何かしらあったのだから退職しているわけです。
そんなもの覚えているわけがない。
なんかおかしいなと思いつつ面接を進めていく中で段々と気づきました。
あっ、これ『圧迫面接』になっている。
まず、その時私の勤めている施設について『うーん、知らないねぇ。弱小施設なのかな』と居場所自体を否定。
そこにすかさず、自分達の会社の実績やらを高々に自慢します。
確かに聞いているとすごいとは思いますが……『いや、業界的にはお前らの方が知らんし』と感想を抱きました。
この段階でかなり冷めています。
更に私がどんな仕事をして来たかということも徹底的にダメ出しをして行き委縮させていきます。
面白いな、と思ったのは3人中1人は時折助け舟を出しているんですね。
多分、トップと施設長がムチで総務がアメです。
まあ、時間が経ってからそうだったろうなと言えるだけで当時は頭が真っ白になりました。
そしてしばらくしてトップが一言。
「君、人生楽しい?君が生きてきた人生って、意味が無かったよね?」
凄まじい衝撃に項垂れました。
ただ、同時に覚醒もしました。この場合、キレたんです。
キレたと言っても大声を出したとか暴れたとかじゃありません。
単純に『相手に興味が無くなった』んです。
それと同時に頭がさえて来て周囲の音がよく聞こえます。
隣の部屋では部下を罵倒している上司らしき声。
面接部屋を平然と通り過ぎていくスタッフなど、なるほどねぇという感じになって行きました。
そしてここからトップの方が『だが君はきちんとスーツを着てきている。昨今の若者にしてはとても見どころがあると思ったよ』と急に持ち上げ始めました。
そこから先ほどの圧迫が嘘のように優しくなり、自分達がどれ程利用者の事を想いながら仕事をしているかなどを語り出します。
グループの理念が書かれた冊子を手渡され経営理念を大きな声で何度も復唱。説明を始めます。
この段階で私にとっては大分気持ち悪いです。
洗脳系だなぁ……と思いました。
更に現在リーダーをしているというスタッフが呼ばれ体験談を聞かされます。
難しい対応の利用者が居てその方の対応を考えて夜中の2時まで施設で悩み答えを出せた時は涙が溢れ出てきたそうです。
いや、帰りましょう。労基に摘発されますよあなた。
ちなみに私も対応の難しい方の事で悩んだりしますが残業は最大でも+1時間半迄です。
1時間半で目途が立たないものなんかその後いくら考えてもパフォーマンスが低下している状態でいい案が思いつくはずがない。
そんなもの家に帰って風呂に入って寝てから考えた方がマシです。
いいネタが浮かばなくて悩んでる時、他の作家さんが書いた作品を呼んでいたら天啓がひらめくのと同じです。
という風にどんどん私はドライになって行きます。
まあ、敵地なので口には出しませんが。
何というか、何年か前に人格否定の新人研修やらが問題になったことがありましたが今思えばそういうものに近いものを感じました。
最終的には何かのスピーチ大会の動画、約30分を見せられました。
内容的には『私はかつてこんなダメな職員でしたがここに入れて生まれ変わりました』という内容のもので最後は涙ぐんでいました。
うん、ごめん。何というか…………気持ち悪い。
ついでに何か喋るのも下手だなぁとか心の中で欠伸をしながら聞いていました。
Youtuberの方々の喋りの足元にも及ばない感じです。
スピーチとは違うんだよと思う方もいるかもしれませんが聞いている人の心に響かないなら結局は喋っていないのと同じだと思いました。
普通に考えたら不採用のはずですが『今日の面接を踏まえた上で次の面接に臨んで欲しいからまた連絡をくれ給え』と言われ面接は終了。
時間にして2時間半。恐らく私が今まで経験した中で最長の面接でした。
ちなみに連絡をしたかって?
勿論しませんでした。
これから就職・転職される人は考えてみてください。
人格を否定されたり過度なストレスを与えられてまでその企業なんかに入りたいですか?
あなたの人生は、あなただけのものです。初対面の人にそんな風にけなされる筋合いは無いんですよ。