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選ばれなかった俺が彼女を諦めるまで  作者: わだち
序章 彼女を諦める決意をするまで
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プロローグ

 雪が降り、どんよりとした分厚い雲が空を覆う中、千歳春陽とその幼馴染の美藤啓二は校舎裏にいた。


「本当に、告白するの……?」

「ああ」


 啓二の問いに春陽が答える。

 二人の口から漏れる白い吐息は宙へと消えていった。


「そっか……」


 啓二は視線を下げてから、唇を噛み締める。

 これから起きることは彼にとってはあまり気持ちのいいものではない。幼馴染の険しい表情を見た春陽は口をおもむろに開く。


「そろそろ時間だ」

「うん、分かった」

「お前は、いいんだな?」


 春陽が啓二の目を見据える。これが春陽から啓二への最終確認だった。

 その春陽の言葉に啓二は視線を下げたまま頷いた。そして、そのままその場を離れ、校舎の影に消えていった。


 啓二がいなくなってから直ぐに、春陽の下へ一人の少女がやって来る。

 ハーフアップにされたよく目立つ濃い桃色の髪に、クリッとした大きな瞳。

 美少女というより、可愛らしい顔だちの少女は春陽と啓二の幼馴染である桃峰花恋だった。


「春陽君、おまたせ。それで、話って何かな?」


 柔らかな笑みを浮かべる花恋。その笑顔は春陽にとってはもう見慣れたものだ。

 春陽が花恋と初めて出会った頃からもう十年以上の月日が流れている。春陽は幾度となく花恋の笑顔に救われてきた。

 だからこそ、この少女の隣に立って、自分が花恋を笑顔にしてあげたい。

 その意志を胸に宿し、今日春陽は幼馴染という関係を終わらせるつもりだった。


「花恋、俺――」

「見つけた」


 不意に響き渡る艶のある女性の声。

 それとほぼ同時に春陽は花恋の背後から迫る校庭に生えている木を優に超える背丈の化け物に気付いた。


「花恋!!」


 春陽が花恋の身体を突き飛ばす。

 その直後、春陽の身体は化け物が振るった腕に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。


「はずれ。じゃあ、あなたね」


 そう言うと女性と化け物は、春陽に突き飛ばされ、体勢を崩している花恋に狙いを定める。

 その様子を啓二は声すら出すことが出来ずに見つめていた。


(い、行かなきゃ……守らなきゃ、なのに、なんで震えるんだ!)


 頭で理解していても身体が上手く動かない。

 何時だってそうだった。啓二の前には春陽と花恋がいた。

 啓二は二人に引っ張られるだけ。一人では何も出来ない弱い人間。

 だが、もう春陽は倒された。そして、花恋さえも化け物の手にかかろうとしていた。


(ごめん、ごめんごめんごめん! 僕に力が、勇気があれば!)


 啓二が己の無力に嘆き、強く目をつぶった時、奇跡は起きた。

 いや、それは奇跡ではなく運命だった。


「美藤啓二、君は僕らに選ばれた。君に世界を救う力を与えよう。君が望めば運命は君の思いのままだ。さあ、どうする?」


 啓二の前に姿を現したのは手のひらサイズの羽が生えた小人。

 どこか神聖なオーラを身に纏った小人の声に啓二は狼狽えていた。だが、不思議とその小人に対する疑心というものは無かった。

 花恋を救いたい。


 その一心で啓二は小人の手を取る。


「歓迎しよう。僕らの愛しい天子」


 そして、美藤啓二の物語は幕を開けた。

 選ばれた彼は、その力で三人の少女を選ぶことになる。


 だが、選ばれた者がいるということは、選ばれなかった者がいるということに他ならない。

 選ばれず、運命にその高校生活を翻弄されることになる一人の少年。

 

 その少年は捻じ曲げられた運命の中で何を掴むのか。はたまた、何も掴むことが出来ぬまま諦めて終わるのか。


 これは、選ばれなかった少年の物語。


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