前衛主義者の嘱託
"まずいわ。"
櫛田コマは憤りを感じていた。
若手アーティストにないのは、
煩悩だ。
アートはkarmaであるとは、
よく言ったものだ。
"若手の情念が見たい。"
コマはアーティストでありながら、
批評もかなり有名であった。
批判精神を制御する時代。
ガイドラインと
コンプライアンスで
アートはもはや死に際。
なんなら売れっ子の歌手の方が
社会派だ。
アートが終わる目前に
コマはうって出た。
1000万アート展
1000万に作品がなるまで
飾り続けられる常設展。
参加を希望した若手は793名。
55作品を厳選した。
初日に1000万がついたのは7作品。
コマは涙した。
逆だとわかる。
アーティストの表現の場がない。
私達、長者が、
場を与えればいいのだ。
あれから7年経つ。
作品は総替え。
全て売れたのだ。
"コマは画商じゃないのにね。"
笑うアーティストはいない。
売れたければ消えるな。