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処の境界  作者: 成橋 阿樹
第二章 道と界
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第1話 連携

 羽矢さんに呼ばれて、僕と蓮は羽矢さんの寺院へと向かった。


「この間の法要の時の、冥府から消えた魂が見つかったよ。今から冥府に行って閻王に会うが、お前たちも行くか? まあ、魂は既に冥府に送っているんだがな……」

「ああ、行くよ。それにしても、何処で見つけたんだ?」

「それがな……」

 羽矢さんが苦笑を見せる。

 閻王の像が置かれている堂の前で話をしていた僕たちのところへと、住職がやってきた。

 互いに頭を下げ、挨拶を交わす。

「どうやら間に合ったようですね」

 住職は、そう言ってニッコリと笑みを見せた。

 そんな住職に目線を送る羽矢さんは、長い溜息を漏らした。

「御住職……もしかして……」

 蓮は、羽矢さんと住職の様子で察したようだった。


「狩り……ました?」


 蓮の言葉に住職は、ただ笑みを見せるだけだったが、その笑みはそうだと言っているようなものだった。

 ……死神が……二人……。


「これから冥府に行かれるのでしょう? 閻王によろしくお伝え下さい。では……また」

 閻王によろしく……その言葉がもう凄い……。

 住職は、そう言って頭を下げると、行ってしまった。

 住職の姿を見送りながら、羽矢さんはゆっくりと口を開いた。


「ジジイ……初めからそのつもりで俺たちを冥府に行かせたんだよ」

 確かに……住職はあの時、羽矢さんと冥府に()()()()()()と言っていた。

「住職は、今は冥府には行っていないんだろ?」

「まあな。確かに、冥府に魂が現れなかった時点で下界に戻っても、冥府と下界の時の差からしても間に合わない。まあ、下界に逃げるまでに間に合えば別だけどな。それに、冥府にある魂が戻る場所って、そもそもが下界だろ?」

「それで下界にいる住職が狩ったって訳か」

「ああ。まあ、結界は既に張ってあったからな。戻って来る場所も決まっていたって訳だ」

「藤兼家が、閻王の絶対的な信頼を得ているのも納得だ」

「ジジイには敵わねえよ、本当に……」

「はは。冥府と下界で連携が取れているんなら、逃げる魂も逃げられないな」

「連携っていうより、ジジイの思惑通りって感じだけどな。はは……。まあ、それよりも……」

「……ああ」

 二人の表情が真顔に変わる。


「なあ、蓮。廃仏毀釈を行ったのは、神職者。そもそもそれは、一人や二人じゃないって事だろ」

「まあな……奴が言っていた正体を隠した化身に、眷属か。眷属なんか、正体によっては山程いるぞ」

「そうだな……正体によっては山程いるな……」

 神司が残していった言葉。

 あの神司以外にも、企みを持った者がいるって事だ。


『どの界にも正体を隠した化身がいる事をお忘れなく……勿論、その眷属も』


 どの界にも……か。

 だから冥府に行くんだ。その化身を見つける為に。


「それで、だ」

「なんだ、羽矢」

「どの界から行く?」

「……」

「黙るなよ、蓮」

「どの界って……それって六道のうちって事だろ……」

「勿論、そうだよ」

 羽矢さんをじっと見る蓮の表情は、全くの無だった。

 少し間が開いた後、蓮は大きな溜息をついた。


 気が進まなくなるのも分かるけど……。


 羽矢さんは、ニッコリと笑って言った。


 その言葉……その表情で言いますか……。


「やっぱりここは奈落……『地獄』巡りっていうのはどうだ?」

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