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処の境界  作者: 成橋 阿樹
第5章 偈と詞
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第11話 乖離

『廃仏毀釈を行ったのは、神職者だけじゃない。檀信徒もだ』


 神職者だけではなく、檀信徒も……。

 あの神社にしたって、人形(ひとかた)の数が物語っていた。


 この闇は怨念そのものであり、その怨念が呪力となって膨らんでいる。

 廃仏毀釈を行った神職者に同調して、檀信徒が協力体制を結んでいたなら、行動を共にした檀信徒は、氏子になったとしても不思議はない。

 ましてや、仏の像を破壊するに至って、祟りを恐れていたくらいだ、神の加護を願っても不思議はない。

 これが……眷属だという意味なのか……。

 それならば、神職者に従った氏子は、神の力になる為の命を注いだと言えるのではないだろうか。


 闇の中に見える、無数の目。高宮と対峙した時にも、同じものを目にしていた。

 眷属であるならば、主となる神に従うはず。

 主となる神職者に従うと言い換えられるのだろう。

 確かに神職者なら、その術がどのように作用するか分かっている。なればこそ、氏子に神の力を与え 、神にでもなれるものだと、吹き込む事も出来たのでは。

 そして、神の力を使う事が出来る術も手に入れる事は出来た……。

 それが呪殺に繋がった。それは互いに互いを、だ。


 バラけていた闇も、結び付くと畏れを知らない……か。

『まったくだ。力を得たと思っているんだろうが、それが増長だと気づかない事に悲しくなるな』

 蓮がそう言うのも当然だ。

 畏敬の念を示すのは、祝詞(のりと)に表されている。

 神の力を願うなればこそのものなのに……。


 この闇……怨念の量はかなりの量だ。

 当主様たちは、重くも()し掛かってくる闇を分散させ、怨念を抑えようとしているが、分散してもまた結び付き、大きな闇となって膨らみ続ける。

 蓮と羽矢さんが、その闇へと向かい、当主様たちの向かい側へと立った。

 膨らみ続ける闇は大きくなるばかりだが、蓮と羽矢さんが当主様たちの向いに立った事で、闇が間となる。


 ……この位置って……。

 僕は目を見張った。


 鳥居、楼門を抜けたところに、この社殿がある。

 闇の位置は、その参道を真っ直ぐに抜けた位置だ。

 そして、闇を放つ神職者たちも同じ位置にいる。


 ……何故、その位置に……。


 蓮が知らない訳がない。

 そして当主様も、神祇伯である回向の父親も、蓮と羽矢さんがそこに立った事で、闇が真ん中になっている事に理解を示しているように思えた。

 蓮と羽矢さんに向けて、神祇伯が合図をするように頷きを見せた。

 神祇伯に答えるように、蓮と羽矢さんも頷きを見せる。

 その後、直ぐに、神祇伯が大きく拍手(かしわで)を打った。

 その瞬間に闇が大きく広がり、空間全てを覆い尽くした。

 僕の目に、誰の姿も捉えられなくなった。

 真っ暗だった。

 何も見えない。


 その術がどのように作用するか……知らないはずはない。

 神職者なら尚更だ。


 呪殺を叶える呪いの神社……廃社同然となりながらも、その怨念は生き続けていた。

 それは祟りだと、明らかになる事だろう。


 神前へと向かったなら、その神の意向に従わなければならない。

 それに反して身勝手な行いをすれば、神の目の前で非礼を働いたという事だ。

 これは……。


 非礼を働けば、神の怒りを買い、怒りを買えば当然、(わざわい)が降り掛かる。

 それは、非礼を働いた者に対しても。

 そして同時に……。


 僕の鼓動が速くなる。


 蓮……当主様……。


 その神社の神職者にも降り掛かる、大きな……。


 連帯責任だ。

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