表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/8

一話 始まりの

初投稿です。楽しんで頂ければ幸いです。

 俺は高校の屋上で星を見ていた筈だ。それで、確か流れ星が見えて、そうだ、願いを三回唱えたんだ。


「狹夜が見つかりますように。」


 って。そしたら光に包まれて、えっと、此処は何処だ?トンネルの中みたいだ。凄いスピードで体が前に進んでいるんだが。いや、流されてるのか?前に光が見える。その光が段々大きくなって、


「よくぞ来た。」


 俺は、仰向けに寝転がっていた。上は真っ暗だ。すぐ左でガンッと大きい音がした。そっちを見たら女の子が頭押さえて転がっていた。その先には何本か足が見える。右側から咳き込む音がした。誰かいるみたいだ。兎に角、起き上がって周囲の確認をしよう。と、思って前を向いた所で固まった。


 此処は、闇に覆われていた。その闇にあって唯一の光源が、目の前の大きなステンドグラスだ。闇から浮かび上がるように存在している。そして、その前に立つ俯いた女性。キトンと呼ばれる衣装を黒く染め上げた服を纏った姿は美しい。また、足元まである長い黒髪は神秘的だった。彼女は顔を上げた。


「大丈夫か。」


 年齢の分からない美貌、紅く光る双眸は神々しさと妖しさを感じさせた。それと、さっきの声も彼女だったみたいだ。


「はっ、はい!」


 頭を押さえた子が答えた。


「そうか、何よりだ。まあ、楽にしてくれ。」


 俺は体を起こした。見回すと、十人以上の人がいる。皆同じ高校の制服を来ている。そして、俺以外全員立っている。俺も急いで立ち上がった。


「座ってくれて良いんだが、まあいい。時間が無い。説明を始めよう。私は神で、此処は神界、お前達はこれから異世界に送られる。其処で魔王と呼ばれる奴を倒すんだ。当然、その為のある程度の力――まあ、異能だな、それも渡す。」


 異世界転移、なのか?フィクションじゃ無く?いやいや、流石にそれは困る。あれはフィクションだから良いのであって、リアルは無理だ。大体、何で俺がそんなことしなくちゃいけないんだ。


「巫山戯ないで!何で私が行かなくちゃいけないの!」


 ほら、俺と同じ考えの奴がいた。優しそうな女の子だが、発言はキツいな。正しいこと言ってる分だけキツく聞こえる。


「まあ聞け。魔王を倒せば元の世界に帰れるか、こっちに留まるか選べる。そして、倒した者は一つだけ願いが叶えられる。」


 願い?それが叶うのか?どんなものでも?


「それは、どんな願いでも叶うのか?」


「まあ、叶える願いを無限に増やすとかは無理だが、大抵の願いは叶えられる。そうだな、物で言えば金、異性のパートナー、それに永久機関だって手に入る。不老不死でも、美しい体でも、自由でも時間でも世界に有り得ないものだって手に入る。」


 ヤバイ、こっちを見られると何も考えられなくなりそうだ。叶えたい願いはある。だが、本当なのだろうか?正直言って怪しい。何でも叶うなんて都合が良すぎる。


「それは信用出来ねえ。何か誓いなり契約なり出来ないのか?」


 年上の校章を着けた男の人が言った。ふと思ったが、俺の知り合いはこの中に居ないみたいだ。


「ああ、信用できないのも当然だ。こちらもちゃんと用意してある。これを見てくれ。」


 そう言って彼女が取り出したのは分厚く白い本だ。と言うか何処から取り出したんだ?虚空から取り出したように見えたんだが。


「これは《葬頭河橋書(そうずかばしのしょ)》。主神様の持つ四つの宝物、その内の一つだ。これは条件を満たせば強制的に願いを叶える神器。一度契ってしまえば私では解けないな。これを介してお前達と契約を結ぶ――――対象、code5-002から014。code5-001の殺害を条件にcode1-004と契約を結ぶ。私は同意しよう。さあ、同意するか?」


 本が光る。小さな二から十四と、大きな四の数字が宙に浮く。と思えば、大きな四が本に吸い込まれた。魔法、だと思う。異世界に行けると言うのは本当みたいだ。ただ……やはり信じられない。


「同意します!」


「同意させて頂きます。」


「同意させて。」


『同意します。』


 おいおい、何でさっきの優しそうな女の子が同意しているんだ?他にも四人同意した奴がいる。その内二人は双子か?男女でそっくりの双子なんているんだな。それに頭を打っていた女の子。さらに覚悟を決めた目をした女の人。二、三、四、十一、十二の数字が本に飛び込んでいく。五人はどこか不思議そうな顔になって、体を触っている。


「何をしたんだ?」


 今度は年下の校章を着けた、少し右に姿勢の片寄った男子が言った。


「ああ、同意した奴はこっちの世界で生きられるように体を作り変えている。害は無いから安心してくれ。」


 五人が急に暴れだしたりとかは無い。洗脳的な危ない感じも無い。……どうせ流れ星に言うような願いだ。元の世界で叶うことは無いだろう。だったら見えた希望にすがった方が良いんじゃないか?


「俺も同意する。」


 十四の数字が飛び込んだ。一瞬、俺の体に違和感が生じてすぐに消えた。不思議な気分だ。


「私も同意するわ。」


「私も、ケホッ、同意します。」


 真っ直ぐ前を見ている後輩らしき女の子。咳き込んでいた女の子。五と十の数字も飛び込んだ。


「同意しよう。」


「俺も同意する!」


「私も同意しま~す。」


 さっきの男の先輩と後輩、それに先輩らしき女の人も同意した。六と七、十三も飛び込んで、八と九が残っている。


「俺にも同意させてくれ。」


 責任感の強そうな先輩が同意した。これで八だけが残った。唯一同意していない俯いた女の子は萎縮しながら言った。


「ごめん……なさい。私は、帰らないと……あの、その、夕御飯を作らないといけないので……ごめんなさい。」


「大丈夫だ。お前の親の記憶からお前を無くしてやる。」


 女の子が床から視線を上げる。


「本当……ですか?」


 彼女が女の子にそう伝えただけで、彼女はあっさりと未練を無くしたらしい。親の記憶からいなくなるってむしろショックじゃ無いのか?


「同意します。」


 これで八の数字も飛び込んで、結局、全員同意した。急に異世界に行けと言われて全員同意なんて有り得るのか?異世界に行ってくれそうな奴を集めたとか、そういったことをしたのだろうか。


「まあ、聞いてくれ。さっきも言った通り、叶えられる願いは一人だけ、一つだけだ。魔王に致命傷を与えた奴だな。そいつだけが叶える権利を得られる。」


 気になって、さっきの双子を見た。頷きあっている。どうやらそのルールでも問題は無いみたいだ。


「で、その魔王だが、主神様が召喚した先代の勇者だ。ああ、忘れていたがお前達のこっちでの扱いは勇者だからな。覚えておけ。」


 先代の勇者?それに勝てるのか?と言うかそもそも魔王が勇者ってどういうことだ?


「先代の勇者が魔王って、ど~いうことですかぁ?」


 さっきの先輩だけど……話し方の癖が強いな。


「体は勇者と言う言い方が正しいな。先代の勇者は確かに魔王を打倒した。しかし、その後暫くして魔王を共に倒した仲間を襲いだしたんだ。それに対抗した勇者のパーティーメンバーは、一度無力化に成功する。だが、どういう訳か復活し、村々を転々としては魔物に襲わせることを繰り返した。知り合いのことも完全に忘れていてな。ここ数年は行方が分かっていないが、何処かで魔物と暮らしていると思われる。体を変えた時に、視認すれば直感で魔王と分かるようにしておいたから、それを信じてくれ。」


「そいつを見つけ次第殺せば良いんだな?」


 と責任感の強そうな先輩。


「そうだが……人を殺すのに躊躇いは無いのか。まあ、もうすでに奴は何十という村を壊滅させている。情けをかけたら死ぬから、油断はするなよ。っと、もう時間が無い。後は異能の説明か。本来は選ばせてやりたいのだが、この場所に長くお前達を置けないんだ。お前達の素質を見て私が勝手に選ぶ。すまないが、良いだろうか?」


 そんな顔で見られると、こっちが申し訳無くなるな……。


「大丈夫です。」


 と最初の方で同意した女の人。先輩の校章を着けた、覚悟の決まっている人だ。周囲を見ても、他に異論を挟む人は居ない。


「そうか、ありがとう。もう時間が無い。送ってしまうぞ。場所はバラバラになるが……そこの双子は近くにしておこう。力は送る時に渡す。――転移させるぞ。どうか、頑張ってくれ。」


 一瞬真っ暗になって、次の瞬間にはまたトンネルのような場所だった。周囲に人は居ない。そして、頭に俺の異能が入ってくる……!


  異能〖心に千々の毒花を〗

  血は毒となり、己以外の普く全てを蝕む


 自傷系能力か?毒の強さは?分からないけどカウンターとしては便利そうだ。まあ、能力の実験は後でやろう。それより前の光が大きくなってきた。着いた先次第でこれからの身の振り方が変わるからな。気を張って行こう。


 地面に足が着いたことを感じた。次の瞬間、暗かった視界に何か映り、そして意識が暗転した。

次話で戦闘があります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ