閑話 主人公が一人の時一方で
【アラン視点】
フローラたちが部屋から出て遠ざかったのを確認して、話を始める。
「一先ずそこのメイドよ、悪いがこの部屋から退出願いたいがよいだろうか?」
「か、畏まりました」
魔道具を持ってきたメイドがこの部屋から逃げるように出ていく。
「私が、私がいけないのよ。きっとあの時にあんな事が起きたからフローラは……」
メイドが出てすぐにフロメリが泣きながら取り乱し始めた。
おそらくあの時というのは、フローラを産んだ時に心臓が止まっていた事だろう。
「落ち着くんだフロメリ。今は原因を探すより今後の事を考える事を優先しよう。後悔とかはその後だ」
ひとまず、フロメリを落ち着かせる為に考える内容の変更から始める。私もあの時が原因である可能性が一番高いと見てるため、この話題から極力遠ざけたかったのもある。
「そう……よね。まずはフローラたちの今後の事について考えましょう。大人の事情はその後よ」
フロメリが、少しだけ顔の表情が良くなったような気がするので少し安心する。
「さて、まずはソフィーから決めようと思うが……ソフィーの教育はソフィーの両親が決める方が良いだろう」
「それは賛成ね。けど、新しい魔法だし、私たちの町の方が魔法や武術等は進んでるからこちらでスキルのレベル上げになると思うけどね」
「クラリナの言う通りその可能性が一番高いな……。次にメリーだが、デビュタントの時に鑑定持ちの他の貴族に見られるからスキルを隠し通すのは無理だ。こればかりは我々がメリーが力をつけるまで守ってやらねばな」
「そうね。けど、光と回復魔法を両方教えられる人って私たちの知り合いにいないような……。アラン、クラリナ、誰か知ってる?」
「確か、ソフィーの専属メイドが回復と光の魔法を持っていたはずだ」
「ソフィーがここで教育するなら問題無いわね。槍も私が教えれるし、弓もフロメリが教えられるからね」
「では最後にフローラだな」
私がそう言った途端周りは俯いてしまう。
はっきり言って、フローラに教ええるにしても貴族の礼儀作法と勉強ぐらいで、スキルを持っていないのでそれ以上教えるモノがないのだ。
「そのことだけどね。実はフローラはスキルを持ってるのよ」
「どういうこと? あの時クリアナは嘘をついたってこと?」
フロメリが問い詰める様にクラリナに顔を近づけて、更に近づけて………流石に鼻が当たる程近づかなくてもよくないか?
「ちょっと、フロメリ落ち着いて、落ち着いてちゃんと理由を言うから」
「ご、ごめんなさい。つい、私ったら……」
「フロメリの気持ちもわかるわよ。そしてね、フローラの鑑定結果だけどね、何一つとして見えなかったと言ったけど、その時に隠蔽で鑑定を妨害されてる感覚があったのよ。これは鑑定を沢山してきた私みたいな冒険者ぐらいじゃないと分からない事だけどね」
「鑑定から防ぐには確か隠蔽のスキルを持ってて、スキルレベルと所持スキル数のどちらかでもいいから圧倒的に上回ってればできるんだっけ?」
「えぇそうよ。基本的にスキル数で上回るのは簡単ではないわ。もしそれで防ぐなら数は最低でも相手の5倍はないといけないからね。けど、フローラは私の鑑定を妨害できたってことは少なくとも私の5倍のスキル数を持ってるわ。後は隠蔽より上位のスキルが存在したら別だけど」
「魔道具の鑑定結果的にその2つしかないけど……ちなみにクリアナのスキルの数は?」
「確か40個辺りだった気がするわ。だからフローラのスキル数は200個以上のスキルを持ってることになるわね」
「200って有り得そう? アラン」
「ま、待て。歴代のスキル最大所有数は初代国王様で、100と少しだったはずだ。その2倍もフローラは持っていると言うことになる。流石にそれはありえない」
「そうよ。スキルレベルに関してはレベル平均の差が3以上だったら見えなくなるけど私の平均は8だからどのレベルでも見えるわよ。だから後者の方が有り得るわ」
隠蔽の上位スキルで魔道具からのも防ぐ……か。聞いた事はないが、不可能では無い。鑑定ができないので手探りになるがフローラも教えることは多くありそうだ。
「では、フローラは鑑定できないので何を持っているのか分からない。その為に私たちが付きっきりで何を持ってるか調べて教えるという方針でいいか?」
「正直現実味がないけどわかったわ。それとこの事を早くフローラに伝えないと。あの子とてもショックを受けてたから」
「ちなみにだクラリナ。貴族の奴らが鑑定してお前みたいに妨害に気づけるか? 話を聞く限り無理そうだが」
「ほぼ無理でしょうね。できる貴族って言ったら貴方と同じ辺境伯になった英雄様たちぐらいよ」
「まぁ、あいつ等なら気づけるか」
「後はフローラだけがやはり文字を読めた点くらいだけどこれもスキルのおかげなのかしら?」
確かにフローラだけがあの鑑定結果の内容を私たちの会話ではなく文字から理解していた。そうでなければ姉特効について質問できる筈がないからな。
「そうとしか考えられないだろうな。これで悪魔が憑いてないのに文字が読める理由になる。どんなスキルかは知らないがな」
「私、フローラを疑ってたのよ。ずっと……3日前のあの日から。娘のことを信じようともせず私は……」
「なら、今からでもフローラの為にしてやれることをするんだ。それが今私たちがやるべきことだ」
私はそう言いながら席をたち、フローラたちが町から帰ってきた時の準備をすると伝えて部屋の扉を開ける。
すると、メリーが泣きながら左に向かって走って行き、その後を追いかける様にメリアルが走っていった。
一体何があったのか聞きそびれたが、方向的にフローラとメリーの部屋だと思い、なんとなく状況を察した。
メリーは着替えて終わっているのを見るに、フローラが体調が悪いなど言って後から行くと伝え、それが遅くてフローラを探してる最中というところか。
前にもメリーは、フローラが近くにいないと泣いて屋敷を探し回っていた事があるからな。
その時は確かフローラの寝相が悪くてベッドから落ちて、更にベッドの下に入っていた。その後、フローラが起きて「何!? またあれ!? あれなの!?」とよく分からないが叫んでいて、その声を聞いた近くのメイドが見つけだしたのを思い出す。
メリーは、フローラがいないと、とても不安になるらしい。にしても、この後フローラとメリーがどうなるか心配だ。
私は魔法で小鳥の形をした使い魔を呼び出し外からフローラの様子を見るように伝える。
使い魔は開いている窓から外に出て、フローラたちの部屋の窓付近に移動する。しばらくは使い魔と感覚を共有して見守るとしよう。
使い魔がフローラたちの部屋のベランダにある塀にとまらせる。
それとほぼ同時にフローラがベランダへと出てきた。
私はフローラの表情を見る限り落ち込んでいるようには見えない。むしろ何か試そうとしている様にも見える。
フローラが使い魔に気づき訝しげに見ている。この使い魔はただの鳥だし、魔法の勉強をほぼしていないフローラが、使い魔だと気づく訳がないので特に心配はない。
だがフローラはこちらに手をかざし、使い魔との感覚共有が消された。
なんだと!? フローラは使い魔については御伽話にも出るから知っててもおかしくはないが、まずあの鳥が使い魔と判断する材料は魔力量の多さだけだ。契約すると契約者の魔力を共有する様になるのだがフローラは相手の魔力量を見えるのか?
よくよく考えると隠蔽の上位のスキルがあるのだから、それで隠したいスキルがあって、それでできても不思議ではない……のか?だがこれでフローラたちの様子を見ることが出来なくなってしまった。
こればかりは仕方ない。二人の仲が悪くならない事を願うとしよう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
【メリー視点】
私のおねーさまは凄い。
おねーさまは私が知らないことを沢山知っている。かけっこや、隠れんぼだっていっつもおねーさまが勝つ。この前は初めて書庫に入って読む本を探そうとしたけど文字が読めなくて選べなかったのに、おねーさまは文字が読めて本を選んでいた。
おねーさまのことは大好きだ。それは断言できる。いつも私の為に遊んでくれたり、私が悪いことをしたらおねーさまにも責任があると言って一緒におかあさまと謝ってくれる。私の為に沢山してくれる。
私はおねーさまみたいになりたい。おねーさまみたいに運動も勉強も出来るようになりたい。
そう思い、私はおねーさまの真似をするようになった。そうすれば少しはおねーさまに近づけると思った。
けど、何も変わることは無かった。おねーさまの真似をしても、文字は読めなかったし、運動も一度も勝てなかった。
私はその結果が別に悲しくも悔しくも無かった。けど心の何処かで暗い何かがあった。
そんなある日おねーさまと廊下を歩いていると、部屋の一室から声が聞こえてきた。
「フローラ様はあの歳で聡明で大人びていて素晴らしいけど、メリー様はとてもお子様でどれも劣ってらっしゃるのよね」
「そうよね、同じ環境で育った双子なのに大違いよね」
「将来は、フローラ様が先に良い所に取り継ぎそうね」
その言葉を聞いた途端私は胸の奥がとても苦しくなり、涙がポロポロと溢れ始めた。
今までおねーさまと比べられることは無かった。だからこうもハッキリと比べられて、私がおねーさまより劣っていると言われるのも。
おねーさまは泣いている私を見た途端、無表情になり、メイド二人のいる部屋に入っていった。
扉は閉じられたので中は見えないが、メイド二人が何度も叫ぶように謝っているのが聞こえる。
その声を聞きつけて、メリアルたちがこちらに駆けつけてきた。メリアナは部屋に入っていき、メリアルは私に事情を聞きながら慰めるように頭を撫でてくれた。
その後、あのメイド二人は屋敷を追い出されたと聞いた。それから私は、数日はおねーさまに甘えないことから始めようとしたけど、1日も持たなかった。
おねーさまに甘えるのが癖になっているようで、おねーさまが近くにいないと不安になる程だった。
そして鑑定の日、私はおねーさまの鑑定結果を聞いて心が少し軽くなる様な感じがした。
私にも、おねーさまより優れてるものがある。そう思うだけで何か満たされる気持ちが溢れた。
けど、部屋から出ておねーさまが体調が悪いと別行動をした時に急に胸が苦しくなった。
おねーさまと別々になるのが原因と思って呼び止めようとしたけどメリアルたちに連れられて叶わなかつた。
それから、着替えが終わっても(ソフィーとは着替える部屋は別々)おねーさまは来なくて、私はあまりにも胸が苦しくて泣き出してしまった。
メリアルたちが慌てて泣いてる理由を聞いてくれるけど、私にもよく分からない。
いつから苦しくなったか聞かれて答えると、二人は急に微笑んで頭を撫でながら教えてくれた。
私がおねーさまに『シット』というのをしていたこと。それと、おねーさまの立場がついさっきまでの私と同じだから気持ちがわかること。
そう言われて私は何かに駆り立てられる様に部屋を飛び出しておねーさま探しに行った。
姉特効というのを使い、おねーさまのいる方向を把握してそこへ向かって全速力で。
おねーさまは私たちの部屋にいた。
私はおねーさまに何か言おうとするが、ちっとも言葉が思いつかない。私がメイドに比べられた時おねーさまは沢山言葉を掛けてくれたのに、私はおねーさまと呼ぶのが精一杯だった。
その後はメリアナが来ておねーさまに町に出るか聞いて、おねーさまは行くと答えた。
おねーさまは時間がかかるから先に行っていいと言うけど、信用できなかったので待つことにした。
馬車の中で待つ間、ソフィーとおしゃべりをして時間を潰していた。
ソフィーは、話してる内に出会ったときの口調より柔らかくなっていった。彼女曰く、こーしゃくれーじょーってのは、礼儀作法がとても厳しくて、あの時の挨拶も事前に決めていた言葉らしい。
それと、初めて同い年の子と話すので緊張してたけど、その後、友達になれたと嬉しそうに話してくれた。ちなみに友達が出来たのもこれが初めてらしく、今日まで家の外さえ出してくれなかったと言われた。
私達のおとーさまも同じだったな……。
私も初めてだと伝え、色々と意気投合して、盛り上がったけど、それで疲れたのか気づいたら二人とも眠くなってきた。
まだおねーさまが来てないから起き……ない…………t。
起きた時には町に着いていた。
学校のテストと塾のテストで2週間投稿が空きますご了承下さい。おそらく3学期に入ったら受験勉強一択になるため受験が終わるまで3学期中投稿はおそらく無い気がします。それでも良いという人たちは今後も応援よろしくお願いします!




