オラの村でえらいことが起きただ
六歳になると教会に行き、スキルを鑑定してもらうようなファンタジー世界!
スキルは生まれ持ったものと後から習得した物に分かれ、その有用性や有無が将来を決めるといっても過言ではない!
後からスキルを習得することもできるにはできるが、それにはすさまじい労力が必要!
まぁ、いうてスキルとうまく付き合って行けば割とくいっぱぐれないし、よっぽど意識高いやつでもないとそんなことしないけどね!
ちなみに、農村部で最も優遇されるスキルは「農民」である!
農作業どころか、農民として暮らす事全般に補正がかかる超優良スキルである「農民」は、ほぼ万能といっていいスキルだ!
種の選別から農作業、自宅の清掃に料理に体調管理に至るまで!
農民がこなすことならば、書類や経費計算に至るまで、ありとあらゆることが強化される!
何しろ農地を守るためであれば、攻撃、防御、魔法にまで補正がかかるのだから、まさに万能!
村に五、六人いれば安泰という、農家としては喉から手が出るほど欲しいスキルである!
ある辺境の村で、六歳の子供達のスキルが調べられたその日っ!
村の主だったものたちが村長の家に集められていた!
全員が沈痛な面持ちであり、話の重要さがうかがえる!
最初に切り出したのは、長老と村長を兼任している、ジジィであった!!
「いや・・・もう・・・昨日のテンション返してほしいわぁ・・・今年は何人ぐらい農民がいるんだろう、とか言ってた気持ち戻ってきてマジで・・・」
「まあ、農民は三人いましたし」
「そこはね。そこはすごくうれしいし、有り難いけど。うん。問題もあったじゃん」
「ああ、有りましたね。呪術王の」
「それ。もぉーさぁー。えー・・・どうすんのこれ」
スキル「呪術王」!!
それは忌まわしき記録と共に語られるスキルである!
時は戦国時代!
群雄割拠で各地の王達が天下統一を狙って競い合っていた!
そんな中で一際強い勢力を誇ったのが、「ハイパースペシャル大魔王」と名乗っていた王である!
その王が持っていたスキルが、「呪術王」であった!
何百何千という種類の呪いを使いこなすその能力を使い、王は連戦連勝を誇っていた!
何しろ、自国の兵士は強化する!
敵の国の兵士は呪いで弱体化、時には直接呪殺するのだから、始末に負えない!
多くの国が連携し、この王に戦いを挑んだのだが、全く歯が立たなかった!
しかし!
一人の少年が、この王を打倒したのである!!
「おっちゃん、なんぼ強いいうても自分を呪い殺せへんねやろ? 中途半端やわぁー!」
「じゃからしか、こんぼけぇ! 見とれよお前! ぷげらっ!!」
みたいなことが事実として起こり、王は死んだのである!!
ちなみに復活する呪いを自分にかけていたらしいのだが、一度死んだ死体を火葬にすることで、復活を防いだ!
大体の流れでお察しの人もいると思われるが、王は極端にバカだったのだっ!!
もしもう少しこの王が賢ければ、世界はとっくに「ハイパースペシャル大魔王」の手に落ちていたであろう!
ちなみにその時、王を自爆させた少年こそが、のちに辺境一の店舗数を誇ることになる、「ぶきや」「ぼうぐや」「どうぐや」の初代会長である!!
そんな一件以来、「呪術王」というのは忌まわしきスキルとされていた!
もっとも、その王が保有していたという記録以降、歴史上一度としてそのスキルが確認されたことはなかったのだ!
そのスキルがっ!
この村の少年から!!
確認されてしまったのであるっ!!!
「まずいよぉー・・・これどうするの・・・報告したらどうなると思う?」
「いうてまぁ、処刑とか」
「マジかぁー。いーやぁー。言うて、えー・・・ないわぁー・・・」
「まぁ、メンタルには来ますよね」
「おい神父! 教会的にはどうなんだよ!」
「えー。なんにか不味いスキル持ちが出てきた場合は、本部に連絡することになってますけど」
「それどうなるの」
「まぁ。ほら。異端審問官とかが。ばーって」
「うーわ。ないわぁー・・・えー・・・ていうか、ぶっちゃけここにいる全員知ってるのよ? あの子のこと!」
狭い村である
子供は慈しみ村人全員で大事に守って生きてきた
肩身を寄せ合っていかなければ生きていけない辺境である
スキルという資源があるがゆえに、だからこそ人と人とのつながりは自然辺境の方が強くなっていった
皆は一人のために、一人は皆のため
それが、村では当然の精神なのだ
そんな村であるから、当然件のこどものことは全員がよく知っている
おしめを替えたり、一緒に遊んだりしたりしたものが殆どだ
外部から来た神父も、その気風に良く馴染んでいる
「私ね、この村に来て初めて命名の儀式したのがあの子なんですよ。そりゃぁ、緊張しましてね。ほら、あの子赤ん坊の時すごくよく泣いて。でも、儀式のときは珍しくずっと機嫌よくしてくれてましてね」
「やめろよ。やめろよそういうエピソードだすの。胸が苦しくなっちゃうでしょ」
「あいつ、会うたんびに元気に挨拶してくれてなぁ」
「うちのババァなんて、孫と結婚させるんだって言ってたぞ。孫十二歳だってのに。何年待たせるつもりなんだ」
「毎日畑仕事一所懸命にやっててな。あんないい子がそんな悪いことするようになるかね」
「やーめーろーよぉー! もぉー! どうしろってのよぉー! お上にさからえないでしょうがよぉー!」
「まあ、そうですけども」
「いうて、報告したらまず間違いなくアレでしょぉ?」
「あ。じゃあ、報告しなきゃいいんじゃない?」
「はっ? 何言ってんだお前」
「だって考えてみろよ。報告しなきゃ命令されんだろ。命令されんきゃ、逆らい様がない」
「いや、報告するように命令されてるから」
「でも着目点はいいぞ。いっそあれか。ウソ報告するか」
「ウソ報告。とは」
「ウソの報告をするんだよ、そのまんまだろうが」
「どうやってよ」
「神父の言ったことを書きとる役を、モッティーがやったことにする」
「いや、俺、読み書きできねぇ―けど」
「だからいいんだろうが。適当な絵文字書いとけ。それを後で翻訳したことにするから。そうだな、スキル・ホウキで玄関前の葉っぱを掃除する、とかがいいだろう」
「まあ、メジャーなスキルだな。あるのかないのか効果が分からんところもいいんじゃない」
「で、恐ろしい判定をした神父はそれを一人で抱え込み、酒をかっ食らい、転んで頭を打つ」
「私、頭打つんですか」
「そう。で、近々二三日の記憶を失うんだ」
「なるほど。記憶を失ってしまえば、後はどうとでもってことか」
「そんなん上手くいくかぁ?」
「逆に考えろ。どうせ農民のスキル管理なんて適当なんだ。そんなきっちり報告が上がってくる方がどうかしてるだろ」
「どうせお役人なんて適当だからな」
「よし、それで行こう。子供は村の宝だ。なんとしても守り切るぞ」
こうして!
村の大人たちの戦いが!!
はじまったのである!!!