第二話:真衣との生活
真衣が僕の部屋に来た。
「あのさ真衣、ベットは一つしかないんだけど、何処で寝るの?」
「たぶん今日に、私のベッドが届くはずだから大丈夫だよ」
大丈夫じゃねえよ! 部屋が狭くなるじゃねえかよ。
「真衣ちゃん 他の荷物が届いたみたいだよ」
「はーい 行きまーす!」と言って真衣が一階へ降りていった。
そしてベッドを運送業者さんが僕の部屋に運んでいて組み立て始めた。
「真衣、この部屋の何処にそのベッドを入れる気なのかにゃ?」
「みいなちゃんの隣に置いちゃえばいいじゃん」
「僕はどうやって出ればいいのかな?」
「別に私のベッドを通っていけば出れるじゃない?みいなちゃん、考えすぎは体に毒だぞ」
すこしはお前もまともに考えろよ!
組立が終わって無事に僕のベッドの横にぴったりとくっつけていきました。
運送業者さんが帰ろうとした時、
「姉妹は仲良くしないといけないよ。ではこれでありがとうございました」
姉妹じゃねえよ!
本当にあの運送業者さんの目にどう映ったんだよ。
(やっぱり、僕がお姉ちゃんに見られていたのか……)
「さすが!みいなちゃんだねえ。こんなに可愛くなって本当にもう」
真衣が抱きついてきた。
「えーい!うざい!抱きつくな!」
「みいなちゃんって何で大きくなっても、こんなに可愛く居れるのかねえ」
「しらん」
「化粧水は何を使ってるの?」
「使ってない」
「脱毛方法はどうやってるの?」
「なにもしてない」
「ボディーソープは何を使ってるの?」
「石鹸」
「シャンプーとコンディショナーは何使ってるの?」
「メルット」
「うわ、なんか女性として本当にむかつく」
「何でだよ!」
「あ!胸が無い。勝った!」
「あるかよ!」
「ご飯だから2人とも降りてきなってさ!」姉さんの声がした。
「はーい。みいなちゃん何してるの。早く行くよ」
(うわ、マジでこいつむかつく……)
「今日は真衣ちゃんの歓迎で祝いたいので、おばさんが腕によりをかけてみました」
「わーい。おばさんありがとう!」と真衣は手を叩いて喜んでいた。
僕は食卓に並んでいる料理を見た。
・魚屋さんで注文した大皿いっぱいの刺身。
・サラダ(キャベツいっぱい・きゅうり・プチトマト)
・ご飯
・味噌汁
以上
「えっと、お母さんは何処に腕によりをかけたのかな?」
僕は素朴な疑問を投げかけた。
「え? キャベツいっぱい切ったでしょ?」母が普通に答えた。
(そこかよ……)
「みいなちゃん、キャベツをたくさん切るのは凄く大変なんだよ」真衣が言った。
「家には家庭用の小さい千切り器がある」
「そう言うこと気にしてたら禿げるよ」
「禿げないよ!」
「それでさ、お父さんは?」姉さんが聞いた。
「なんか会社の人と飲んでくるって」
「飲み会か。いいな」
「姉さんも会社に勤めれば、飲み会に呼ばれると思うよ」と僕が言うと、
「会社勤めなんて誰がするか」
「会社ってそんなにイヤなものかね?」
「お茶ばかり運んで、薄いとか濃いとか熱いとか温いとか言われるんだぞ」
(どこの会社だよそれ……)
「みいなちゃんみたいな可愛い子が入ったら、男が群がってきてコピーを頼まれるんだぞ」
(だから何処の会社だよ。それ……)
「それは怖いね」真衣が言った。
「マジになって聞いてるんじゃない」真衣の頭に軽くチョップした。
「姉さんは普通に仕事に行きたくないだけだろ?」
「当たり!朝の早起きはイヤだし、通勤もめんどくさい」
(うわ!本音を言いやがった)
「それでさ。真衣って何処のクラスに入った?」僕が聞くと、
「知らない。今日、転校の手続きしただけで、始業式は後ろのほうで見てた」
「みいなちゃんは何か聞いてる?」
「あのさ。僕が何か聞いていたのなら、真衣が僕のクラスに来た時に驚いていると思うか?」
「あれって本当に驚いてたんだ。今、知って私がびっくりしたよ」
「真衣って、本当に良い根性してるな……」
ご飯を食べて落ち着いたころになって、
「お風呂入れたから入っちゃって」と母が言ってきた。
「私は後で入るわ」と姉さんが言った。
「それなら、みいなちゃんと真衣ちゃん、先に入っちゃって」
「まてこら。なんで真衣と一緒に入るんだよ」
「小さい頃はいつも一緒に入っていたのに」と母が言った。
「今でも一緒に入ってたらまずいでしょ?」
「なんで?」と普通に母が返事してきた。
もうこの母親には何も言うまい……。
「真衣、今日は疲れてるだろうから先に入っちゃいな」と僕が言うと、
「うん。みいなちゃんも後から入ってくるんでしょ?」
「何でだよ。行かねえよ」
「ぜっかく、みいなちゃんの美容の秘密を知りたかったのに……」と文句を言いながら、
真衣がお風呂に入っていった。
こいつら俺を男として認識してないだろ?
「みいなちゃん愛用の石鹸借りるね」
「どうぞ。家族で使っている石鹸ですが、それでよければ」
「うわ!みいなちゃん、本当にメルット使ってたんだ」
「いいから早よ入れ!」
僕は真衣が出てくるのを待っていたが、なかなか出て来ない。
「お姉さん、真衣って長風呂だったっけ?」
「私が知ってるわけ無いでしょ?」
「でもさ、凄く長くない?」
「あれ?もうこんな時間!」
「姉さん、真衣の様子を見てきてよ」
「え?私が行くの?」
「僕が行ったらそれはそれで問題でしょうが!」
姉さんは真衣の様子を見に風呂場に行って、帰ってきた。
「どうだった?真衣の様子は」
「うん、すっかりのぼせてた。今、風呂場から出してきた」
しばらくして真衣が真っ赤な顔で戻ってきた。
「みいなちゃん、なかなか来ないんだもん」
「行かねえって言っただろ!」
「さて、僕はお風呂に入ってくるね」
「のぼせがよくなったら覗きに行って良い?」
「良いわけないだろ。涼んだら部屋に行って寝てろ」と僕は言った。
僕は風呂場に入って、そして頭を洗って、体を洗って、
そして髪の毛をヘアゴムで束ねてから、湯船に浸かった。
僕は目を瞑りお風呂の縁に頭を乗せてゆっくりと浸かった。
(なんか今日も疲れたな。それにまさか真衣が家に来るとは思わなかった)
そして目を開け、お風呂の入り口を見ると……。
「こら!真衣!」
真衣は逃げていった。
お風呂から出て体を拭いて、パジャマを着て風呂場から出た。
「お姉さん、お風呂上がったよ」
「ほーい。ほいじゃ入りますか」
「あれ?真衣は?」
「二階に急いで上がってった」
僕は髪を拭いてからドライヤーで乾かし始めた。
「あれ?姉さん僕のヘアブラシ、知らん?」
「知らん」と言って風呂場に入っていった。
「おっかしいな。いつも置いてあるはずなのにな」
僕は100均で買ったヘアブラシの新品を袋から出して髪を乾かしていた。
ちょっと湿ってるけど、ドライヤーを止めた。僕は完全には乾かさない。
完全に乾かすと髪がバリバリしてしまう感じがして気に入らないのだった。
僕は二階に行って自分の部屋のドアを開けた。
「あ!みいなちゃん、おかえり」と言っていたが、真衣はまだ何も着ていなかった。
「ごめん!」と言って僕はドアを閉めた。
「みいなちゃん、どったの?」と真衣は何が起きたのか判っていない様子だった。
「真衣、早よ服着ろ」と僕が言うと、
「そういうことだったんね。ちょっと待ってね。今さっき髪を乾かしたばかりやったし」
いや、そう言う問題じゃねえだろ。
「もういいよ」と言われ僕は部屋に入った。
「もしもし、真衣さん?」と僕は真衣の姿を見ていった。
「はいはい、なんでしょう?みいなちゃん」
「服はどうしたのですか?」
「透明な服を着ているのです」 裸の王様か!
「何で服を着てない?」
「ナイトブラしてるじゃん、下もちゃんとパンツ履いてるし」
「それは世間では下着と呼ぶのではないですか?」
「いつもこれで寝てるし、問題ないよ」
「真衣に問題がなくても、こっちに問題があるんだよ」
「パジャマ着ると寝返りの時に引っかかる感じがして夜に起きちゃうの!
みいなちゃんも女の子みたいなんだから慣れなさい」
と真衣が言ってベッドに横になって布団をかけた。
「俺がこの状況に慣れろと?」
「っていうかさ真衣」
「今度は何?」ちょっと真衣がイラつき気味に言った。
「僕が自分のベッドに行けんのだけれど」
「私のとこから行けばいいじゃん?」
僕は真衣のベッドの上に乗って、そして自分のベッドに行った。
「やっぱりこの位置っておかしくね?」
「じゃあどうすれば良いの?」
「今の横から縦にしようか?そうしたら僕は壁側からベッドにいける」
「明日、そのように移動しようね。もう眠いから、おやすみ……」と真衣が言って寝た。
(この状況で僕も寝ろってか?)
僕も真衣も高校一年生で、もうお互いにしっかりと成長してるし、
真衣もしっかりと可愛らしい女性に成長してる。
僕だって男として成長してるんだぞ?
その男と女がベッド並べて寝ると言う環境がやっぱり納得できなかった。
「ねえ、みいなちゃん……」真衣がいきなりしゃべった。
「どうした、真衣」 僕はドキドキしてしまっていた。
「電気。明るくて寝れん」
「自分で消せ。お前のベッドをもう一回通る気は無い」と僕は言ってやった。
「もう!みいなちゃんのケチ……」そういって電気を消しに行った。
そしてベッドに入って「みいなちゃん、おやすみ」と言って寝息を立てていた。
「真衣、おやすみ」と言って目覚ましをセットして寝た。
「やっぱりこの状況っておかしくね?」と言ったが、真衣はすっかり熟睡してしまっていた。
(こいつ、この状況でよく眠れるな?)と思って僕も寝ることにした。