第十七話;混沌。
「困ったことになったなこりゃ・・・。」
「相沢君、これで本当によかったん?」「本当に大丈夫なのかな?」
「溝口、西川。栗原と波多野にこのことを伝えていってくれ。」
「わかった相沢君。」「賽は投げられたという感じやね。すぐに報告して来るよ。」
「水戸は生徒会と村木の動きをしっかりと見ててくれ。」
「了解したよ、相沢。ついに始まった感があるからしっかり監視する。」
「俺はっと、みいなの監視強化ってところだな。」
学校中がだんだんと騒がしくなってきていた。
しかも今までの騒がしさとは明らかに違っていた。
「相沢、いつもと違ってないか?」
「みいな、ついにやってしまったな。」
「どういうことだよ。」
「もうちょっと慎重に行動すると思ったが、お前の性格を考慮するの忘れてた。」
「なんだよ、僕は自分の思ったことを行っただけじゃ。」
「お前の脳は直通電話か!オブラートに包むとかして話せんのか。」
溝口と西川が栗原と波多野を連れてきた。
「相沢君、一体これはどういうこと?」
「全校生徒が今までに無いくらいに騒がしくなってるけど。」
「栗原、波多野。ちょっとみいながやっちまったんだよ。」
「一体何を言ったの?」
「みいなや真衣ちゃんを傷つけるクラブを完全に敵とみなす。」
相沢は僕の言葉を要約して一言で言った。
「それはちょっと・・・。」「問題になってきそうじゃね。」
「そこのどこが問題になるんだ?溝口、相沢。」
「あのな、みいなちゃん。僕達のほかのクラブはどこがやってる?」
「教師連合と生徒会連合じゃね?」
「そこがみいなちゃんの敵と判断されたらどうなる?」
「実際に僕を利用したりしてるじゃねえか。」
「だからもうちょっと考えて慎重に行動して欲しいと言ってるんだよ。みいな。」
「どういうことだよ。」
「僕達は学校教師と生徒会に反抗する勢力とみなされる。」
「そんな馬鹿な。そう言うつもりで言ったわけじゃなくて!」
「わかってるよ、みいなちゃんの言いたい事は十分にわかってるんだけどね。」
「その言葉をどのように受け止めたかと言うのは相手次第って言うことになるの。」
栗原と波多野が困ったように話した。
「これで教師連合と生徒会連合が合併することがあったら・・・。」
その時に水戸が急いで教室に帰ってきた。
そして僕達を見つけ向かってきた。
「今、教師連合と生徒会連合が手を結んだ。」
この報告はさらに僕達の頭を抱えることとなった。
「栗原、波多野。運動部に報告!」
「溝口、西川。文化部に一つの噂を流して欲しい。」
「相沢君、了解!」「それでどういう噂をながすの?」
「そうだな。『みいなちゃんがみんなのことが大好きだ。って言ってた。』 これでひとまずはいいだろう。」
「水戸はみいなちゃんを守っていてくれ。」
「わかった相沢。がんばるよ。それで相沢はどうするんだ?」
「俺は教師連合と話をしてくる。」
「なんで生徒会連合じゃないの?」「一番この騒ぎを利用しやすいのは生徒会連合ちゃうの?」
「いや、教師連合でいい。皆も頑張ってくれ。」
みんなはこの騒ぎを抑えるために各使命を持って散っていった。
たった一言の僕の言葉を静めるために。
「水戸、僕のやったことは間違っていたか?」
「言っていることは間違っていないと思う。俺もみいなの意見に賛成だよ。
みいなと真衣ちゃんを傷つけるクラブは俺も許せない。」
「じゃぁ何でこんな風になっちゃうんだよ?」
「みいな、お前は自分の影響力を知らない。知らな過ぎるんだ。
全員が本当にみいなのことを好きなんだ。好き過ぎて仕方が無いんだよ。
その大好きなみいなの言葉は、みいなを大好きな人たちにとって絶対的な言葉なんだ。」
「僕はそう言うつもりは全然ないのにか?」
「それは相手が思うことだからだ。みいな。」
「僕にはよくわからないよ。」
「それはお前がずっと今まで1人で居たからだ。」
授業のチャイムが鳴り、一時期ではあるが沈静化に向かっていった。
授業中は本当に今までの混乱が嘘のように静まり返っていた。
授業が終わり休み時間になっても静けさが続いていて不気味な様子だった。
「相沢、水戸。ありがとうな。」
僕は自分が軽はずみな行動をしたことを思いながら、感謝した。
「まだまだだよ、みいなちゃん。これからどのように動いていくのか予想もつかない。」
相沢は険しい表情をした。
「真衣がこの場所にいなくて本当に良かった。」
僕は心の奥からの言葉を発した。
「逆に真衣ちゃんが居てくれたほうが良かったのかもしれないな。」
「たしかに。今のみいなちゃんを確実に止めれるのは真衣ちゃんだけだからな。」
「今の僕を止める?ってどういうこと?」
「みいな、今、お前に友達と呼べる人は何人いる?」
「相沢、水戸、溝口に西川。」
「あと考えるとしたら栗原と波多野ってとこだろ?」
僕はうなずいた。
「でもそれは僕達運動部連合のファンクラブを知ってからの話だろ。」
「うん、その時より前は相沢と水戸だけだった。」
「みいな。中学みいな事件の後、お前はどうしていた。」
僕は当時のことを思い出していた。
「僕は人と接するのが怖くなっていった。はっきり言ってすごく怖かった。
それで1人で自分の殻に閉じこもってしまった。」
「つねに音楽プレーヤーと小説本がお友達になっていたな。」
僕は人の噂が怖くなっていた、そしてあの時の状況を作り出した僕が怖くなっていた。
僕は真衣の言葉を思い出していた。
『でも聞いてたよ。女の子にいつも間違われていて一人で居ることが多かったって。』
「真衣ちゃんが来てから、みいなは凄く変わった。笑うようになっていった。怒るようになった。
真衣ちゃんが来てくれて俺は本当に良かったと思っているし、みいなもこれで変われると思ったんだ。」
「相沢・・・。」
「みいなちゃんと真衣ちゃんはそれだけ本当にお似合いだってことさ。」
「水戸・・・。」
授業も終って放課後になり僕と相沢、水戸はクラブに行ってみた。
「今日のところは何とか沈静化してくれて本当に良かったですね。」
「お昼休みの時は本当にどうなるかと思っちゃいましたよ。」
栗原と波多野が僕達を見て安心した顔を見せていた。
「ほんまに凄かったな。ふみちゃん。」「みいなちゃんの影響力ってほんとうにすごいわ。」
溝口と西川が僕を見て言った。
「みんな。本当にありがとう。」
僕は心からお礼を言った。
「私たちはみいなちゃんのことが大好きやし。」「好きな人を守るって言うことが第一条件だからね。」
全員がその言葉にうなずいて僕を見た。
「この最大の功労者を忘れちゃ困るぜ。」
「その最大の功労者様が教師連合に何しにいったんだ?」
「ちょっと村木を脅した。」
「はぁ?」
その場にいる全員が同時に発した。
「それどういうことなん?」「ちゃんと説明せいよ?」
僕達は相沢を見た。
「生徒会と教師が手を結ぶのはいいことですけど、
みいなちゃんと真衣ちゃんにもしものことがあったら、この学校でみいな事件が起きますよ。」
その言葉は最大にしてこれまでに無いほどの威力があるように思えた。
その後、教師風紀委員連合が解体。
生徒会文化部連合も急激に勢力を弱めていって解体していった。
これで3つのみいなファンクラブは一つにまとまっていくこととなっていった。
「相沢、もう一つ聞きたいことがあるんだけどさ。」
「なんだ?みいな。」
「溝口と西川に文化部に行かせただろ?あれはなんでだ?」
「それは今後のお楽しみということで。」
相沢はなぜか楽しそうにしていた。
僕達が帰ろうとすると僕達を見ている大集団がいた。
「相沢、水戸。ありえんくらいの視線を感じるんだが・・・。」
「そりゃそうだろ。みいなちゃんはみんなのことが大好きって流したんだから。」
「あの集団は文化部の連中か?」
「あたり!みいな行ってこい!」
相沢と水戸が僕を集団のほうに押した。
文化部の集団は一斉に僕の周りに集まりみいなちゃん大好き攻撃を受けた。
僕は集団の中心で、もみくちゃにされていた。
「相沢!てめえな!」
「みいなもこれで真衣ちゃんの大切さがわかるだろ!じゃあな。がんばれよ。」
「頑張れよじゃねえって!助けろ!って。ちょっと苦しい!」
「みんな落ち着いて。本当に落ち着けって!」
文化部の攻撃は壮絶を極めていた。