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変質者の個人的な事情風景 作者:冷やし中華350円

第一章 変質者の日常

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第一章1 『変質者の始まり~1』

 白いベンチの上にピンク色のサクラの花びらを落下した。

「春といえば、変質者のパーティーでも開くかな」

 親友がくだらない冗談を喋っていると、登校中の女子の生徒たちに痛い視線を浴びてから、白いベンチから立ち上がっていた。すると親友の真っ黒なズボンの丸い尻には、塗り立ての真っ白なペンキを張り付いた。白いベンチの上に魚拓のように親友の尻のくっきりと跡を残った。

「おい、大変だな。あと変質者のパーティーってなんだよ?」

 親友の不機嫌な顔を眺めて、真っ黒なズボンとペンキの尻の跡に同情した。ピンク色の花見桜の四十本以上の大木の中、親友は真っ白なペンキのこびり付いた真っ黒なズボンを脱ごうとしていた。

「ズボンを脱ぐわ。パンツ一枚でアパート先に帰るわ」

 親友がズボンのチャックを下ろそうとしている。

「おい、お前が本物の変質者になってどうするよ。本気で警察に捕まるぞ?」

 親友に忠告しているのだが、親友の公然わいせつの暴走も止まらなかった。親友が紺色のブリーフの姿になると、平然とした顔で桜並木を歩いている。周囲の人々の視線は、まるで裸の王様を見ているかのようにヒソヒソと陰口を話している。
 すぐに親友の元に青い帽子の警察官はやってきた。なにせ親友の夢は変質者になりかったというのだ。他人には理解できない将来の夢だった。警察官にお世話になろうとしているが、紺色のパンツ一枚で歩いている親友は、

「普通に生きて、社会人になって、平凡な人生を送りたくないんだ」

 とこう叫んでいた。一般的な平凡な人生のほうが幸せだというのに、この親友は何度も変質者になることを望んでいた。ヘンタイや変質者になっても、得になることもないのだ。それよりも平凡な人生を送って、普通の社会人になって、まっとうな人生を過ごそうと決めている俊太郎は親友の突飛な行動に大きなため息を吐いていた。
 俊太郎は「ごめんなさい、ごめんなさい」と警察官に頭を下げていた。それでも真っ白なペンキのべったりと付いたズボンを穿きたくない親友が、胸のポケットから百円ライターを取り出し、真っ黒なズボンを燃やそうとした。真っ黒なズボンは下から真っ赤な火を灯し、ジワジワと真っ黒な炭や灰のように色合いに変色していた。親友のズボンが焦げ臭かったので、警察官は青いバケツに大量の入った水を持ってくると、すぐに俊太郎が消火活動に参加した。

「アホだろうが! 十七歳になって、火遊びをするなよ」

 俊太郎が親友に説教をしようといると、不良の少年を叱っている気分になった。ピンク色に覆われた花見サクラの景色の中、空中に真っ黒な煙幕を上げていた。

「エキサイティングだよ。久しぶりに楽しい気分になれたよ。わははは、わははは」

 親友が反省の色を見せなかった。警察官は親友の笑顔に呆れてた。

「小学生のいたずらっ子かよ」

 この親友と長い付き合いだが、子供の頃から約十年間も突飛な行動をしてきたのだ。

「大人になりたくないよ。世の中ってこんなにも退屈な出来事に溢れているよ。もっと、楽しいことはないのか? こんなつまらない世界なら、もっと頭の可笑しい人間になったほうがマシだ」

 演説者のようにこの世界の不満を口にしている親友を目にしてしまった。

「いい歳じゃないか? やがて子供から大人になってしまうんだよ。少しは常識を持ってよ」
「周りの人たちは、常識、常識と世の中をつまらない世界にしているんだ。こんな腐った世界を作っているのは大人だろ?」

 親友は警察官を指さして、まっとうな社会人を敵として認識している口調だった。

「それでも、警察官に迷惑を掛けたのだから、謝るべきだ」
「知っているかい? 他人に謝るってことは、自分の価値観を捨てるってことなんだぜ。迷惑に掛けても、絶対に謝ることはしたくないよ」

 親友は頑なに信念を曲げない口調で喋っていると、紺色のパンツ一枚の姿でサクラの花びらの道を移動した。
 アパート先まで約二十分の距離を往復中だ。俊太郎は親友の背中を追いかけていた。緑大茂る野原を進み、灰色の住宅街の中に入っていた。
 約十分も鼠色の道路の上を移動すると、二階建てのアパートの前に到着した。しかし俊太郎の住んでいる学生寮のアパートの住人たちは、個性的なおかつ変わった価値観のばかりだ。変わった価値観を持っている住人たちによって、俊太郎の胃の中にストレスを抱える日々だ。特に目の前でパンツ一枚で歩いている親友と、アパートに住んでいる三人の少女に手を焼いているのだ。このアパートの住人に共通することは「キチガイ」だ。
 学生寮のアパートの建物の目の前で、俊太郎がキリキリとした胃の痛みに耐えていた。つねに胃薬を常備している。突飛な行動の住人に振り回されている生活は「こんなのは、ごめんだ」と考えていた。俊太郎は水筒のお茶で胃薬を飲むと、徐々に口の中で粉薬の苦みも広がっていた。

「俊太郎は自分らしさを持ったらどうだ? まっとうな人生なんてつまらないぞ」
「俺は平凡な人生で合っているよ」
「俊太郎は影の薄いタイプだよな。普通に結婚して、普通に貯金して、わかりやすい面白くない人生だな」

 真っ当なこと以外は何も才能も個性もなかったし、学園の中でも存在感のない人だとわかっていた。幽霊のように存在感もないので、俊太郎の個性の強い人間に飲み込まれてしまいそうだ。自分らしさを持っていないのは俊太郎のコンプレックスだ。目立つことは間違っているんだと自分自身に言い聞かせる俊太郎は胃薬をポケットにしまった。
 真っ白な寮の建物の壁、水色の入り口の扉が並んでいる寮、ひっそりと赤い色の自動販売機のある寮の駐車所。パンツ一枚で仁王立ちしている俊太郎の親友の松藤伸彰(まつふじのぶあき)が駆け込み乗車をするかのように水色の扉を開けて、寮の部屋に入っていた。

「うぃす、俊太郎は元気っすか?」

 お団子ヘアの少女が水色の扉から出てくると、存在感のない俊太郎に話しかけてきた。この寮で三大変質者の一人の宮葉美奈(みやばみな)である。宮葉美奈の特徴を見ると、団子ヘアの黒髪、子供らしい印象を残す童顔、貧相な少女の胸、シロクマの黒いシャツ、紺色のプリーツスカート、黒いスニーカー。いかにもロリ体系の美少女であるが、人形愛好といった変わった性癖を持っているために、学園の生徒たちには「変質者」として見られている事情を持っていた。

「おっす、胃が痛いよ。てか、今日もドール人形を持ち歩いているんだな」
「そっす。ドールはあたしの恋人っすから。カワイイっすよね?」

 美奈が金髪の長いドール人形を見せびらかせていた。

「そうか……俺には、よくわからないな。独り言のように人形と対話していると、キチガイと言われるぞ」
 俊太郎が美奈に警告していた。世間の周囲の視線もあるのに、美奈を世間では真っ当ではないと認識しているのは当たり前だ。ドールの青い瞳は不気味で、人形に監視されている感覚になった。

「あたしがキチガイだと思われてもいいんっすよ。だって、人形には魂があるんっすよ。この人形たちと結婚できるならば、あたしは喜んで結婚するっす」

 寮の部屋の山積みになっているドール人形を思い出している俊太郎。彼女の寮の部屋の扉の前に移動した。部屋を覗くと、美奈が人形愛好の性癖を持っているので、もちろん部屋の中も人形屋敷と変わらないのだ。いわゆる女の子らしいとはほど遠かった。約百以上のドールの瞳に見られていると、俊太郎が背中の辺りに悪寒を感じてしまった。

「普通の学生らしい恋愛は出来ないのか?」

 俊太郎が美奈に尋ねてみた。

「人間同士の恋愛は生理的に無理っす」
「本当に無理なのか?」

 再度、俊太郎が尋ねてみた。

「絶対に人と恋愛したくないっす。人形以外と恋愛するのは、体中に蕁麻疹が出来るっす」

 美奈の眉間にしわを寄せていた。人形愛好の性癖せいで、美奈が寮の三大変質者と言われる由縁だった。

「わからないな」
「特にドールの髪は美しいっすよ。はぁはぁ、ドールの生足は最高っす」

 美奈が恍惚な表情で荒い息を漏らしていた。

「はぁはぁをやめろ。急にヘンタイになるのかよ」

 激しいツッコミをしていると、俊太郎の胃がキリキリしてきた。

「だって、ドールはこんなに可愛いんすよ。アイラブユーっすね」

 美奈がだっこするように抱え込むようにして、金髪のドールに愛情を注いでいた。人形に恋愛感情を持っているので、学生らしい恋愛もしていないようだった。

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