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俺の覇道  作者: 迅 桃一
第一章 終わりの始まり
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第一話 出会い

入学式が終わり、クラス発表が行われ、新入生が一斉に体育館から校舎に入っていった。ちなみに、僕は主席で入学試験を通ったため、全校生徒の前で新入生代表として挨拶をしたのだった。


「しーちゃん、すごくかっこよかったよ〜」


真涼が走って僕の隣に来て開口一番に小っ恥ずかしいことを言ってきた。

そして、僕の隣で息を整えるためにふぅー、はぁー、ふぅー、はぁー、と深呼吸を繰り返した。と、続けざまにまた口を開いた。


「それと、同じクラスでよかったね!」


「うん、僕もだよ。真涼」


僕は少しはにかみながら真涼に続いた。隣で真涼がガッツポーズを元気よくとっていた。

それを見て、真涼と無事同じクラスになり少しほっとしたのは、隣ではしゃいでいる幼馴染みには内緒だな、と思った。


新一年生のクラスは校舎、一般棟の四階にある。階段を3階分上がって廊下を少し歩き1のC、僕と真涼の新しいクラスに入ると、妙にクラスの生徒の視線が僕の方へと集まった。やはり新入生代表は目立つのだろうと思っていると、さっきまで隣を歩いていた真涼が後ろから背中をつつきながら話しかけてきた。


「しーちゃん、モッテモテ〜」


「・・・・・・、早く席につくよ。ホームルームが始まるから」


真涼のちょっかいは無視してさっさと席に座ろうとする。が、やはり真涼はまたちょっかいを出してきた。


「も〜、照れちゃって〜。でも、しーちゃんのそういう所好きだよ!」


「・・・・・・」


無言の笑みを返し僕は自分の席へと座りに行った。真涼は不服そうにしていたが、少ししてクラスの女子に声をかけられ、おしゃべりを楽しんでいる所だ。はじめましての人とも仲良くできる真涼のコミュニケーションの高さに感心していた時、僕の席の前に座っている金髪で前髪をかきあげている男子生徒から話しかけられた。


「入学式の時もお前、後ろの席だったな。俺は久我天良っていうんだ。よろしくな!」


「そうだったね。よろしく」


いきなり話しかけられて、ちゃんと言葉を返せた自分に敬礼、と言わんばかりに僕は上手くいったとほっとした。やはり人付き合いは苦手だ。


「ほぅ、名乗らないとはやっぱ新入生代表は違うねぇ」


笑いながら久我が冷やかしともとれる言葉を口にした。しかし、これは僕のミスだと思い、急いで答えを返した。


「ごめん。名乗らないとね。僕の名前は黒羽椎名、好きに読んでくれていいよ」


「オーケー。じゃあ椎名って呼ぶわ」


「うん。いいよ」


なんとかあいさつができ、ホッとする。


「じゃあ僕は久我君って呼んでいいかな?」


「いいけどさ、なんか距離感じんな〜」


「ごめんね。だけど、あまり人を呼び捨てでは呼ばないんだ」


久我は少しにやり顔になりながらふーん、と何かに納得したようだ。


「なーる。でも入学式の時、椎名の後ろに座ってた子のこと、呼び捨てにしてなかったか?もしかして彼女か?」


「そんなんじゃないよ、幼馴染みだよ」


入学式は受験の時の番号順で並んでいたので真涼とは前後の席だった。

久我は、にやけていた顔を少し真剣な顔に変えていた。


「そっか、なんか悪かったな」


「うん。わかってくれたらいいよ」


久我からの素直な謝罪に、僕も思ったことを口にした。

今のやりとりで久我とは仲良く出来そうだ、とホッとしたのは顔には出さないようにしたが、久我にはバレてるかもしれないなと思った。


久我とのおしゃべりも程々にホームルームが始まり、先生が教室に入ってきた。


「私がこの1-Cのクラスの担任を持つことになった氷川霧華だ。一年間よろしく頼む」


氷川霧華先生は背が高く濃い茶髪のポニーテールでスーツ姿、薄めの化粧と、いかにも女教師と言わんばかりの女性だった。年齢は不明だが若そうで年増だな、と久我が予想していた。


氷川先生が適当に高校の説明などを終わらすと、椅子に座り足を組んで口を開いた。


「質問のあるやつはいないな。よし、お前ら自己紹介をしろ。秋山から名前の順で進めていけ」


担任の号令のもと、クラス内での自己紹介が始まった。


自分の自己紹介が終わり、クラスメートの自己紹介に耳を傾けようとすると、女子生徒数人のヒソヒソ話が聞こえてきた。


「ねぇ、黒羽くんすごくいけてない?」


「うんうん。顔よし、スタイルよし、性格よし、頭よし、もう最高よん!」


「性格はまだ分からないんじゃ・・・」


「あたしの男センサーでは、あの喋り方は性格イケメン間違いなし!だよん」


「よん・・・ってあんた」


久我がにやり顔になりながら後ろを向いきて、僕にしか聞こえないくらいの声で話しかけてきた。


「お前モテモテだな、うらやましいぜ」


「あ、あぁ」


昔、父さんから聞いた話だと僕は死んだ母親に似ているらしい。写真でしか見たことがないが、僕の母親はすごく美人で可愛らしいと思える人だった。僕の顔が良いと評価されるのは十中八九、母親のおかげだろう。


そんなことを考えていると、真涼の自己紹介も終わり、後の自己紹介を適当に聞き流そうと思っていたら、椅子を後ろに引く音と共に凛とした声がクラスに響いた。


「私の名前は笛城六花です。一年間よろしくお願いします」


機械的な声音と発音で簡潔な自己紹介を終えた笛城六花は、目を見張るほど綺麗な黒髪のロングで、それに劣らない程の美しい顔立ち、怖いぐらい背筋がピンとしている立ち姿と、なにか近寄り難いオーラを出している女子生徒だった。

少しの間が空いて、六花の自己紹介に聞き入っていたクラスのみんながざわめき始めた。僕がクラス全体を見渡すと、ヒソヒソと六花について話すクラスメートの姿があった。美人にはみんな興味を抱くのだろう。同じように久我も後ろを向いてきて、僕にこそっと話しかけてきた。


「すげぇー美人さんだな」


「だね」


僕は素っ気なく久我に同調した。

僕が六花に対してあまり興味のない様子につまんなかったのか、久我は不服そうにため息をついた。


「椎名、お前本当に男か?顔も名前も女みたいだしよ」


久我が顔をにやりとして、悪態をついた。


「久我君、それ悪口だよね・・・」


僕が小学校の時、一番傷ついたことはクラスの男子から男装オンナと言われたことだ。


「ふん、知るか。あんな美人さんを見て何も感じないのは男じゃないぜ!」


「そ、そうなんだ・・・」


この時、久我はいい意味で本当に、男子高校生してるんだなと思った。




クラスの注目の的、笛城六花にまったく興味が無いのは嘘になる。別に僕は美人に何の興味をもたないマイノリティーに属する男ではない。

しかし、それよりも僕は、六花を面白そうに見ていた氷川先生の目に他の生徒は違う、なにか鋭いものがあったことに疑問を持たずにはいられなかった。


クラス全員での自己紹介が終わると、氷川先生がプリントを生徒達に配った。


「これはこの学校についてのことが書いてある。校則や設備について書いているからよく読むように」


僕は氷川先生の指示を素直に受けてプリントを読んだ。


この神木学校は創立五年目の新設校だ。僕と真涼の家はこの学校から2kmぐらいの距離しかなく、通いやすい場所にある。新設された際のこの学校のスローガンは「目指せ!難関校」というもので、進学校としての学力はそこそこある。僕の学力ならもっと上の学校に行けたと思うが、別に難関大学に入りたいという意欲もないので、新しい設備が整っていて、家から近いという理由でこの学校に入った。

しかし、真涼の存在がこの学校に入る最大の理由だったと、今の僕に考えることはできなかった。

昨日はプロローグでしたので今日も出しました!

これからは昨日書いた通り毎週火曜日と土曜日に投稿します(◦ˉ ˘ ˉ◦)

そして、第一話読んで頂きありがとうございました!

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