器用貧乏
「しかし、女子寮ってわりにはオンボロだったな。」
「あら、おんぼろでわるぅございましたね。事実だけどね。」
そこには、ちっちゃなロリエルフがいました。
「私はここの学園長よ。私の教え子そして、私の子を送ってきてくれてありがとう。何かお礼をしたいのだけれど。」
「そんなお礼なんて結構ですよ。でも、魔術を習ってみたいのでその辺を教えてもらえれば嬉しいです。」
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「しかし、可哀想にねアナタ。」
「いきなりなんですか藪から棒に。」
『可哀想なのは、このオンボロ学園だろ。』
「いえ、私と同じ不遇の才の持ち主に出会うなんて思いもよらなかったものだから。」
「と、いいますと。」
「喜びなさい。そして、悲しみなさい。あなたは私と同じく様々な魔術を覚えられることができるでしょう。」
「おぉ、それのどこが不遇なんですか。」
「ただし、才あるものには必ず負ける。」
「???」
ようは才能を高い資質をA→B→C→D→Eという具合に位置づけていくと、絶対にAには勝てないということらしい。だけど、全てをCにすることも努力しだいではB+ぐらいには引き上げる事も可能らしい。
「まぁ、考え方次第ですね。私はこの方が好みですけどね。あらゆる相性に対処できるでしょうしね。」
「まぁ、その考えは正解ではあるけどね。この学園オンボロでしょ。大きな学園は才能が特化している魔術師を講師に教えているからね。普通はそっちに流れるわけよ。」
たしかに例えば火の魔法を覚えたい生徒がいるとする。30cmの火球を扱える先生と1mの火球を扱える先生ではどちらに師事したいかということだろう。
「まぁ、やりかた次第でいけると思いますよ。」
「向上心があることはいいことね。」
「で、この学園の現状はどうなっているんですか。」
現在の生徒は3人だけらしい。まさにこれからということらしいのだ。学園のおじいさんは変わり者だったらしく、森を出たエルフであった。エルフだけあって寿命は長く、人間の世界で多くの土地の所有をこの学園都市で得る事ができたようだ。おじいさんは既に他界しており、多くの人が魔法を学べる学園を作りたかったそうなのだが、そのための土地集めや資料集めに時間を費やしてしまったらしい。
しかし、その分集められた資料は素晴らしいものであった。この蔵書があればエルフ何人分が一生遊んでくらせるだろうかということらしい。その地盤と意思を継いだのが学園長らしい。しかし、彼女の不幸は、あらゆる魔術を修めれるかわりに特化系に乏しいというものであった。また、歴史の浅い学園に通ううよりは歴史ある学園の方がブランドや安心感があるのもたしかだろう。
そこで彼女は、3人の娘を迎え入れ育てる事にしたのである。その事情は様々だが、3人の娘にはそれぞれ魔術の適正があったというのが一番の理由である。また、学園長は教育の勉強をしたのでその実証も含まれていたらしいが、もちろん愛情をこめてである。ちなみに、彼女達は亜人であるらしい。だが、完璧な亜人ということではなく、亜人の血が多少流れているという方が正しい。
一人はプラコでサキュバスの亜人にして、ネクロマンサーの才能があるらしい。
もう一人はハピコで猫人の亜人にして、ゴーレム使いの才能があるらしい。
最後はキラコでヴァンパイアの亜人にして、ある植物魔法の才能があるらしい。
「ひょっとして、ダンジョンで見た骨のスケルトンに、土のゴーレムに、木のウッドマンですか。」
「そうよ、彼女達ならきっとそれぞれの道では、私を超える魔術師になってくれるはずよ。まぁ、訂正するならウッドマンは少し違うのだけれどね。」
「素晴らしいですね。しかも、運用次第ではかなり役立ちますね。私も覚える事は可能でしょうか。」
「可能か不可能化でいえば可能でしょうね。けれど私が教えるメリットはあるのかしら。」
「私が何が差し出せるかはわかりませんが、この学園が素晴らしいものになるよう力になるというのではだめでしょうか。」
「いいわ、教える事が私の仕事だもの。あなたが4人目の生徒よ。」
「ありがとうございます。私の魔法も紹介しますね。」
私はグリモアを召還して、新たな項目を増やす。それは『雑貨』である。
「サモン 眼鏡。」
私の手元には、細いレンズの眼鏡が召還されていた。
「へぇー、召還魔法ね。それは何かしら。」
私も前世では眼鏡をしていたのだが、若返ったときに視力も回復していたようで、今はしていない。
「あなたは、目を時々押さえつけていたので視力が弱まっているのではと考えました。」
「という事は眼鏡かしら。とても信じられないわ。レンズは高いから片目眼鏡のモノクルを使う人はいるけど、それと比べることができないくらい透明で薄いわ。材質は水晶ではないわよね、いえ見たことのない材質だわ。」
「とりあえず掛けてみてくれませんか、レンズの度があっているかわからないので。あわなければ、他のものを召還しないといけないので。」
「問題はないみたいね、透明度や薄さもそうだけれど、とても軽いのね。」
「度が合っていてよかった、もしあわなかったら遠慮なくいってくださいね。」
「これがポンポンとだせるならば、それだけで一生お金には困らないわね。」
「まぁ、もっとよくするとレンズを大きくした方が実用性はあると思うんですけどね。小さいレンズは視線を外れると意味ないですからね。そこは課題ですかね。」
「私は、いい生徒を得たようね。」
「よろしくお願いしますね。先生。」
「でもこんな素晴らしいものをもらって何も返せないようでは、先生の名が廃るわ。これをあげましょう。」
「これは?なんでしょうか。」
「これはね、ブルーオーガの角よ。かなりのレア物だから大切にしないさい。」