青い綺羅星
投稿の練習です。
右へ左へ靡く蝋燭の灯りを頼りに、彼女はそこに座っていた。大勢の大人がひしめき合う教会の中で座席があるだけましだ、と自分に言い聞かせ続けながら、肌寒い空気に震える。暇を持て余しているのか、その両手をせわしなくこすり合わせていた。
静かなざわめきが耳に煩わしく、彼女は外を睨んだ。狭い場所に押し込められる境遇か、全く頼りにならない大人か、はたまた無力な自分か。或いはその全てかも知れない何かを恨みながら、呪詛の言葉を息のように吐く。くすぶる煙の香りが臭かった。
彼女は顔をしかめたまま、天井を仰ぐ。高く白い造りの教会、その内壁には十字架がたかだかと掲げられていた。磔になっている神の像は金属か陶器か、シャンデリアに照らされて鈍く妖しげに煌めいている。それも彼女にはどこまでも疎ましく、その背後のステンドグラスに視線を背けた。
昼こそ影を極彩色に彩らせるそれも、夜はただの窓と同じだ。雪の降る冬空に憂鬱の息を吐こうをして、ふと彼女の目がある一点で釘付けになる。
青く透き通ったガラスの向こう、彼女の目に偶然届いた一筋の光。太陽の光と何ら変わりなく色の法則に従い、青い一等星となって彼女の瞳を照らす。はっと息を呑むつかの間に、一瞬の内に見えかけた光明は曇天の彼方。
一抹の名残惜しさとともに、彼女は七色の夜空を眺め続けた。彼女の周りで行われていた礼拝の作法を気にする気もなく、ただ夜空に綺羅星を探して目を走らせる。舞い始めた粉雪が、星屑のようだった。