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第2話

この話は本来は違う内容になるはずでしたが、時系列がおかしくなったため、この内容に変わりました。

どう考えても、距離と時間が合わない設定になってしまうので、書き直したら全く違うお話になりました。


書き直したら、狙ってもいないのに距離と時間の矛盾が解決しちゃった。

 日本から東に出現した謎の島の発見は日本政府の各省庁だけでなく、アメリカ、ロシアにも伝わることになるが、第一報は防衛省から総理官邸に直接届けられた。

「発見された陸地の詳細は不明です。P-1が海岸線に沿って北上したところ最低でも南北に500kmはあると思われます。島の位置は日本から最短でも1,000kmは東にあります。また、無線交信を試みましたが、一切の応答は無かったとのことです」

 本多統幕長は持参した日本周辺地図を指差しつつ、山之内に説明する。

「東に1,000kmの位置に陸地ですか。世界地図の更新はもうしばらく時間がかかりますね」

 眉間に皺を作って悩む山之内に代わり北垣が口を開いた。

「他に何らからの情報は無いのか?」

「帰還したP-1からの情報は分析中のため、詳細はまだ不明です。しかし、パイロットからの報告を聞く限り得られる情報は限られているかと」

「知りたければ、追加の探索が必要ということだな」

「その通りかと思われます、官房長。米軍、露軍とも連携した探索を実施することを具申いたします」

 悩んだまま黙ってしまっていた山之内は視線を向けられて、ようやく口を開いたのだった。

「本多さん、P-1に何らかの接触がありましたか?例えば、陸地から無線以外に警告やスクランブルを受けたということは無かったということで間違いありませんか」

「P-1のパイロットからの報告では陸地からは一切の接触は無く、何も無い海岸線と平原が広がっていたとのことです。無論、パイロットや乗員が気付かなかったという可能性もあります」

「では、陸地に何らかの勢力がいるのか、それも不明ということですね」

 本多からの返答を呟いた言葉に、北垣が尋ねる。

「それを知るためにも更なる探索は必須だ」

「求めよさらば与えられん、ということですね。もしも陸地に何らかの勢力が存在した場合、我が国の探索行為が相手にどう受け取られるのか。今回は見つかりませんでしたが、次回はどうなるでしょうか」

「最短で1,000kmとなると戦闘機の行動半径を超えるか。しかし、何をするにしても、情報は必要だ」

「ええ、情報は必須です、特に今、この謎の陸地の情報は千金に値しますが、用心は必要です。統幕長、米軍に協力を要請して、空母を出してもらえないでしょうか?」

 海を移動する飛行場である空母なら、日本から離れた場所でも独自の偵察や航空優勢も確保できる。

 山之内の提案に本多が渋い顔をする。

「難しいかと、米軍も今の非常時に虎の子の空母をよく分からない状況に突っ込ませないでしょう。要請はしてみますが、期待しないで下さい」

「頼むだけでも、頼んでください。支援も無しに、何も分かっていない場所に自衛官を送るのですから、私たちが可能な限りの安全策を講じる必要があります。あと、派遣する機の乗員は志願者だけに限定してもらえますか?」


 自衛隊では危険を告知した上で志願者の募集を行われ、募集定員を大きく上回る志願者を得ていた。しかし、予想を上回る人数であったため、志願者から選抜するのに予想外に手間と時間がかかっていた。

 米軍も自衛隊から陸地発見の一報が入ったことを受けて、空母派遣の要請は拒否したが、探索のための人員と装備の提供を申し出たのだった。ロシア軍も日本からの協力要請を受諾したが、北方領土にいるロシア軍からは十分な人員と装備を捻出は難しく、要員の派遣だけであった。

 日米露の三カ国共同の探索作戦の概要は急速にまとまりつつあった。

 米軍もワシントンD.C.のアメリカ政府やアメリカ太平洋軍など上級部隊から孤立していたため、最も指揮系統が生き残っており、最大の規模だった自衛隊が作戦の中心となった。自衛隊も訓練などを通じて米軍との共同作戦は経験が多かったが、ロシア軍まで含めた日本領海の外での探索作戦を自衛隊主導で指揮するとなると経験が浅く、調整に時間がかかった。

 『シノビ作戦』という作戦名がつけられた該当作戦では、探索に必要な陸海空の自衛隊だけでなく、米軍やロシア軍部隊も指揮下に組み込んだ探合同統合任務部隊(CJTF-シノビ)が統合幕僚長を指揮官として編成された。あとは総理からの承認をえるだけだったところで、ストップがかかった。

 社会党と共産党が中心となって国会で国外で行われる有志連合軍による作戦に自衛隊が参加して、主導するのは憲法違反ではないか、法的根拠に乏しいという物言いが実行直前になってかかった。


 規模が大きくなれば、それだけ関わる人も増え、情報はより早く漏れやすくなるが、山之内はこのタイミングには作為的なものを感じつつも、無視するのも、正面から相手して時間を浪費するわけにもいかず、作戦の修正を指示せざるおえなかった。

 作戦の修正によりCJTF-シノビは発足前に解散となり、自衛隊、米軍、露軍のそれぞれ独自の司令部を編成して、市ヶ谷に日米露による合同調整所が設置されたうえで、それぞれの司令部に人員を派遣し合う形に変わった。

 自衛隊から統幕長を出したのも、規模が規模であり、三ツ星将官よりも上の四ツ星将官だったからだが、自衛隊単独に変更され、合同調整所で調整を行う形では統幕長を指揮官にするわけにはいかなかった。

 自衛艦隊司令官を指揮官とした探統合任務部隊(JTF-シノビ)が改めて編成された。


 PKO活動や災害派遣でもない自衛隊の国外派遣、並びに、CJTF-シノビの存在に国内世論は大きく動いた。武力発生事態になる可能性すらある派遣では国内世論は大きく割れた。

 ある人は山之内を支持し、別の人は軍国主義の復活を声高に非難し、また違う人は山之内の姿勢を弱腰と非難していた。

 山之内を弱腰と非難する声の背後にいるのが谷森であった。

 表面上は山之内の決断を野党との無駄な時間を惜しんだ故の決断と褒め、非難の声や野党を批判する発言であったが、野党の批判に簡単に屈したという悪しき前例を作った弱腰だと貶してもいた。

 民自党だけでなく、野党やマスコミからも野党の批判に簡単に屈したように見えた山之内の一連の行動は非常時のリーダーとして頼りないのではないか、という声がまた出始めていた。


 首相官邸で連日行われていた自衛隊派兵反対デモの声は官邸内の執務室にまで届いていた。

 総理執務室では山之内、北垣、本田防衛相、本多統幕長がいたが、全員以前よりやつれていた。

「本多さん、今日の国会で『探索活動の実施に関する特別措置法』が可決しました。この法案により自衛隊の派遣が正式に認められます」

 自衛隊による探索というのは自衛隊法にも規定が無い行為を首相判断だけで実施すべきではない、関連法案が必要だという非難が党内からも噴出した。内閣提出法案を過半数を握っていた民自党による強行採決で可決させたのが今日のことだった。

「総理、谷森大臣ほどではないですが、いくらなんでも今回ばかりは批判したくなりますよ。米軍とロシア軍に国会で自衛隊の派遣が問題になったので時間を下さい、あと、作戦も一から練り直してください、と伝えたのですよ。日本を見限らずに付き合ってくれましたが、次も同じく付き合ってもらえるとは限りませんよ」

「本当に申し訳ありません」

 本田からの非難の声に、山之内は頭を下げて謝る。

「しかし、CJTF-シノビを引っ込めましたが、代わりに自衛隊の活動はこちらの要求をほぼ全て通せました。非常時の武器使用も現場判断で認められています」

「ここに関してはCJTF-シノビが隠れ蓑になってくれたお陰ですね。これで派遣する自衛官に無駄な危険と責任を背負わせる必要が無くなりました」

「ええ、責任は全て内閣が引き受ける、これくらいしか派遣した後の私たちには出来ることはありませんからね。

 それでは統幕長、派遣部隊について説明をお願いします」

 山之内から尋ねられた本多は派遣部隊を列挙していく。

CJTFはCombined Joint Task Forceの略です。

Task Forceというのは任務部隊で、任務のために編成された部隊です。

Joint、統合というのは陸海空など複数の軍隊に跨ることを意味しています。

Combined、合同というのは一カ国ではなく、複数の国家の軍隊であるという意味です。

CJTFは複数の国家、一つ以上の軍による任務のため編成された部隊という意味になります。

このため、自衛隊単独となってからはJTFと改名しています。

作戦名がシノビなのはアメリカからの要望です。

アメリカ軍の弾道弾迎撃実験に『星のニンジャ』という実験があるので、アメリカも参加するならこんな名称がいいかな、という直感です。


ちなみに、現実の自衛隊はソマリア沖の海賊対処のCTF-151に海上自衛隊の護衛艦が参加しています。

また、CTF-151の司令官に伊藤弘海将補が着任していました。

CTF-151は海軍部隊だけですからJointが付かないのです。

CJTF-シノビも大丈夫な気がするのですが、やっぱり無理があるかなぁ、と思ったため批判されて取りやめたことにしました。


何でP-1が探索に使われているのか、戦闘機の航続距離が足りないという理由も本編では書いていませんがあります。

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