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第1話

どうにか二日に一回のペースは守れた。

 地震発生から一週間が経った。

 外国との連絡は依然として原因不明の断絶したまま、復旧の見込みは立たないままであった。

 自衛隊と海上保安庁による探索でも行方不明機は見つからず、喪失したままであった。

 日本に到着しているはずだった貨物船やタンカーも到着しておらず、今のところはこれまで通りの生活を遅れていたが、国民の間に不安が広がりつつあった。

 この一週間はテレビでも報道合戦に終始し、低迷していた視聴率もどの局も回復して、近年稀な高視聴率を記録していた。

 しかし、一週間も経てば報道も落ち着きを取り戻し、視聴者も最初の熱が覚めていた。

 ネットでも某大型掲示板などサーバがアメリカや外国にあるサイトは軒並み見れなくなったが、一週間も経てば企業などの大手は国内サーバに切り替わっていた。しかし、急激なサーバの変更で国内サーバの数不足やIPアドレス数の問題から切り替えが出来ていないサイトも多かった。

 報道は落ち着ち、届かない物資の代わりに国家備蓄の提供や企業にも価格の据え置きを要請するなどの政府の対策にも関わらず、徐々にだが物価は上がり続けていた。政府は消費者にも買占めなどを止めるようにテレビや新聞などのメディアを通じて要請していたが、上がり続ける物価に買占めに走る消費者も増えていった。


 最初は核戦争というのが政府とメディアでの主流な予想であったが、放射線探知機は何の異常も示さず、発生した地震も核兵器によるものとは異なった振動であり、全国で同時・同規模の地震が発生した説明もつかなかったため、次第に廃れていった。

 次の予想は極秘実験であったが、政府は専門家を集めて検討させたが、こんな事態を起こすような実験は出てこず、米軍にも確認を取ったが米国と米国が知る限りで極秘実験は無いとの回答を得られたため、この予想も消えた。だが、メディアや世間一般では一週間経った今でも主要な仮説として生き続けており、国会でも何度も質問や調査が行われていた。


 国会ではこの事態に対する山之内政権と民自党の対応へ野党からの厳しい非難が相次ぎ、民自党内部からも備蓄の切り崩しなど政府の対応には疑問の声が出ていた。

 与党内部から造反者がでて内閣不信任案の可決されるという噂まで出ていたが、谷森が山之内の全面支持を表明し、この国難に政争に明け暮れるのは売国奴という発言までして造反を防いだのだった。

 各野党党首とも会合を精力的に開いて、政争よりも政治というスローガンでマスコミにもアピールしていた。

 山之内も何もしなかったわけではなかったが、国政を預かる総理として職務もあって身動きが取りづらく、山之内の代わりを務められる有能な人材はこの国難に引っ張りだこで枯渇していた。

 内閣の一員ではあったが農林水産大臣である谷森の自由な行動とアドバンテージの確保を許してしまっていた。


 外交では、地震発生の翌日にはアメリカ合衆国大使と在日米軍司令官との会談が開かれた。

 会談前から電話などで話し合いは行われており、日米間の情報交換や行動方針のすり合わせは終わっており、会談では既に話し合われた内容の再確認とロシア大使を含めた三者会談の打ち合わせがテーマであった。

 会談後には総理、米国大使、在日米軍司令官による共同記者会見が開かれ、日本、並びに、米国はこの異変に一切関わっていないことを明言した。

 米国大使との会談の翌日にはロシアを含めた三者会談が開かれ、米軍と露軍との情報共有と連絡のための自衛隊と露軍との間で行われた将校の交換に、米軍も参加することが決まった。

 米露を除き、各国の大使には米露に対するものと同様の説明を行い、復旧の見込みも立たないことを伝えたが、米露と同待遇を要求する大使や日本の対応を公然と非難する大使、日本のせいだと決め付ける大使など日本への苦情は減ったが無くなりそうはなかった。



 総理官邸、総理大臣執務室にいた山之内に自衛隊から届いた緊急の報告を北垣官房長が説明していた。

 山之内は鮮明とは言えない浮上した潜水艦の写真と報告書を渡された。

「ロシア海軍のボレイ型原子力潜水艦らしき艦影が確認されたのですか。ロシア軍の核保有が憶測から角信に変わったということですね。このまま監視と偵察をお願いしておいてください。ただし、やりすぎないようにも伝えておいて」

 ロシアとの協力関係は構築したが、ロシア軍への警戒を解いたわけではなく、偵察は続いていた。ロシア軍もそれくらいは把握しており、自衛隊と米軍はロシアとの協力関係にひびを入れない程度に偵察活動を継続していた。

 執務室にノックの音が響いた。


 海上自衛隊厚木航空基地から一機のP-1が離陸して、硫黄島航空基地を経由地にして、南南東、グアムや北マリアナ諸島方向に飛行していた。

 P-1は既に日本のレーダー圏外から出て、衛星が使えないため陸地との通信も取れない地点を飛行していた。

 一週間掛けて日本周辺を日米露は隈なく捜索して、朝鮮半島や中国大陸、沿岸州、台湾などが消えていることを確認した。一週間経った今日からはレーダーや通信圏外まで捜索範囲を広げることが決まった。


 P-1はグアムや北マリアナ諸島周辺に到着したが島影が見当たらず、あらゆる無線周波数を試しても一切の応答が無かった。

 しばらく周囲の旋回を続けていたが、いくら探しても島があった形跡すら見つからなかった。

「機長、グアムは見つかりません。これからどうしますか。日本に戻りますか?」

 P-1に出された命令はグアムに向かい連絡を取ること、グアムが捜索しても見つからなかった場合は帰還することとなっていた。残燃料と位置を確認していた機長は副機長からの確認に首を横に振る。

「範囲を広げて、このまま捜索を続ける」

「しかし、グアムが見つからなかった場合は帰還せよ、との命令ですが」

「具体的な捜索範囲については指定されていない。燃料にも余裕があるからもう少し足を伸ばしてから帰還だ」

 機長が確認した燃料などの計器を副機長も確認してから答える。

「了解」

 P-1はそのまま東に針路を向けて飛行を続ける。


「機長、もう探索は終わりにして、帰還しましょう」

 相変わらず、島影が見つからない現状に副機長が機長に提言する。燃料に余裕があっても無線も通じない圏外ではINSだけが頼りであり、余裕があるうちに帰還すべき、というのが副機長の言い分であった。

「捜索中止。これより硫黄島航空基地に帰還する」

 機長もある筈の島が消えるという謎の事態を目の前にして、無線も通じない現状に無理は出来ず、帰還することに決めた。

 P-1は北西方向に大きく旋回し、日本に向かうコースに機首を向けて飛行していたときであった。

 後方からコックピットに、旋回中に西の方角に海岸線が見えた、という連絡が入った。

「旋回して戻るぞ」

 この連絡に機長も副機長も機首を再び西に向けた。

 直ぐにコックピットからも海岸線は目視で確認でき、海岸線に沿って機を北上させていった。しばらく飛行を続けても、海岸線は北に続いたままであった。

「これはグアムでは無いな」

 機長の呟きに副機長が応じる。

「はい、チャートにはこの付近に陸地はありませんし、グアムにしても海岸線がここまで長くはありません」

「無線機に何かしらの応答はあるか?」

「一切の応答はありません。機長、一旦日本に戻りましょう。上に報告して、燃料を補給してから出直すべきです」

 機長は地震以来、初めて見つかった日本以外の謎の陸地に圧倒され、首を縦に振るだけだった。

「ああ、そうだな。出直したほうがよさそうだ。しかし、これも幻のように消えなければ良いが」

 機長の最後の呟きに副機長は何も言えずに黙ったままだった。


 総理官邸、ノックの音に山之内は資料を机にしまってから、返事をする。

「どうぞ、お入りください」

 山之内の返事を待ってから入ってきたのは本多統幕長であった。

「本多さんでしたか。自衛隊からロシアについての報告は受けました。今後もご苦労をおかけしますが、お願いします」

 山之内の言葉に本多は表情を変えずに応じる。

「それが本官の責務ですから、お気になさらないで下さい。総理からの労いのお言葉は皆の励みになります。総理、官房長、本官の用件はロシア軍ではなく、本日より始まった通信圏外での偵察のご報告です」

「何か収穫がありましたか? おっと、すみません。本多さんも座って楽にしてください。本多さんもコーヒーを飲まれますか?」

 山之内は椅子に手を向け、人数分のカップを準備して、コーヒーの入ったポッドから注ぎ、順番に手渡していった。

「失礼します。気遣わせてしまい、申し訳ありません。

 グアム周辺に向かわせたP-1が先ほど帰還しました。その機からの報告によるとグアムは見つかりませんでしたが、陸地が見つかりました」

二日に一回のペースでこんな内容でも凄く大変なのに、毎日更新の人たちはどんな執筆速度なの?

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― 新着の感想 ―
[一言] 誤字報告 ×ロシア軍の核保有が憶測から角信に変わったということですね ○ロシア軍の核保有が憶測から確信に変わったということですね
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