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第2話

 『この世界では人類は人類以外は人では無いから、奴隷かあの世に送るべきという至高教という思想が蔓延している。』設定を忘れることがたまに良くあるから設定の再確認。

 気が付いたら、13万字を突破してもまだこんな話です。

 作者も忘れているあらすじはいつ実現するんだろうか?


 読者アンケート

Q1.リザードマンは人ですか?エルフやドワーフ、獣人は人ですか?ゴブリンは人ですか?

 アテトリ王国への自衛隊PKO部隊派遣。

 ロシア軍によるアテトリ王国派兵は王太子の即位とアテトリ王国の復興、アテトリ王国北方、油田地帯の確保という成果を上げた。

 ロシア軍を主力とするアテトリ王国軍はマランギ王国と国境線を接する旧北アテトリ公国領となる北部一帯を確保したところで攻勢限界に達し、そこまでを防衛線として占領地の武力奪還から統治に段階を移行した。

 統治段階で問題となったのが文官不足と兵力不足であった。

 文官不足は貴族や騎士といった支配階級でも文盲が珍しくないという識字率の低さからくる慢性的なものであった。しかし、そこに相次ぐ戦乱で貴重な文官が死亡したこと、統治に必要な経験や知識の引継ぐ後継者を育成する余裕も無かったことが今の文官不足の主要因であった。

 戦乱で戸籍や納税記録、行政資料などの資料も消失していたことで完全に一から行政機関を作るはめになったことも文官不足に拍車をかけていた。

 兵力不足は単純に治安維持など占領統治に必要な頭数が足りていなかった。

 ロシア軍は火力、機動力などで圧倒的だったが、統治には明確な敵との戦闘に強い戦闘力ではなく隠れている不穏分子の発見と抑止、対処といった治安業務に強い能力が必要だ。

 治安業務でも最先端兵器は有用ではあるが、それよりも兵の頭数が必須であり、兵に求められる能力も言語能力といった戦闘とは異なった能力であった。

 そして、何よりもロシア軍は一連の戦闘で備蓄を使い尽くし、これ以上の戦闘行動が持続できない状況であった。

 ロシア軍以外の王太子に味方する貴族や豪族などで構成するアテトリ王国軍は燃料を使用せずとも動けるが、王太子に味方している貴族や豪族は少なく、治安業務の不足分を補えるだけの人数には足りていない。

 何より彼らも治安業務に携わっていた人員も動員して相次ぐ戦乱を戦い抜き、兵力を摩耗させた結果、自分たちの領地の治安維持すら困難になり、人手不足の助けを求める状態だった。

 こういった状況からロシアは日本にPKO派遣と官僚機関構築に必要な文民の派遣を要請したのだった。

 日本政府は一連のPKO派遣要請に対して、条件付きで応じる旨を返答して、派遣計画と必要な法律の制定に動き出していた。


 日本から出された条件でも最も揉めたのが復興支援だった。

 復興支援という名前だが、実態は日本による北部の油田開発であり、ロシアが確保した油田を日本が確保して開発するというものだ。元から油田開発に日本の助力が必要なことはロシアも織り込み済みだったが、当初予定していた以上の譲歩をすることになり、両国の落としどころを見極めるために揉めたのだった。

 最終的にロシアが譲歩して条件を呑んだことで、表向きは人道支援を目的とした、最大の目的は石油確保のためのPKO派遣はとんとん拍子で纏まっていくかに思えた。

 PKO派遣に最初に立ちはだかった問題は派遣先のアテトリ王国が戦闘が強く予想される危険地帯である点と活動内容に治安維持が含まれている点だった。自衛隊が現地で戦闘行為を行う可能性が極めて高い派遣には憲法9条と転移以前から続く平和主義の世論の反感と合憲性が問題視された。

 しかし、日本の資源不足は深刻になっていたため、派遣反対意見が国会内で過半数を占めるほど大きくはならず、自衛隊の活動範囲の制限など反対意見に対する一定の配慮と強行採決で解決した。


 次に問題になった点は誰もが予想していなかった問題点だった。

 問題提起の切っ掛けになったのはミンチ肉にされたリザードマンの写真を使った国会質問だった。派遣反対派が国会での質疑応答でミンチ肉にされたリザードマンの写真を出して、自衛隊がこういった戦闘行為を行う可能性を指摘する感情論に訴えた質問が切っ掛けだった。

 質問自体には自衛隊の活動は治安業務に限定されており、指摘されたような戦闘行為を行う可能性を否定する政府答弁がされたが、別の大きな疑問が法律家の間で騒がれだした。

 法律上リザードマンは『人』なのか?という疑問だった。

 例えば、リザードマンを殺した場合だが、刑法199条殺人罪には『人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。』とある。

 リザードマンはこの人に当たるのかが話題になった。

 リザードマンは明らかに生物学上は人類と同じホモサピエンスではない。ロシア軍が回収した遺体の調査では哺乳類ですらなく、爬虫類に分類されると推測されていた。

 リザードマンが『人』では無いと仮定した場合、リザードマンを殺害しても殺人罪に問われないことになり、爬虫類は人が占有していないと愛護動物になっておらず、動物愛護法にも問われないことになりかねない。つまり、リザードマンは法律では『物』と同じ扱いになる。いや、器物損壊罪にもならないから人の所有物、奴隷以下の扱いだろう。

 つまり、『人』ではないなら、リザードマンをミンチ肉にしても法的に問題無いということになる。

 これは逆にリザードマンが『人』を殺害した場合だとリザードマンを裁くことが出来ないことも意味する。『物』を起訴して裁くことは出来ないため、野生動物と同じくリザードマンは法律に縛られない物になる。熊が人を殺しても警察が捕まえて、殺人罪で起訴されて刑務所に入らないのと同じことだ。

 そして、この問題はリザードマン以外はどうなるのか?というより大きな問題へと繋がっているのだった。

 異世界には地球人類とマランギ王国などの異世界人類だけでなく、エルフやドワーフ、獣人といった別種族やリザードマンなどの人類と容姿も異なる別種族が存在しているのだ。

 人類と会話やジェスチャー、筆談といった手段による意思伝達が出来ないが、人類以上の知的生命体も存在するかもしれない。

 彼らが『人』だとする。

 エルフやドワーフ、獣人は哺乳類、おそらくヒト科の生き物であろうことから『人』でも納得できるとして、同じヒト科に属するチンパンジーは『人』ではないから動物園の檻に閉じ込めておけるのに、爬虫類のリザードマンは『人』として法の支配を受けるのは何故か?

 知性の有無という意見も出たが、リザードマンを『人』とする知性とは何なんだ?という哲学的な疑問にぶつかった。

 チンパンジーも集団を作る社会性、意思伝達するコミュニケーション能力、状況に応じて道具を使用することも出来る。チンパンジーは『物』だが、リザードマンを『人』とする根拠の『知性』は何だ?ということだ。

 山之内政権が異世界と国交を開いたことで、今後は人類以外の異世界『人』、人と書いたがリザードマンなどホモサピエンス以外も含まれる、が日本にやってくることが見込まれる。

 法律家だけでなく、哲学者や生物学者、動物愛護団体、人権団体とドンドン飛び火していく、今まで無視されていた途方もなく大きく深刻な問題がPKO派遣の議論で表に出てきたのだ。


 政府は実務的な観点もあり、リザードマンは『人』であるという回答を直ぐに出した。『人』では無いとしたら日本国法に支配されない超法規的な存在を認めることになり、統治上非常にまずいと判断されたのだ。

 哲学や生物学では議論は残るが、一般社会ではリザードマンは『人』であるという合意で早々にまとまった。

 リザードマンは『人』であるとして、政府解釈による『人』の認定で問題ないのか?それとも、リザードマンを『人』とする法整備が必要なのか?という法解釈の問題で国会内は紛糾した。

 自衛隊が派遣されリザードマンに自衛官が害される想定は、リザードマンがアテトリ王国内戦に介入している以上、現実的な想定である。

 逆に、リザードマンが人間に襲われていて、襲っている人間を撃ち殺す以外にリザードマンを助ける術がなかった場合でも、リザードマンが『人』ではないなら、警察官職務執行法第7条を満たせず殺人罪に問われる恐れがある。殺されそうなヤモリを守るために、殺そうとする人間を射殺するのが殺人なのと同じことだ。


 この問題はアテトリ王国の要望する治安維持業務に携わるには必ず解決しないといけない問題でもある。

 異世界における治安維持には地球のような治安維持だけでなく、魔物対処も含まれている。

 当初は災害派遣の害獣駆除と同じような任務だと考えられていたが、日米合同の特殊部隊が戦ったようなゴブリンも魔物に含まれていることが分かった。

 しかし、日本で問題となったのは『本当にゴブリンは"人"ではなく、危険な野生動物なのか?』という点であった。

 アテトリ王国やマランギ王国、ケンベルク帝国、至高教といった各国、各機関に問い合わせたが、判を押したように魔物は『人』ではなく、退治するべき『邪悪の塊』だという回答を得られた。

 だが、問い合わせ先は全て至高教という『人間以外は全て排除するべき下等生物』の考えを掲げている同一宗教を信仰している。一応、ロシア軍が捕虜としたリザードマンにも聞き取り調査が行われたが、彼らからもゴブリンなどの魔物は抹殺するべき邪悪の塊という回答を得られていた。同時に、人類はリザードマンの糧となる下等生物という回答も得られていた。

 実はゴブリンも人間と同じような文明を持っているが、競争に負けて地下に隠れてゲリラ活動をしているだけかもしれない。つまり、ゴブリンも人間に敵対的だから『魔物』というカテゴリーに分類されている『人』である可能性が指摘された。

 日米合同の特殊部隊との戦闘は正当防衛とされたが、あの戦いでゴブリンは魔法を使っていたことから、魔法を使えるということはそれだけの知性がある証拠だとする意見が出ていた。

 アテトリ王国の説明だとアテトリ王国に生息している魔物にはゴブリンも含まれ、ゴブリン以外のヒト型の魔物もいるとされており、ゴブリン以外にも『人』がいる可能性がある。ヒト型でなくても『人』である魔物という可能性もある。

 自衛隊が治安維持の一環として魔物退治をすれば、『人』を殺したと訴えられる可能性が浮上したのだ。

 泣き寝入りや私刑を認められ、人類以外を守ったり、任務に従って害獣駆除をしたら罪に問われるかもしれないけど現地に行ってくれ、というのは世論や自衛隊、防衛省は納得しない。

 ゴブリンが『人』ではなく、リザードマンが『人』であるという法的な保証をしないことには自衛隊を派遣することなんて出来ないことだった。


 日本政府は悩んだ末に『人類社会の健全な構成員になることが出来るであろう種族、または、"人"であることに大多数の同意が得られるであろう種族』という定義を定め、その定義を満たした種族を『人』とするという政府解釈を行った。『人』だと思った人が多かったら『人』という身も蓋もない定義になった。

 学会でも『人』とは?という定義で揉めていて、法律に使える定義を出せる状況では無く、とはいえ、ここの種族を名指しで指名していく方式にも問題があった。

 法整備で対応させるには、もしも変更の必要が発生した場合に迅速な対応が取れないという点が懸念され、将来的には法整備を行うが今は政府解釈による対応でお茶を濁すという決断がなされた。

 ただし、政府解釈は最終解釈ではなく、解釈も個々の種族ごとに行われるであろう為に、グレーゾーンが残る対応に批難が集まったが、政府が無限責任を負い、個々の自衛官の責任は問わないと明言したことで、自衛隊のPKO派遣が決まった。

 読者アンケート

Q2.リザードマンは人ですか?エルフやドワーフ、獣人は人ですか?ゴブリンは人ですか?


 質問文は同じだけど、アンケートは二つあるから、気を付けてね。


 人じゃないからドンドン奴隷にして労働力に利用しようという回答でも別に気にしないよ。

 異種族も人だから、そんな異種族を差別する差別集団を片付けようという回答でも良いよ。

 そして、片付けた差別集団の土地や物は戦利品として有効活用しようという回答もOKだよ。


 この質問の答えはいずれ出ると思っている。

 地球外知的生命体が見つかるか、完全なAIが開発されたら、嫌でも解決しなければいけない問題になるわけだからね。

 地球外知的生命体や完全なAIが『人』だとして、同じヒト科に属するチンパンジーは『物』なのに、何故『人』として扱われるのか?

 チンパンジーとの違いは何なのか?『人』の定義は何なのか?

 いずれ出ると思うけど、今ではないから、質問の答えに正解は今は無いよ。だから、どんな回答でもOKだよ。


 筆者の回答は『人間様が対等と認めた異種族だけが人。ただし、異世界人類は"人間様"には含まれない。リザードマン、エルフ、ドワーフ、獣人、異世界人類は人間様が対等だと認めてあげたから人』だよ。異世界人類は魔法を使っているけど、地球で魔法を使える人類はいなかったよね?

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[一言] Q1.リザードマンは人ですか?エルフやドワーフ、獣人は人ですか?ゴブリンは人ですか? 人ではありません、人とは人間とは、ホモサピエンスのことを指します。 類人猿も原人も人間ではありません、…
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