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第3話

 次回以降はまだ書き終わっていないので、投稿予定は未定です。

 多分、時間がかかると思います。

 早く投稿出来たら良いなぁと祈っています。

 アテトリ王都から命からがら逃げ延びることに成功したメトリリオ王子は専属の護衛騎士ジェロランと教育係を兼任している宮廷魔術師アンニーノとともに隣国で、宗主国でもあるマランギ王国目指して北に逃げていた。一行は反乱軍に見つかることを恐れ、主要な街道や宿場町には立ち寄らず、地元民も滅多に使わない獣道を進んでいた。

 マランギ王国との国境まであと少しという荒野の一角でメトリリオは立ち止まってしまった。

 王宮に生まれ、王太子として箱入り娘ならぬ箱入り息子として育ってきたメトリリオは第二次性徴も始まっていたが、小柄で色白な肌は化粧をして女性物の服に着替えれば深窓の令嬢で通じるほどだった。

 そんな彼が荒野で立ち止まり、物憂げな表情で考え込む様は王朝の変遷を重ねるほど年月を経ても受け継がれる名画のようであった。

 されども、一行は安全圏のマランギ王国まであと少しに迫り、護衛騎士は一秒でも無駄にできる時間は無いとばかりに王子を急かした。

「王子、お疲れになられたのは分かりますが、今は一時でも休んでいる時間は惜しゅうございます。必要なら私の背中で背負わせていただくことも出来ますので、遠慮なくお申し付けください」


 アテトリ王国=マランギ王国国境線のアテトリ王国側にある小さな村に村人の数を大きく超え、村に収まり切れないほどの兵士が詰めていた。

 彼らは新アテトリ王国軍と名乗るチュレードの部下たちだ。


 王都を占領したチュレードはリベルトロ王の首を門前に、リベルトロ王の胴体とメトリリオ王太子をはじめとする王族の死体を王城前の広場に晒して、アテトリ王とメトリリオ王太子の死亡を公表した。メトリリオ王太子の死体は本人確認が出来ないほどズタズタにされていた。

 王族を排除したチュレードは唯一残った正式な王位継承者として王城で戴冠式を行い、アテトリ王国国王に即位したのだった。

 その上で、国名を新アテトリ王国に改め、自身に従う軍勢を正規軍と定め、新アテトリ王国軍と称した。

 戴冠式でアテトリ王国と従属関係にあった宗主国マランギ王国の属国からの離脱、反乱を裏で支援していたリザードマンとの同盟、リザードマンの軍勢が国内に駐留することが発表された。

 マランギ王国や国内の反チュレード勢力からは簒奪であり、即位を認めない旨が発表され、反乱軍という呼称を続けていた。

 抵抗勢力は残っているが内戦の事実上の勝利者となったチュレードだったが、自身の正当性に疑問符が付く王太子の存命を示すメトリリオ王太子の身柄が確保できていないことが最大の懸念だった。

 もしもメトリリオの身柄がマランギ王国や反チュレード勢力の手に渡れば、チュレードの王位の正当性が否定され、反チュレードの旗印になり、苦境に立たされかねない。

 このため、新アテトリ王国軍内に組織した近衛軍にメトリリオ王太子の身柄を秘密裏に確保するように命じた。

 捜索の陣頭指揮を執るのは近衛軍に所属し、近衛騎士隊隊長に任命されているアラン・ガードナー卿だ。


 アランは猫の額程度の貧乏領地ガードナー領を治める無名の貧乏貴族の次男に生まれ、文武を問わない才能に溢れた男だったが、部屋住みの身分だった。

 家督が継げなくても、彼が生家から離れ、他所で仕えたなら頭角を現すことになっただろうが、アランの父は彼の才能を評価して、次期当主である長男の予備兼補佐役として彼が家を出ることを許さなかった。

 しかし、そんな現当主で父の思惑は次期当主である長男からしたらいい迷惑でしかなかった。

 政治、軍才、武勇、教養など文武両面でアランと比べるまでもなく凡庸な才能しか持たず、人の上に立つ魅力や指導力、度量でもアランに劣っていたがため、領民や家臣からの次期当主はアランにすべきという声に悩まされ続けていたのだ。

 長男から疎まれ、領民や家臣、両親からは期待されたアランだったが、彼の才能にガードナー領は役不足であり、かつ、彼自身もガードナーの領主程度で終わるのは不満だった。

 彼はチュレードの反乱の初期から注目し、この反乱こそが彼の才能を世に示して大きく躍進する天上に御座す至高神の与えたもうた天の機だと悟り、反乱軍に身を投じた古株の一人だった。

 チュレードを反乱の初期から支えてきた功績と信頼から近衛騎士隊を預けられるまで出世したが、アランはその待遇に不満だった。

 家柄が良く、才能もあり、幼いころから訓練を重ねた忠誠心溢れる騎士たちからなる近衛騎士隊は王直轄の武力組織の近衛軍でも最強の切り札と呼べ、それを束ねる近衛騎士隊隊長職は栄誉と権力の両方を持ち合わせるはずだった。

 しかし、真に忠誠心ある騎士は旧王朝に仕えて運命を共にし、勝ち馬に乗じた騎士と旧王朝を裏切った騎士が主力であった。チュレードお抱えの騎士は高が知れる数しかおらず、そういった信頼できる騎士たちはチュレード直轄で近衛騎士隊には属さず、数でも、練度でも、忠誠心でも今一つの集団が近衛騎士隊の実態だった。

 アランには才能と功績があり、初期からの古株という信頼もあったが、後ろ盾となる家柄が無かったということだった。

 旧王朝に見切りをつけて勝ち馬に乗った有力者たちと恩賞を惜しんだチュレードによる体のいい厄介払いが近衛騎士隊隊長職だった。

 そんな中、チュレードから兵を与えられ、逃亡する王太子一行の捜索と殺害を命じられた。


「アラン隊長、ご指示通りに兵を山岳地帯に配置いたしましたが、あの配置で本当に宜しかったのでしょうか?失礼ですが、あれではより険しい道を通られたら素通りされかねませんが」

 アランは余裕の笑みを浮かべつつ、労を労い、部下の懸念を払拭した。

「確か、リンピオ君であっていたよね。細かい指示が多かったけど迅速に動いてくれて、ご苦労だったね。

 リンピオ君の心配も分かるけど、考えてみようか。護衛の騎士と魔術師は一騎当千の猛者だけど、護衛対象は王宮生まれ王宮育ち、護衛の魔術師は歴戦の猛者でもお年寄りだ」

 今回の追跡のためにチュレードから与えられた兵を取りまとめている古参兵のリンピオが話についてきていることを確認しつつ続けた。

「そんな一行が地元の人間でも二の足を踏むような未開の道を選ぶとは思えない。それに彼らは一刻も早くマランギ王国に逃げ込みたいが、主要な街道は目立って使えない。けど、こっちが警戒していない経路は時間も掛かって、遠回りになる。幸い、彼らはこちらが彼らの用意した偽死体に引っ掛かって時間を浪費していると思っている。

 実際、時間を少しは浪費したわけだけど、彼らは獣道まで警戒されるまでの時間稼ぎは出来たと思っているだろうね」

 リンピオもアランの目論見を理解して納得したように首肯した。

「なるほど、偽死体に気付いてもまずは街道や宿場町を警戒しますし、慌てて警戒を始めたように見せることでバレて間もないと思わせて、護衛対象に無理をさせるよりは確実な道を選ぶと予想されたわけですね」

「それだけじゃないよ。護衛の騎士と魔術師は一騎当千だ。本当に千人に匹敵するとは言わないけど、これ以上兵を分散させたら、強行突破を阻止できないかもしれないからね」

 アランは内心でリンピオの評価を高く出していた。

 リンピオは今回の追跡のために貸し出された兵の一人で、アラン直轄の部下では無く、これまで接点は無かった。

 所属も、能力も、出自もバラバラな部隊を一つに纏めるリンピオの指揮能力や命令に対する遂行力の高さにアランも高く評価していたが、この会話からリンピオに戦術眼も備わっていることが見て取れた。

 幸い、チュレードもリンピオ自身の才に気付いておらず、誰にも唾を付けられていないお買い得な物件を見つけ、アランの脳裏にはどうやってリンピオを子飼いにするかを考えつつ、最優先されるべき命令が徹底してあるかを確認した。

「リンピオ君、部下には王太子だけは無傷で、何があっても生きたまま捕獲する命令は徹底させているね。チュレード陛下もこのことを何度も念を押して命令なされたからね」

「は!無論、部下たちには如何なる犠牲を出しても王太子だけは無傷で捕らえるように徹底させています」

「出来るだけ部下たちの犠牲は出したくないけど、これは最重要な命令だから仕方ないと割り切るしかないのが辛いね。だからこそ、確実に頼むよ、リンピオ君。それと、外に待機しているアルバート卿を呼んでくれ」

 部下を大切にする理想の上司として話を終わらせた。


 動かなくなった王子に供たちは何度も呼び掛けて、動くように急かした。

「これから余はどうすれば良いのか」

 騎士と魔術師は顔を見合わせて、魔術師が幼子を諭すような口調で今後の予定を話した。

「ここから北に少し進みマランギ王国に入国します。さすれば殿下の身の安全は保障されますし、殿下の御祖父様であられるドラガン王陛下は王国軍を集結させていると聞きます。ドラガン王陛下の助けを得て御尊父のリベルトロ王陛下、並びに、御母堂の敵を討ち、王国を反徒から取り戻され、次期アテトリ王に即位されるべきでしょう」

 メトリリオは成長期の最中の子供とは思えない達観した表情を見せて、嘲笑した。

「それでどうなるというのだ。マランギに亡命すれば余の心身は保障されよう。それくらいの価値は余にはある。マランギにいるのは姉上だからな。アテトリ王は男子のみと決まっておるから、宗主国が後見していても、正当性では謀反人でも継承権を有していたチュレードのほうが上だ。こうなれば、名目上ではリザードマンは正当な王を、マランギの方が王権を不当に奪う側だ。だが、余ならば正当性も得られるからな」

 若くとも帝王教育を受けていたメトリリオの言に二人の供はどちらもそこまで分かっているのなら、という顔を見せた。

「なんだ?ここまで分かっているならグダグダ言うなという顔をしているな。マランギは余をアテトリ王に即位させてくれるだろうし、版図も奪い返してくれるだろう。

 され、それで余はどうなるのか?ああ、王にはなれるな。だが、余の頭の上にあるのは飾り物の王冠でしかないだろうな。アテトリの実権はマランギに奪われ、マランギから派遣された総督、いやマランギも体面があるから相談役といった名目だろうが、どんな名前だろうがマランギの役人がアテトリを統治することになるな。この体制に不満を持ってマランギに逆らえば、退位は、後継者が足りないから無いだろうが、療養名目で幽閉されて跡継ぎ作りを強制される種馬人生だろうな。逆らわなければ、政に悩まされず、王の贅沢だけを堪能できるだろうがな。

 もう一度聞こう。これからどうすれば良いのか」

 一行はアテトリ王都からここまでの命からがらの逃避行でも無かったほど重い空気に包まれた。

 この空気に祖国が世界に誇る重装歩兵の槍衾に突撃する以上の胆力を振り絞って護衛騎士は別の道を示した。

「でしたら、ウェストフォーレンで貿易商をしている知り合いがおります。彼ならマランギ以外とも交易をしていますから各国の内情にも詳しく、私の祖国ケンベルク帝国といった第三国にも心当たりがあるやもしれません」

 この提案が一行の命運のみならず、日本まで含めた世界全ての命運を左右したのだった。




 マランギ西部ウェストフォーレンの港には見物人が詰めかけ、都市の治安維持を担う衛兵隊だけでなく、領軍まで動員するだけでは足りず、日本への使節団に任命された王族や貴族の警護を名目に派遣された王国軍まで動員されたのだった。

「『いずも』とかいう名前の巨船が何隻もあるというのは流石に脅し文句だと思ったものだが、実際に全く色や形は違うが同じくらいの巨船を持ってこられるとあの言葉は脅しでは無かったのだな。

 うーむ、あの冗談みたいな要求も本当に必要最低限の要求量だったのかもな」

 トーニョロ・ドンツェリ子爵は海に浮かぶ巨船を見ながら呟いたのだった。


 海には今回派遣される使節団輸送用に日本が用意した巨船が浮かんでいる。

 総トン数50,142トン、乗客定員872人のクルーズ客船『飛鳥Ⅱ』だ。

 当初は護衛艦による輸送を検討されていたが、使節団の規模が大きく、なおかつ、輸送対象が貴族であることを考慮して護衛艦では大きさ、設備共に不足していると判断された。

 代替案として出されたのが民間客船のレンタルだが、これに外国が消えて暇になった海運業界が激しい受注合戦を繰り広げ、最安値では無かったが、規模と設備ともに充実している日本が誇るクルーズ客船『飛鳥Ⅱ』がレンタルされた。

 大きさや設備から『飛鳥Ⅱ』以外にも外国船も候補にはなったが、海運業界への支援という側面もあったため最終候補には残ったものの落選した。


 トーニョロは使節団が日本に向けて出港するまでのホスト役を仰せつかり、王族も含まれる正規人員だけでも100人を超える使節団の歓待に少なくない金額を負担していたが、これに港に詰めかけている群衆コントロールや使節団の警備費などの予定外の出費も重くのしかかっていた。

 さらに使節団の経費負担まで命じられているため、日本政府から『飛鳥Ⅱ』に掛かった費用だけでも請求されたらどうやって支払えば良いのかと途方に暮れていた。

「とはいえ、あの船なら昔読んだ世界一周航海記を体験できるかもな。日本に頼めば西の果てにある楽園に連れて行ってくれないかな」

 トーニョロは連日の激務に日本の過剰な歓迎で現実逃避気味だった。

 『飛鳥Ⅱ』が入港してから既に一夜明けているが、今も使節団はウェストフォーレン内に用意してある宿舎に留まっていた。

 理由は至極簡単で『飛鳥Ⅱ』が大き過ぎるからだ。

 マランギ王国最大、かつ、世界有数の規模の港湾でも所詮は中世程度の文明内での話でしかなく、総トン数約5万トンのクルーズ客船を横付けして停泊させることは出来なかった。

 そこに王族を団長とする有力貴族を多く含む使節団である。彼らのための荷物だけでも文字通り山のようにあり、荷物の中には彼らの旅中に食べる食料や水までも含まれていた。荷物以外にも従者や護衛、料理人、世話人などの使節団の正規人員には含まれない人員も多かった。

 とはいえ、いくら荷物と人が多いとはいえ『飛鳥Ⅱ』の巨体と比べたら微々たるものでしかなく、地球でならその日の内に搬入と乗船を完了させることは出来るはずだった。だが、港湾内で停泊が出来ず、湾外で錨を降ろして停泊している場合だと話が違った。

 マランギ王国の手漕ぎボートと帆船でえっちらおっちら運ぶか、海自のボートとテンダーボートで運ぶか、ヘリで運ぶかという選択だけである。

 この内ヘリでの輸送は『飛鳥Ⅱ』にヘリポートが無かったため、吊り下げて輸送するのと、海自のヘリパイロットの腕前でホバリングで積み下ろすというやり方となった。

 船で運ぶにもクルーズ客船であってクレーンの付いた貨物船やウェルドックのある揚陸艦ではないのだから手間がかかった。

 予想外に時間のかかる作業に使節団は先に乗船して、歓迎パーティーを開いてしまうこととなった。

 既に『飛鳥Ⅱ』の船長と『かしま』の艦長からの表敬訪問を受けており、初顔合わせは済んでいたが、『飛鳥Ⅱ』で歓迎パーティーを開催してそこで改めて挨拶を取り交わすこととなっていた。

 荷物の積み込みが終に使節団が乗船して、出港後に歓迎パーティーを開く予定だったが、予定を入れ替えて先に使節団を乗船させ歓迎パーティーを開いている裏で荷物の積み込みを終わらせることとなった。


 『飛鳥Ⅱ』に乗船した使節団は船長の歓迎を受け、副長による船内見学ツアーを受けることとなった。

 『いずも』にも乗船した経験を持つトーニョロは『飛鳥Ⅱ』との根本的な違いを理解できた。

 科学技術が未熟な異世界では『いずも』の持つ現代戦に対応した装備は見ただけで理解できるものでは無かったが、艦内を案内されれば軍艦特有の戦うための設計思想を理解できる部分もあり軍艦だということを相応の知識と見識を持っていれば理解できた。

 トーニョロは王国最大の港を治め、独自の水軍も保有する大貴族だったからこそそれを理解できるだけの知識と見識を備えていた。

 そのトーニョロだからこそ『飛鳥Ⅱ』が戦うことを一切想定しておらず、乗客を楽しませるためだけに建造されたことが分かった。だからこそ、日本という国の国力に恐怖し、茫然自失の有様だった。

「日本帝国の皇帝陛下とは神か、それとも、神の化身なのか?」

 トーニョロの様子に案内を務める副長は船内見学を延期すべきかと考え、延期を申し出た。

「到着したばかりでお疲れの様子ですから、見学は後日に改めて、船室でお休みになられますか?」

 トーニョロはその言葉でようやく目を覚ました。

「ご心配には及びません。田舎者ゆえに珍しさに目を回していただけのこと、それよりもそんな珍しい物を前に見学を延期などされてはそっちのほうが気になって眠れなくなってしまいます」

 副長はゲストの体調を気遣ったが、そのゲストから続けてくれと言われたため、見学ツアーを継続した。

 我に返ったトーニョロは他の使節団が眉をひそめるくらい質問を浴びせかけた。

「この船は貴国が保有する迎賓船なのだろうか、それとも、貴国の皇帝陛下の船なのだろうか」

「いえ、どちらでも無くて、郵船クルーズが運航するクルーズ客船になります」

「郵船クルーズというと我らで例えるなら商会ということなのだろうか?クルーズ客船というのはよく分からないが、皇族だけでなく貴族や富豪といった上流階級とも共有される海の社交場ということか?」

「郵船クルーズの親会社の日本郵船は株式会社ですが、仰られている商会がどういった形態かにも寄りますが、商会という例えが適当だと思います。クルーズ客船というのは乗客にクルーズ、船旅を提供する船のことです。『飛鳥Ⅱ』はクルーズ客船でも豪華客船に分類されていますから、富裕層のお客様が多いですが、一般のお客様もご利用されておられます」

「一般の客というのはもしかして平民のことか?平民が貴族と同じ船を利用できるのか?」

「現在の日本には貴族制は廃止されていまして、天皇陛下はおられますが、日本国民の間では身分の差はありません。四民平等とも言いますが、日本人は皆平民というのが正しいと思います」

 眉を顰めつつもトーニョロと副長の会話を聞いていた他の貴族も徐々に日本の異様さを理解し始めた。

 トーニョロと違い内陸で生まれ、内陸で育った彼らは海というものを一生目にせず過ごすことが貴族でもあり得た。

 だからこそ、巨船や船内の豪華絢爛な内装、快適な空調に驚きはしても、それがどれだけ異常なことかは理解していなかった。

 だが、それでも生まれてから最高級の生活を送ってきたがために目利きはでき、この船の内装にどれだけの予算が必要かは言われなくても理解できた。

 それに会話の流れが彼らに無い知識を求められる船から政治という彼らの本分に移れば、トーニョロが感じた日本という国の異様さ、底知れぬ国力を共感できた。

 貴族どころか、王族すらも体験できないだろう船旅をその辺の平民でも頑張れば体験できる平民しかいない国。平民のみで、貴族や奴隷階級は存在していないのに皇族はいる帝政の国家。彼らの常識が通用しない世界が広がっていた。


 そんな恐怖に支配されつつある集団を見つめる恐怖されている側の人間たちも頭を抱えていた。

「いつから外務省と自衛隊はこんな初歩的なミスをするようになったんだ?」

「内調さんや公安さんはこれから大変ですね。連中、やると思いますか?」

「当たり前だ。日本だって規模は小さいし、秘密裡にだがやるってんだ。ウェストフォーレンでだまし討ち会談を開いた奴等だ。スパイくらい送り込んでくるに決まっているだろ。だから、写真付きの名簿を作れって命令が出たんだろ」

「ですよね。しかし、連中はこの前の会談でこのことに気付いていたんですよね。何人か単なる人夫とは思えないのがいますよね。

 あと、調べられるだけX線で調べましたが全部白です」

「X線は分からなくても、こっちに渡したら調べられるくらいことくらいは向こうも想定内ってことか。怪しい人夫からは目を離すなよ。魔法なんて怪しい技があるのを忘れるな。

 けれど、あの王子様はあんなにも背が低いってことはこの世界にも近親婚はあるのかね」

 カメラ越しにマランギ王国使節団を見つめる彼らの目には地球なら黄色人種、モンゴロイドに分類されただろう日本人そっくりなマランギ人が映っていた。

「了解です。でも、魔法に警戒するったって、具体的にはどう警戒すればいいんですかね」

 (貪欲な狼たちが涎を垂らして奪い合って、最後に主人公という名の勝者の物になるという意味の)ヒロイン登場回。

 ヒロインに男女の概念はどうでも良いよね。タイでは性別は18あるという話だし、ヒロインが女性だけというのは他の17の性別に対する性差別だよね。

 筆者は男女差別といった差別に反対しているということが分かってもらえたと信じています。


 異世界の平均寿命は種族差、地域差が大きいですが30歳くらいです。

 ドワーフ>ダークエルフ>人類>獣人>エルフ

 といった設定です。

 寿命の短さの要因に衛生、食料事情に戦争や治安の低さ、自然の脅威といった悪環境があります。

 また、乳児死亡率が非常に高く、20歳になるまで生き残れる確率がどの種族も低いことが『平均』寿命を下げている要因の一つです。

 この異世界も寿命の長短を決めている主要因は種族差ではなく生活環境です。ただし、種族が違えば耐久性も違いので、同じ生活環境だと寿命に差が生じます。

 長命種でも還暦を迎えたら長老扱いですよ。


 日本基準の環境で平均寿命を出してみると。

 エルフ300歳。

 ダークエルフ300歳。

 獣人30~400歳。

 ドワーフ200歳。

 少なく見ても上記くらいになります。

 獣人はどのタイプの獣人かによって寿命が大きく変化します。

 年金など高齢者制度の改定不可避です。


 マランギ王国は黄色人種中心、マランギ王国西部、ケンベルク帝国、アテトリ王国は白人中心です。

 人類の盟主を気取っているマランギ王国と至高教は黄色人種中心ですから、人種間の対立が横行しています。

 え?黒人?エルフとダークエルフが別種族扱いの異世界ですよ。

 人類の歴史を振り返らなくても分かりますよね。

 同じ人類に分類されず、ダークヒューマンという種族になります。

 人類以外の異種族からだけでなく、(どちらも同族とは思っていないけど)同じ人類からも攻められ、かなりの劣勢を強いられています。

 ちなみに、エルフとダークエルフの違いは肌の色です。

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