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第2話

とりあえず第6話まで書いたので投稿していきます。


あなたが考える野球で一番強い役割は?

 ヘリコプター搭載護衛艦『いずも』に近づいていく一隻の小舟があった。

 『いずも』が湾外に停泊した翌日のことだった。

 旺盛すぎる好奇心の持ち主など『いずも』に近づく船はこの船以外にもあったのだが、この船は船の作りからして違っていた。

 船乗りや積み荷を荷揚げするための小舟ではなく、港と船の間を貴人とその私物を輸送するための船であった。

 そのため、他の小舟とは違い細部には細かな彫刻が彫られ、金銀をふんだんに使って彩色されていた。また、乗っている貴人が快適に過ごせるようにスペースは広く、椅子には絹地と溢れるほどの綿が使われていた。

 この船に至高教の旗を掲げ、乗っている人物も金糸を使った絹の服とその上から毛皮のマントを身にまとっていた。

 貴族のいない平等な社会に生まれ、そこで育った現代日本人の自衛官もこれが正式な使者であると理解できた。


「マダカス枢機卿からのお言葉である、海上自衛隊よ。まずは遠方より訪れたそなたらの偉業に至高神への感謝をともに捧げる。本来ならば、出自を問わず一律に扱うのが至高教の教義であるが、至高神から与えられた艱難辛苦を乗り越えた至高教の同士なればと優先されることとなった。

 よって、明朝、五つの鐘の時に初めに訪れた埠頭まで来られよ」

 一方的とも言える物言いであり、多少の戸惑いはありつつも小舟から発せられたの使者の言葉を急いで艦橋に伝える。

 艦橋には使者を乗せた小舟の接近を聞き、艦長以下『いずも』の乗組員と護衛隊群司令官とその幕僚、米海軍士官、外務官僚などが集まっていた。

 使者の言葉に一番戸惑ったのは外務省から派遣された外務官僚、杉山博史だった。

 彼は首相から臨時代理大使に任命されて外交使節団の団長の地位がとなり、『いずも』に乗船した外務省からのゲストから派遣された中で最高位の人物になっていた。

「どういうことでしょうか?5日以内に会談という話に纏まりましたが、翌朝とは相手は何を考えているのでしょうか?」

 副長が困惑気味に呟いた。

 出来るだけ急がせるように指示を受けて、準備期間を短くする交渉を行ったのは彼だったから困惑もひとしおだった。交渉の間相手は出来るだけ準備期間を引き延ばしたがっていたと見え、その相手から大きな譲歩を獲得できたと思っていたから、迅速過ぎる動きに違和感を感じていた。

「それで、どう返答しますか?」

 護衛隊群司令官が尋ねる。

「日本に時間が無い今、どういう意図があるにしても迅速に動いてもらえることを幸運と思って、お受けすると返答を。それから、五つの鐘の時はこちらの時計で何時になるかも確認しておいてください」

 杉山からの指示は迅速に伝わったが、五つの鐘の時が何時なのかという回答にはしばらくかかった。


 ウェストフォーレン聖堂では大急ぎで準備が整えられつつあった。

 聖堂内から不要な家具類を取り除き、交渉に必要なテーブルや椅子などを運び入れ、部屋や家具類を交渉に合った様式に整えるのは本来なら儀礼の専門家を1ダースと一月、それから腕の良い職人集団が必要な作業だった。

 それを今日中にやれ、と言われた担当者たちの顔は無表情となっていた。普段でも些細なミス一つ許されないのに今は時間も人も足りず、物も大鯨号の影響から商家が開いておらず手に入らなかった。

「マダカス様、いくら何でも今日中というのは無理があります。御用商人も市中の混乱から店を閉めており、それ以外の商店も家人が留守にしているところが多くあります。家具類や旗などの道具類は子爵閣下の邸宅や公館から提供していただいたため足りましたが、それ以外の物が足りません」

 部下からの泣き言にマダカスはそんなことか、という顔を見せ、周囲を見渡し近くにいた修道士に何事かを耳打ちしてから、部下に向き合った。

「何が足りないかは分かっているな」

 マダカスの言葉に困惑しながらも首を縦に振ることで肯定するのを見てから、マダカスは言葉を続ける。

「ならば、不足している物資と取り扱っている商店の一覧を用意せよ」

 マダカスの言葉に部下は我が意を得たり、と得意げに一覧を書いた紙の写しを手渡しながら確認する。

「なるほど、至高神の御意思のためという名目で徴収するわけですか。ならば、早急に兵を集めます」

 受け取った紙をマダカスは修道士に手渡し、修道士が去っていくのを見届けず、思ったよりも使えない部下に向き直る。

「お前は思ったほど使えないな」

 辛辣な言葉に得意げな顔から一転して絶望した顔になっていたが、マダカスはそれを無視して指示を出した。

「兵は集めろ。市中で暴動が起きておるのは知っておるな。暴徒がそれらの商店も襲うから、兵を出して暴徒を蹴散らしてやれ。暴徒に襲われ奪われた商品は戻らないが、店そのものを失うよりは良いだろう。暴徒を蹴散らすだけで良いぞ、間違っても商店から物を持ち帰るなよ」

 マダカスからの失望に絶望しつつも命令に従おうと動いたところを呼び止められた。

「お待ちください。マダカス様、至高神の名を騙って狼藉を考えたような者にこのような大役は務まらないでしょう。代わりに至高神の御意思に忠実なる者を知っておりますゆえ、その者にご命じされてはいかがでしょうか?」

 ウェストフォーレン聖堂のかつての主であるエリック・ジョリー司祭からの進言であった。司祭からの進言にマダカスも再考の余地を認め、話を続けされた。

「その者は助祭の身ではありますが、私の甥で神の僕として相応しい男でございます。その者ならば、暴徒に襲われた商店から店主とその家族の命だけでも助けてご覧に入れることでしょう」

 マダカスの真意を理解していることを言外にくみ取り、マダカスは先の決定を変え、エリック司祭に命じ直した。

「ならば、エリック司祭よ。その者に兵を集め、市中の混乱を鎮めるように命じよ。それから、貴君は我の傍に控え、明日の会談でも同席せよ」

 マダカスとエリックはさよならも言わずにその場から立ち去り、マダカスから見捨てられた部下だけがその場に残った。


「会談の準備はどの程度まで進んでおる?」

 準備を取り仕切っている本部に入ったマダカスの第一声は挨拶ではなく、この一言だった。

「とりあえず紙やインク、ペンなどの筆記用具、机椅子などは揃っていますが、物資不足は否めません。あと、外交要員は確保済みで、典礼や儀礼に詳しい者を子爵閣下から派遣されているため人員には問題ありません」

「あとは物だけということか。ならば安心せよ。先ほど不足分を手配したため、代金の準備をして待っておれ」

 頭を悩ませていたこの場にいる全員がマダカスの言葉に一様に安心した表情を見せた。

「それならばとりあえずの体裁は整いますが、それでも外交儀礼を無視した部分や簡略化したところが見受けられますが宜しいのでしょうか?」

「構わん。我らについて何も知らない相手だ。そんな相手が重箱の隅をつついた外交儀礼の不備に気づくものか。そんなことより、我らの外交儀礼が向こうにとっての無礼になることを心配しておけ」

 最高決定者のマダカスがこの場に姿を見せたことで、マダカスの判断が必要な要件が次々に持ち込まれていった。

「マダカス様、無能な貴族どもが列席されろ、と煩く喚いており、対応の御指示を下さい」

「紙とペンを持ってこい。我の名で黙るように伝えておけ。あと、伯爵と子爵にも黙らせるように頼め。我の命だけでは聞かずとも、伯爵と子爵の命ならば聞くであろう。そのための角が立たない文書くらい考えておるだろうな」

「無論であります。試案ですが、こういった文書ならばと用意しておきましたので、マダカス様のご訂正をお願いいたします。訂正が済みましたら、清書させますので内容をご確認の上で署名をお願いいたします」

審判と答えたあなたはまだまだです。

怪しい判断を続けていたら、審判も交代させられます。


一番強いのは野球のコミッショナーと答えたあなたはなかなかです。

ルールを作って運営する側ですから、確かにコミッショナーは強いです。


金を出すスポンサー様が一番強いと答えるあなたは正直過ぎです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マダガスがかなり有能で興味深く面白いです。 たいていのものは中世で野蛮国ゆえに無能だったりするので新鮮な気持ちで読めます
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