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第6話

言い訳を書かせてくれ。

二週間以内には書いたんだけど、イマイチ筆が進まず、仕方ないから書き直したり、次話を書いたけど、それらも出来が気に食わない。

なんだかんだで二か月かかった。


なんだかんだで第7話も書いたから次の投稿は早い筈。

目標は2か月以内。

本当は次に投稿するのが第6話で、こっちが第7話だったんだけど、書いている途中に逆転しちゃった。

密かに閑話も書いていたけど、第2章は異世界と日本が接触するまでの予定。

多分、次の次くらい第8話で第2章は終わるんじゃないかな。


世界設定を考えずに見切り発車したのが全ての失敗だけど、今も世界設定は出来ていない。

 ヘリコプター搭載護衛艦『いずも』にMV-22が着艦する。

 着艦したMV-22から担架で怪我人が運ばれ、医官が駆け寄って順番に負傷の具合を調べていき、無事な隊員から事情や経過を聞いていく。

 最後に鈴木一尉の遺体が丁重に運び出された。


 マット中尉は司令部に事情聴取のため呼び出された。

「中尉、再度確認するが、熱を感じて鈴木一尉を振り返ったら、鈴木一尉の頭部が炭化していた」

 陸自から派遣された吉田大介二佐が確認するが、陸自や海兵隊の将校は信じられない表情をしていた。

 将校たちは遺体を検死した医官から頭蓋骨の一部まで炭化していた、という報告を事前に受けていたため、一瞬で骨の一部も炭化したという報告はにわかには信じられなかった。

「敵は木製の杖らしきものを使用して鈴木一尉の頭部を炭化させた。敵は同種の杖を複数持っていて、使用すると火の玉が杖の先に現れた。ゲストの一人も同種の杖を携帯しており、謎の光を発して意思疎通を可能にした。と、以上で間違いないね」

「Yes,Sir」

 回収した杖を実際に手に持った将校からは疑惑の目が向けられていた。

「艦長、杖の調査はどうなっていますか?」

 小林浩二一佐、『いずも』の艦長であった。

 現場から杖は全て回収されて、『いずも』に運び込まれてすぐに調査に回された。

「艦内の設備では詳細な分析できませんが、ただの木の杖です。中に何かがある、ということもありません。材質までは分かりませんから、本土に送って調べてもらうしかありません」

 石川正樹海将補が追加で尋ねる。

「艦長、ゲストは同様の杖を携帯していたと聞くが、それは回収しているか?」

「中尉からの進言を受けて、回収済みです。他の杖と区別が付くようにタグを付けて一緒に保管しています。ゲストの杖は本土に送らず艦内で保管する予定です」

 外務省から派遣された外交官もこの場には出席しており、彼からも質問が出された。

「中尉、報告によるとゲストは未知の言語を喋ったが、杖からの閃光で言葉が理解できるようになった。しかし、今はコミュニケーションが取れなくなった。これで間違いないですね?」

「Yes,sir」

「うん、会話している場面は録画されていますが、彼らは現地の言語だと思われる未知の言葉を喋っています。中尉と部隊のメンバーは記憶が確かなうちに字幕を作成しておいてください」

「中尉は彼らの身元を特定する何かを見たり、聞いたりしていないだろうか?例えば、出身や身分でも、分からなくても構わないから何か無いだろうか」

「Nothing,sir」

 外務官僚は頭を掻きながら、これからのことを考え苦笑する。

「ゲストの容態が回復するのを待つのが正道ですが、とりあえず意識が回復するまでどのくらいかかるか分からないですか?先生」

 先生と呼んで、ゲストの容態を軍医に尋ねるが。

「こればかりは患者次第としか言えません。かなり逞しい肉体とそれに見合う体力のおかげで助かりましたが、搬送中に死んでいてもおかしくない傷でしたから、当面は安静にしておく必要があります」

「いっそのこと、怪我人の保護という人道支援を題目に掲げ、この近くの港町に寄港して、外交的接触を図ってはどうでしょうか?」

 重い空気に耐えかねるように提案が出されるが、艦長と外務官僚から一蹴される。

「そういった判断は自衛官たる本官たちの領分を超えている」

「やりたくはなりますが、保護した怪我人が何者か不明で意識も戻っていない今、慌てて接触するのはまずいですね。中尉の報告やゲストの外見から判断したら犯罪者である可能性もありますし、犯罪者でなくても大怪我を負って意識不明では私たちがやったと誤解されても、訂正してくれる人がいません」

 日本には無駄に過ごせるだけの時間が無いこと、焦って失敗することが許されないことをこの場にいる誰もが承知しており、だからこそ先送りとなる答えしか出せなかった。

「市ヶ谷に報告と指示を仰ぐ、それまではゲストは賓客として扱うこととする」 

「やっぱりそうなりますよね。私も霞ヶ関の外務省と永田町の総理官邸に報告と指示を求めます」




 情勢はマダカスに味方していた。

 天の時、地の利、人の和を得てマダカスは復権を果たそうとしていた。

 王国は大きく5つの地区に分けることができる。

 王都のある中央部、海に面している西部、ストロングフォートを含めた東部、北部と南部である。

 中央部は王家の直轄領と親族の領地で固めており、国内交易路の中心地に実り豊かな土地という経済力と食料生産力を背景に軍事力の主力を養っていた。

 東部は王国建国以来の臣下が多く、異種族国家と国境を接していたため小競り合いが激しい地域であったゆえに、王国と王家に忠誠を誓っていても、王国を支えているのは自分たちだという自尊心から傲慢な性格な領主が多かった。

 西部は新興貴族が多く、もともと海に面し海洋貿易が盛んであったため、商人など平民の力も強かった。

 また、航海は命がけであったため、信仰心も強く、至高教の影響力が強かった。

 このため、王国貴族を名乗っていても独立心が旺盛であり、王国より至高教のほうが影響力があった。

 こういった地域だったからこそ、至高教も昔から王国西部での布教活動は熱心であったが、大聖堂がカベン青空大聖堂しか無かったのには王国の政策に原因があった。

 独自の軍隊を有し、独自通貨まで発行して、王国内に自治領まで獲得していた至高教という大組織に歴代の国王と王国は権力の統一を目指して対立を続けていた。

 現国王の代では至高教の王国派という独自の宗派を創設して、王国内の宗教面のトップも国王が兼任する体制に変更しつつあった。

 内乱を恐れて、全ての至高教を王国派に強制的に改宗させてはいなかったが、王国派以外は難癖をつけては弾圧していた。

 王国軍が防衛の要所であるストロングフォートが陥落するまで放置した理由も、最大の理由はストロングフォートで突出していた国境線の整理だったが、ストロングフォートが王国内における戦力としての至高教の主力が駐留しており、実力者のマダカスもろとも排除するというものもあった。

 王家と親しい中央部や東部を中心に南部や北部も王国の方針に従い、王国派至高教への改宗を進めていたが、西部だけはこれに反対し続けていた。

 独立心と信仰心が強かったため西部は王国からの侵攻と捉え対抗していたが、王家を筆頭に西部以外の王国からの圧力によってカベン以外の大聖堂は大聖堂から格下げされるなど屈しつつあった。

 西部を取りまとめていた大貴族であるフィリオン伯爵家も当主がまだ若く、経験不足だったのも原因だったが、独立心が強い西部では大貴族といっても他の地区の大貴族と違って絶対的な存在ではなかったのも理由であった。


 さて、こういった状況で中央に不満と不信をため込み、団結も欠いていた西部に謎の飛行物体が現れ、王都周辺まで飛行した。

 これに王国はストロングフォート陥落を受けて編成していた軍隊を二つに分け、一つを王太子を総大将にして西部防衛に充て、西部貴族は王太子の指揮下に入るようにと伝令が伝えてきた。

 王国からしたら王国防衛というのが名実ともに目的であり、西部への圧力などといった目的ではなかったが、西部貴族はこれを王国による直接統治の地ならしと受け取った。

 しかし、西部には盟主になるほどの大貴族はおらず、単独で立ち向かえるほど蛮勇な貴族もいなかった。

 されど、マダカスが至高教という王国や王家に匹敵する、西部内では凌駕する権威を持ち出したことで、マダカスを中心に西部貴族が一つに団結した。

 団結したことで、至高教と西部貴族が連名で王国に対して王国軍派兵を拒むという事態になっていた。

 今のマダカスには至高教の残存戦力だけでなく、王国西部という王国最大の金持ちと王国の海上戦力、西部貴族連合軍という力を得ていた。

 拠点をカベンから西部最大の都市、かつ、王国最大の港町ウェストフォーレンに移していた。


「フィリオン水軍の到着までどのくらいかかる?商船の借用は進んでいるか?相場以下で借りてはないだろうな。相場にある程度上乗せして船乗りごと借りておるな。王都と聖都の能無しどもが手を結ばぬように監視と流言飛語に抜かりがないだろうな」

 ウェストフォーレンの中心にある聖堂ではマダカスが水を得た魚のように次々に指示を飛ばしていた。

 聖堂には西部貴族と有力者が集結しており、フィリオン家とウェストフォーレンを治めるドンツェリ子爵家の騎士と従者が外周部を、神殿騎士団が聖堂周囲と内部を守っていた。

 王国貴族社会で平民や海賊の末裔と蔑まれてきた西部貴族たちが王国の軍事力を用いた強権に抗い勝ったとして、戦勝祝賀パーティと化していた。

 パーティー会場は酒池肉林であり、謎の飛行物体という当初の問題を忘れるくらい浮かれていた。

 マダカスはそういった浮かれている貴族は早々に見捨てて、次を見据えることができる脳みそのある貴族と商人や実力者といった使える連中だけで実務に取り掛かっていた。ここでいう実力者とは文字通りの力がある連中で、王国や一般的な言葉では『海賊』と呼ばれる類であった。

 『海賊』といっても完全な無法者ではなく、特定の水域に根を張り、そこで通行料を取る代わりに、他の海賊から守っていた。また、貴族や商人と契約して海軍としても戦力を提供する傭兵や荷物を運ぶ輸送業も取り扱っていた。無論、通行料を払わない商船にはそれに相応しい対応をするが、地球でいえば私掠船や中世日本の水軍に近い存在である。だから、王国政府からは海賊として扱われているが、西部では実力者として畏怖と敬意をもって扱われていた。

 海の向こうから飛来した謎の飛行物体に備えるには海軍が必須であり、フィリオン伯爵やドンツェリ子爵といった有力貴族はお抱え海賊以外にも、独自の水軍を抱えているが、西部で海軍といえば『海賊』のことである。

「マダカス様、フィリオン水軍には王国海軍を抑えてもらってまさぁ。前の伯爵様がフィリオン水軍の長でしたから、伯爵様が亡くなられてフィリオン水軍も長を交代して、こっちに合流させるよりは良いかと思って勝手に指示を出させてもらいました」

 『血の銛』海賊団団長パト・ディーン、海賊でも数十の海賊船を傘下に抱えて数千人の海賊の長という決断力と大局観を併せ持つ相手の独断である。マダカスもディーンを一兵卒として雇ってはなく、そもそも一兵卒として雇ったなら聖堂内に呼ばないが、独自で判断できる頭のある側近として雇ったのである。

「構わん。海や戦いについては門外漢だ。だから、お前たちを高い金を出して雇ったのだから、このくらいしてもらわないと困るぞ。それで、王国海軍はそれで大丈夫なのだろうな。西部や海賊対策に王国海軍は最新鋭艦を建造したり、他国から輸入しておったはずだが」

「大丈夫でっさ。あれらは見てくれだけの陸ものの海軍でさ。正面から真っ向勝負の決戦でもない限り、その辺の海賊でも負けませんぜ」

 陸戦には幾分かでも心得があっても海戦は門外漢のマダカスにとっては数と装備で上回る相手にここまで自信を持てる理由が分からず、自信の理由を尋ねる。

「海のことは分からないが海戦は船で決まると聞いたことがある。王国海軍は以前見たことがあったが巨艦ばかりだったぞ」

「船の良し悪しは船乗り次第でっさ。陸ものはそこら辺が分からず、デカい船の数を増やすことしか考えていません。船はデカけりゃ強いってわけではないんでさ」

「なるほど、ボンボンの重騎士と東夷の軽騎兵のどっちが強いと同じことか。納得がいったが、王国海軍を一隻残らず釘づけにしておけよ。沈めてしまっても、港ごと焼き払っても構わんが、その時は我らに繋がる証拠を残すへまをするなよ」

 王国と聖都に先んじているマダカスだったが、王国も聖都も後塵に甘んじるつもりは一切なく予断を許さない状況が待っていた。

 9月9日、階級を間違えていたので、訂正しました。

 海将→海将補

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[気になる点] >「マダカス様、フィリオン水軍には王国海軍を抑えてもらってまさぁ。 水軍と海軍と使い分けてるみたいですが違いはなんですか? このあとの話で海上自衛隊を海軍ではなく水軍と分類したのはな…
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