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第4話

前回の投稿から、いろいろあって時間がかかりました。

Factorioとラノベとアニメとその他諸々が悪い、俺は悪くない。

最長でも2週間以上投稿間隔は空かないようにします。

目標は毎日投稿。

 海上自衛隊DDH-183『いずも』、米海軍LCS-22 USSカンザスシティ、DDG-87 USSメイソンが日本の太平洋沿岸を東に向かって航行していた。第7艦隊に設置されたJTF-507の指揮下に組み入れられた米軍艦艇は、第7艦隊旗艦ブルーリッジからの命令により硫黄島近海でDDH-183『いずも』、並びに、陸上部隊と合流して派遣命令を待ち続けていた。

 JTF-シノビのP-1が謎の陸地を上空から探索したところ、人らしき影と都市と思われる人口密集地が見つかった。

 写真を分析する限りでは、写っているのは産業革命以前の文明であった。

 21世紀の地球に産業革命以前の文明などはごく一部の例外を除いて観光地くらいしか残っていない。写真に写っているような広範囲が産業革命以前の文明を残している地域など存在していない。

 航空写真などから製図した地図などの地形情報は集まったが、上空からの探索では限界であると判断され、地上部隊の派遣が正式に決まったのが前日のことであった。自衛隊と米軍では上空からの探査を始めたときから、地上部隊の派遣も検討しており、準備も整っていた。自衛隊と米軍が艦艇と人員をそれぞれ出し合った合同部隊を編成も完了済みであった。


 日も沈み、夕食の時間となり、『いずも』士官食堂も混雑し始めていた。

 普段なら利用者は海上自衛隊幹部自衛官だけだが、今は収容している陸上自衛隊と米軍の士官も利用しており、普段以上に混雑していた。

「ですけど、このままで本当にいいんでしょうか。本土に戻れば分かってしまうわけですし」

 まだ若い三等海尉が、夕食を食べつつも思わず口に出してしまった話題に、話し相手だけでなく近くで偶々耳に入った自衛官たちまでもが顔をしかめてしまった。相手が顔をしかめたのを分かっていたが、三尉はそのまま胸に溜まったものを出し尽くす。

「曹士の間でも不安が広がっています。このまま誤魔化し続けて、帰ってからのことを考えると、それに、自衛官にも知る権利があると思います」

 現在、『いずも』を含めた派遣艦には無線封鎖の指示が出され、通信には厳しい制限が設けら業務上必要最小限の通信だけが許されていた。無線封鎖の理由はマスコミなどへの報道規制の一環という説明が乗組員にはされていた。

 偶然、席が近くで三尉の愚痴が聞こえた年配の二等陸佐は三尉の胸のうちに蟠っていた思いを吐き出しつくしたのを見てから、三尉に接する。

「この任務の重要性は海自の君も理解しているだろう。私だって部下に秘密を抱えることに思うことが無いわけじゃない。全員に秘密を打ち明けたらすっきりするだろうし、秘密を打ち明けて、私も部下も任務に打ち込めるなら秘密は無しにするべきだが、これは違う。これを聞いて任務に集中できる者は限られている。陸では僅かな気の緩みも死に繋がる許されないことだ。部下の命のためなら、部下から後で怨まれようとも秘密にしたままにするさ。そのための幹部だと私は思っている」

 二佐に窘められた三尉は申し訳なさそうな表情をした。二佐と同席している米海兵隊中佐が口を出す。

「私も、二佐さんと同意見デス。Officerが責任者です」

 中佐が口を挟んだことで、二佐は話題を変える。

「そういえば、中佐にお尋ねしたいことがありまして、米軍の指揮系統はどうなっているのでしょうか?米軍というのはJTF-507ではなくて、在日米軍全体の指揮系統です」

 異変以来、ホワイトハウスやペンタゴン、真珠湾との連絡が絶たれている在日米軍の指揮系統の話題にはこの場の誰もが関心を持っていて、食事の手を止めて中佐の回答に耳を澄ました。

「私から正確な答えを出すことはデキません。アメリカ軍の指揮系統は正しく機能しているとしか言えません」

「正確でなくても構わないのです。現在、どうなっているかという概要だけでも教えてもらえませんか」

「私も正確なことをシリマセン。CongressmansとAmbassadorとMilitary Commandersの協議で、全体の指揮を執っています。今後は法務官が調べています」

「Military Commandersというと、第7艦隊や第3海兵遠征軍などの日本に展開中の部隊の司令官たちでしょうか」


 異変が起きたとき、日本との交流を目的に米下院議員が来日していた。

 立法府である連邦議会の議員と行政府である大統領から指名された米国大使のどちらが責任者なのかという問題が生じていた。米軍も最高司令官は大統領であり、連邦議会は軍隊に命令する憲法上の権利は無く、大使もあくまで外交官であって米軍に対する指揮権は無かった。しかし、米軍将校は武官であり、文民ではなかったため、文民統制の観点から疑問が生じた。

 また、在日米軍には指揮権を持った司令官がいないことが問題を複雑化させた。在日米軍には在日米軍司令部があり、第5空軍司令官が在日米軍司令部の司令官を兼任している。しかし、在日米軍司令部は部隊への指揮権はなく、日本政府や米軍間の調整役であった。作戦部隊の指揮権はそれぞれの司令部が有しており、異変前なら米太平洋軍が上級部隊として統括していたため問題は無かった。だが、各作戦部隊に命令できる存在が消えたことで、在日米軍全体の指揮を執れる将官もいなくなった。

 このため、在日米軍の指揮は誰が執るのかが問題となっていた。


「Yes。デモ、先に言っておきますが、この中で誰がリーダーか、私は知りません」

 この話を聞いた誰もが、誰が指揮官かを士官も把握できていない状態で指揮系統が正しく機能している、と言えるのかという疑問を抱いていた。

「二佐さんの思っていることは私も分かります。しかし、今はこの体制で機能していマス。」

 初日から艦隊内には微妙な空気が蔓延しつつあった。




 『いずも』司令部作戦室で第1護衛隊群司令が報告を待っていた。

 USSカンザスシティが無人機MQ-8を使い、沿岸域の安全の確認のため先行していた。

 見通し線外の通信であったため、SH-60KがUSSカンザスシティと『いずも』間の通信の中継を行っていた。

『IZUMO, This is USS Kansas City. Radio Check. Over』

「USS Kansas City, This is IZUMO. Loud and clear. Over」

『IZUMO, This is USS Kansas City. LZ green. I say again. LZ green. Over』

「USS Kansas City, This is IZUMO. Roger that. Out」

 待っていた連絡が入り、同室している陸自と米軍士官も司令に注目する。

「突進隊を上陸させろ」

 司令の作戦開始を告げる作戦コードを皮切りに司令部作戦室の内外を問わず、忙しく動き始めた。

 『いずも』の飛行甲板で開始の合図を待っていたMV-22オスプレイのローターが動き出した。装備を身につけた武装した10名ほどの兵士がオスプレイに順次乗り込んでいく。

 陸上自衛隊の中でも最精鋭である特殊作戦群と米国海兵隊武装偵察部隊、フォースリコンの合同部隊である。何が起きるか分からず、十分な支援を用意できない状況下で確実に任務を果たして、生還させるために今の日本が用意できる最高の精鋭たちであった。総理から現場判断での火器の使用を事前に許可されており、戦後初となる自衛隊による戦闘も想定されていた。

 統幕長に実弾使用の許可を告げた山之内、告げられた本多の両者の服は汗でびっしょり濡れており、直ぐに服を着替えたほどであった。


 LZ、着陸地点は一面草に覆われたなだらかな平原が広がっている。

 この周辺は平原が広がり、平原の各所には農村が確認され、食糧生産地帯と推測された。

 MV-22オスプレイがLZに着陸して、搭乗者である特殊作戦群とフォースリコンを降ろしていく。降りた部隊は素早く着陸地点の周囲を固めて、周囲の安全を確保する。

『ロメオ1、こちらヴィクター1、これより当機は帰投する。幸運を祈る。終わり』

 部隊を運んだMV-22が再び離陸して、『いずも』への帰路につく。

 特殊作戦群の鈴木昇一等陸尉が合同部隊の隊長を勤めている。鈴木が不正確な地図と方位磁石を頼りに、目的地である農村までのルートを確認する。

「目的地はここから南東に8kmといったところだ。再確認するが、地元住民との接触は慎重に行うこと、武器の使用は攻撃を受けた場合のみ、それも必要最小限の使用に留めること、危険を感じたら即座に引き返す。分かったな」

 米国が世界に誇る世界最強の揚陸集団から選び抜いた偵察のプロフェッショナル集団フォースリコン、日本国陸上自衛隊16万人から選び抜いた約300名の特殊作戦群の合同部隊。自衛隊の最精鋭と経験豊富の米海兵隊の最精鋭が、持っている技術と経験を組み合わせて任務を遂行する。

 言葉にすれば完璧そうで、マスコミや一般国民向けには最適である。

 海空や司令部では実戦経験が豊富な米軍の支援や助言は大きな助けになるが、現場の陸上部隊となると話が違う。特殊作戦群は語学は堪能で、米軍との合同訓練も積んでいるが、今回の合同部隊となると訓練すらまともにする時間も無かった。両者が顔を合わせたのも出航してから、米軍艦艇と合流した後のことであった。

 日本の置かれている状況を考えても、あまりに準備に時間が無さ過ぎていた。

 そもそも米軍からは司令部要員や海上艦艇、航空機の提供は受けても、合同部隊の話は最初は無かった。作戦が立案された後から政府からの要望という形で編成された即席部隊である。鈴木を含めた特殊作戦群やJTFだけでなく統幕も難色を示したが、首相からの命令が下った。

 鈴木は先行きに不安を感じつつも、前進の号令を伝えて、歩き始める。


 今回の探索では、地上部隊を集落から離れている地点に降ろし、徒歩で集落周辺まで移動。住人に気付かれないように周囲を偵察して危険の有無や何らかの情報を持ち帰るのが作戦内容であった。

 地元住民との接触は危険性の有無を確かめ、隠密裏に情報を得てから行われる計画であった。平和的な接触を基本としているため、外務省から派遣された外交官も『いずも』には乗船していた。


 もっとも近くにある集落は農村と思しき集落だったが、航空写真にはもっと近くの海岸付近に集落は写っていたが、写真の内容からキャンプであり定住拠点ではないと判断され、探索目標からは除外された。

 着陸地点から目的地の農村までは何事も無ければ2時間ほどで到着する道のりである。

 欧州でも珍しい自然豊かで、人工物が視界内に無く、舗装された道も無い草に覆われた平野が一面に広がっていた。遠くには野犬か狼かの犬の姿やロバらしき姿、空には鳥もいる長閑な風景であった。工場などから出る排気ガスが混じっていない澄んだ空気に、心地よい風が吹いている。

 警戒心を解いたわけでも、任務を忘れたわけでもなかったが、訓練された精鋭であっても、木石ではなく人である彼らにもこの風景には感動を覚えざるをえず、つい見入ってしまうほどの光景であった。


 移動を開始してから一時間ほど経過したときであった。先頭を歩いているマークスマンが僅かにある凸凹で遠くからは見えなかった洞窟を発見した。

 洞窟の出入り口や周囲の草は踏み潰され、不特定多数が洞窟を出入りしている痕跡が残っている。慎重に見回すと、周囲には車輪らしき跡も洞窟に向かって伸びており、出入りしているのが野生動物ではないことも示していた。

 鈴木が任務前に感じていた緊張は長閑な風景で適度に解され、他の隊員も同様であった。

 マークスマンからの手信号や周囲の状況から、隊員たちに警戒を指示する。

 航空写真から周囲には村落があることが分かっている。それなのに洞窟にいるのはどうしてか。洞窟という自然物を建物にしている可能性もあるが、それなら洞窟の周囲に使用していることを示す人工物が無いのは不自然である。

 何らかの事情があって、一時的に洞窟に避難しているという可能性もあるが、近くに農村があって洞窟に潜むような連中がここにはいる、ということである。

 農村から追い出された連中か、農村から追い払いたい連中という可能性があった。

 追い払いたい連中が見たこともない合同部隊を見つけて、3つ星レストランのフルコースをご馳走してくれて、5つ星ホテルのスイートルームを提供してくれるなら歓迎だが、そんな良い連中なら洞窟に隠れる必要が無い。

 任務前の鈴木は自衛官としては決して褒められないことだが、自衛隊史上初の実戦の可能性とその指揮官という立場に興奮を覚えていた。しかし、自衛隊史上初の実戦を前に、今の鈴木が感じているのは興奮ではなく、今まで感じたことが無かった重圧を感じていた。自衛隊が抜かずの宝刀であったことを誇りにしてきた組織や自衛官の重みである。

米軍艦艇は実際の編成を無視しています。

理由は特に無いです。実際とは違う編成をしているほうが良いかな?程度です。

LCSは趣味です。あの形が好きなんです。LCSは大活躍して欲しいんです。


JTF-507は実際に第7艦隊に存在しています。

米軍は常設のJTFを設置していて、日本には第7艦隊のJTF-507と第3海兵遠征軍のJTF-505があります。

日本には前方司令部がある第1軍団にもJTF-501があります。

これらは中将が指揮官ですが、ハワイには大将が指揮官のJTF-519があります。

トモダチ作戦ではJTF-519が指揮していますよ。


下院議員が登場したのは大使だけだと今後きつくなるかな、という思いからです。

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