半年経過中
シアン(まだ頭痛い…。)
あれから半年、私達は依頼をこなす、お金をもらう、節約しながら食料や服などを買うを繰り返した。ふふん!これで汚いものを見る目で見られることもないわ!そして、漸くこの国から出られるだけの準備が整った。
ちなみに私は麗奈が女神だったこと、そもそもあれが麗奈だったのかは、まだ心から信じていない。 騙す理由も何も思い付かないんだけど、突拍子も無さすぎるし。
そうそう、槍についてなんだけど、レイには空間魔法を試しに使ったら出てきたと伝えた。彼女が女神だと断定できないし、例え話したところでレイが何か尊敬の眼差しで私を見る未来しか見えない。伝えた当初はあんまり信じていなかったが、『話したくなったら言ってね?』と言って聞いてこなくなった。恐らく、知られたくないことの一つや二つ誰でもあると判断したのだろう。…本当に子供なの?私に対して物凄く気を使われてるんだけど。
槍を試しに振るった時はちょっと焦った~…。一瞬で森が平地になったんだもの。その出来事は国で七不思議のようなものに加えられたらしい。悪魔が舞い降りたと。…私は悪魔か!
「姉さんがそんな魔法使えて良かった。これで食料も貯めておける。馬や馬車を買わなくて済むね。」
うん、確かに。それに空間魔法は制限が無いけど、馬車だと大きさに見合った物しか入らないし。
『レイって土地勘ある?』
「記憶力には自信があるよ。姉さんが目指してるのはここだよね?一度父さんと来たことがあるから大丈夫だよ!」
レイが地図を開いて指を指す。一度だけなのに覚えてるんだ…。私もそれが前世からできていたら歴史や国語も楽勝だったのに!選択問題で赤点を回避し続けたせいで略してセンカイってアダ名付けられたし。
「ね、姉さん?」
レイが怯えた表情で私を見る。あっ、歯軋り鳴ってた…。
『じゃあ、荷物を確認して…出発!』
とりあえず私は誤魔化した。
目的地の名前はブラッツ。世界で一、二を争うほど大きな国でレイによると徒歩で約一週間らしい。この世界では一年で360日、一週間は六日。うん!一日減った!と思えば少しは気が楽に…なる…はず…。それから、三日後。
「ね、姉さん…、少し…休ませて…。」
う~ん、レイの体力が思いの外…というより、子供に体力を求めるのは間違ってるわね。寧ろ、年齢のわりに体力はかなりある方だと思う。でも、それはあくまで年齢のわりにでちょっと長旅は厳しいわ…。一応、二週間分の食料があるけど、大丈夫かな…。仕方ない…、はい!
「えっ?えっ!?何これ!?」
『風の魔法で浮かせてるの。このまま暫く運んであげる。でも、魔力が切れたら自分で歩いてよね?』
何だろう…、レイがお腹を抱えられて持ち上げられなす術もなく無抵抗でいる猫みたい。まあ、自分の魔力がどれだけあるのか測るついでよ。
五日後、どうしよう…、全然余裕なんだけど。そもそも疲れないし。レイがさっきから『もう大丈夫だから!』って言ってるけど、スルーする。測るため、測るため。夜になり、洞窟を見つけてそこで野宿することにした。流石に野宿してる間は降ろすわよ?
「姉さん、凄いね…。僕も人並みに魔法使えるようになりたかったな…。」
そういえば、あの自称女神の彼女ならレイの才能がわかるかも。私はレイにお花摘みに行くと伝え、影で祈ってみる。
『あっ、結愛!野宿頑張ってるわね!』
野宿って頑張るものなの?それよりもレイについて知りたいことがあるんだけど。
『才能?』
そう!
『結愛って自分で考えるの好きじゃなかった?』
自分のことならそうしてるけど…
『自分で気づいた時って、きっと凄く嬉しいと思うの!』
でも、このままだと自信喪失しちゃうんだけど…。
『じゃあ、一つだけ教えてあげる!そうそう、結愛の魔法の才能は全属性と膨大な魔力だけじゃないからね?』
えっ?そうなの?そして、私はレイの才能を聞いた。
八日後、レイを浮かせながら歩いている分ちょっと遅くなっていたが、漸く着いた。レイも諦めたのかほとんど寝ている。門番に変な目で見られると困るので見えない範囲でレイを起こし、地上に降ろす。そして、私達は身分証明のため門番にギルドカードを見せ、国に入った。
門番(こんな小さな子供まで冒険者なのか…。)




