建設中
シアン(あっ、忘れてた…。杞憂だったわね…。)
「姉さん!ここ、綺麗な川が流れてるし、魔物も少ないよ!」
拠点に相応しい場所は思いの外、早く見つかった。川の水も…大丈夫ね。めちゃくちゃ綺麗なんだけど。まあ、願えば一発よ。この流れ…じゃなかった、願えば叶う体質はこういう時に役に立つ。ただ、叶えなくていいことまで叶えてしまうから好きになれないだけで。
川があれば魚も捕れるし、体も洗える。ふふん!何だか無人島生活してるみたいでワクワクする!
「でも、どうするの?簡単な小屋でも一からやってたら日が暮れちゃうよ?」
ご心配なく!複数の属性を使うことができればこういうことだってできる!え~と、土属性と水属性で…えい!
私が二つの属性を用いると地面から突然木の柱が現れ、簡単な小屋を形成した。
「えっ!?…木?」
『本で読んだことない?土属性と水属性を混ぜると木属性になるのよ。』
「そうだったんだ…。魔法のことは諦めているからあまり読んでなくて…。」
諦めちゃダメよ!と伝えたい。色が出たからには何かあるはずだから。でも、私もそれが何なのかよくわからない。わからないのに伝えてぬか喜びさせたくないし。私なりに調べるから諦めるのはもうちょっと待ってて!…と、その前に家具作り。長居はしないし、机と椅子くらいでいいわね。魔法って便利ね。
それ以外にも小道具を幾つか作っていると、いつの間にか森を紅く照らしていた。もう夕方…。さて、魚を捕りましょう。
「姉さん、何処行くの?」
『魚釣り。』
えっ?釣竿も作ったのかって?作ってないわよ。面倒くさい。こうするのよ!水の魔法で打ち上げる。作っておいた水の入った木の桶にダイレクト!大漁!
「…姉さんって一人で生きていけるね。」
呆れないでよ!
「それじゃあ、僕が料理をするね。姉さんにばかりに頼ってられない。」
レイは私が錆取りした刀で捌こうとする。私はその手を掴んで止める。あぶなっ!
「姉さん!どうして止めるの!」
『止めなさい!それでゴブリン斬ったでしょ!それに包丁代わりには少し不適切よ。』
「うっ、じゃあ、どうしたら…」
簡単よ。氷の魔法で包丁を生成。まあ、溶けちゃうから一日限定だけどね。レイがその包丁を受け取ろうとするが渡さない。
「姉さん!姉さんばっかりだと申し訳ないよ!」
『男の子には男の子にしかできないことがあるわ。ほら、あの樽モドキに川の水を入れて火で温めて。』
お風呂よ、お風呂!家では全然入れてもらえなかったし。ちなみに男の子にしかできないなんて伝えたけど、力も私の方が上だったりする。どうも、前世の力が引き継がれてるみたいで。体育では常に一番だったもの。断トツで。 音楽も、家庭科も、…えっ?基本の五科目、国数英社理は?…って?い、一番よ!そう!断トツで!一番…点数が低かったのよ!(泣)
「姉さん?泣いてるけど…もしかして指切った!?」
レイが火に酸素を送りながら心配そうにこっちを見る。
『目にゴミが入っただけよ。』
そう、泣いてないのよ!だから、心配そうに見ないで!あっ、家からくすねてきた紙がキレそう。木を風の魔法で薄くカットして補充。色が茶色で文字が読みにくいかもしれないけど、特に気にしない。
う~ん、地球でも見たことがある魚もいるんだけど、この世界ならではっていうのもいるわね。だったら、光属性魔法アナライズで毒性がないか調べる。…全部問題なし!それもそっか。私が食べるのを目的に捕ったんだから。本当に何でも叶うね。丁寧に捌いていって…お刺身のできあがり!ご飯と酢と醤油があったら、お寿司ができたのに!まあ、綺麗に御作りができたし、今回はそれで納得しよう。
「はあ…はあ…、姉さん…終わったよ…。わっ!?凄い!何だか芸術みたいだね!」
そんな大袈裟な…。
「でも、火を通してなくても大丈夫?」
あっ、この世界では…いや、この国出身では生で食べる習慣はなかったわね。
『大丈夫、美味しいわ。いただきます。』
「…いただきます。」
そうそう、このいただきますって私が教えたのよ。私を見て育つって何だか嬉しい!まあ、命の恵みに感謝するのも大事って理由もあるけど。
食後に少し時間をおき、レイはお風呂に入っていた。当然、火は私が担当。魔法で。レイがお鍋の具になってるみたいで、面白い!
「姉さん、何だか変なこと考えてない?」
『…気のせいよ。』
誤魔化そう、レイがお風呂嫌いになりそう。
「姉さん、ずっとこういう生活を続けるの?」
『いいえ、近いうちにこの国から出ます。その方がお互いのため。』
「…そうだよね。姉さん!今は僕がお世話になってるけど、いつか僕が姉さんを助けてあげるね!」
『うん!期待してるわ!』
ごめんなさい!そんなに期待してないわ!そして、レイが出た後で私も入り、寝る前にあることを実験してみることにした。
シアン(さあ…果たして…)




