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1話

「ふむ、ここが異世界か……」

 日本の上空に転移したクレーアトルは下に映る街の風景を見る。

「ふむ、この世界は些か空気が汚れているな。だが、カガクなるものは実に興味深い。只の鉄の塊があのように地を走り、海を越え、空を駆ける。これはまさしく未知である。ああ、来て早々にこのようなものに出くわすとは……異世界は素晴らしいな」

 車や船、飛行機等を見て感嘆の声を上げる。

 彼は未知なるものに興味津々だった。

「さて、この法はどうなっているか……どれ」

 人差し指を頭に置き、意識を集中させる。

「ほう、ここでの殺しは御法度。要するに悪いことは駄目だということか、それもまたよい。そして何よりこの国は戦争はしない平和の国とは恐れ入った。このような国が存在するとは……」

 自分が統治していた世界と比べ、日本が全然違うことを知り驚愕に目を見開く。

 全体とまではいかないが、国一つだけでも争いごとがないというのはそれだけで嬉しいことである。

「だが、自然を壊すのはいただけんことだ。しかし、この世界にはこの世界のやり方がある。故に過度にやり過ぎた場合のみ粛正するとしよう。そして……」

 クレアートルは一つのことに関心を向ける。

「この『マンガ』や『アニメ』といったものはなんだ? 人間が絵を描き、娯楽品を創っているのか。まるで神のように物語や人物を鮮明に生み出している……」

 前の世界には存在しなかったものに、クレアートルはうち震えた。

「しかも、多彩の分野に別れていて全く真新しいものが生み出されている。飽きることをさせない未知の娯楽品……」

 そしてクレアートルはニヤリと笑った。

「素晴らしい、素晴らしいよ! このようなものを創り出すとはいやはや恐れ入った。ああ、見たい。読んでみたい。これを読めばどれほど私を楽しませることができるかが予想つかない!!」

 クレアートルはよし、呟いた。

「この世界に干渉したが、このような娯楽品は金銭で購入できるらしいな。そのためには金銭を得ねばならん。たしかここに……」

 そしてクレアートルは懐から紅い宝石のルビーを取り出す。

「私にとっては価値のない石ころだが、富豪の家に持っていけばそれなりの金銭がもらえるだろう。さてこれを買い取ってくれるようなところを探さねば……」

 そして、ある富豪を見つけ転移を行いその家に向かった。

 ルビーを家の主である男に持っていきそれを見せると、男は目を見開き喜んでルビーを高値で買い取ってくれた。

 何十枚かの紙幣を手に入れ、クレアートルはふっと笑う。

「この世界の金銭は金貨等と違って数字が描かれているとは優しいな。だが……」

 クレアートルは紙幣をよく見つめる。

「金貨もそうだったが金銭に人物を描くのは人間達の暗黙の了解なのだろうか? それにしても偉そうな顔だな……」

 紙幣に書かれた人物を見て思わずそう呟く。

「まあいい、これで金銭は手に入った。あとは買いにいくだけだ」

 クレアートルは購入しようにも何処に売っているのかがわからないため、その辺の人間の記憶を除いて探すことにした。

 完全にプライバシーの侵害だが、この男にそんなものは存在しないのある。やがて、近くにアニメグッズ専門店を見つけ喜んでそこに向かったのだった。

「ふむ……この日常系というのもいいが、魔法少女ものも捨てがたい」

 クレアートルは手に取った2冊のライトノベルのどちらを買うかで悩んでいた。

 そして店の中にいる店員を含めた人たちはクレアートルの格好に注目していた。忘れてるかもしれないがクレアートルの格好は体全体を隠すフード付きのロングコートを着ているのだ。

それだけならまだいいと思うが、クレアートルのコートは長い年月を来ているためか所々ボロボロになっている。

 まるでゲームに出てくる魔術師のような風貌と雰囲気を持っていることから、コスプレイヤーか変質者と思われることだろう。

 そんな男がライトノベルを手に取りながら唸っているのだ。気になっても仕方ないだろう。

「両方買うか……」

 結局両方買うことにした。

「さて、次は住まいだな」

 クレアートルは次は住まいを手に入れるための必要な知識を世界の理に干渉し確認する。

「ふむ、まずは戸籍が必要か……まあそれは魔法でなんとかするとして家だな。さて、どうしたものか……」

 少し悩んだが、何か思いついたのかハッと顔が変わる。

「そうだ、私が家を作ればいいのだ」

 いうやいなやクレアートルは魔法や何かよくわからない力を使い、戸籍や使われていない土地を所持したことにし、そこに家を造り出した。

 普通は犯罪だが、神に常識は通じないのである。

「ふむ、異世界の住居もなかなかよいな。ではさっそく楽しむとしよう」

 クレアートルは手に持ったライトノベルやマンガを見て、うきうき気分で家に入っていった。

 こうして日本に異世界の神が、誰にしられることなく日本に住居を置いたのである。

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