死(四).光理の決意
家に帰った俺は、折原さんのノートを探した。肩祓いについて調べないと…。
「あれ…?」
肩祓いに行くとき、玄関に置いてきたと思ったのに…靴箱にも、玄関マットの下にもノートがない。どこに行った?誰かが家に入った訳でもないし、盗まれた訳でもないだろうに…良く考えろ、肩祓いに行く前は俺が持ってた。そこに緋唯が来て、俺を連れて行こうとした。ノートを玄関に置いて、神社に―…。待てよ?あの時緋唯は俺の後から遅れ気味に歩いてきた。玄関にかぎはかけてなくて…ノートを持ち去れる状態―!!よりによって緋唯にノートを持っていかれた?くそっ、最悪だ…!折原さんになんて言えば…。
俺が玄関で立ち尽くしていると、電話のベルが鳴った。こんな時に誰だ?
「はい、もしもし…」
「あっ、雄介君?光理…だけど、今いい?」
「お、おう…光理。東京からは帰ったのか?」
「東京!?」
光理がすっとんきょうな声を上げた。
「え?東京行ってきたって…実弥が言って…」
「あ…そ、そう…帰ってきたの。所で、今から雄介君の家に行ってもいい?」
「急ぎの用なのか?」
「む、無理だったらいいけど…早い方がいいかな…」
「じゃ、今から来いよ…」
10分ちょっと待ったか。光理は俺の家にやって来た。なぜか巫女衣装を着て。
光理は俺の目に気が付いたのか、笑って
「この服、変?」
と訊いて来た。
「いや…別に変じゃない」
俺はそう言いながら、光理を居間に通した。冷蔵庫に入っていた麦茶を光理に渡し、床に向き合って座る。
「で、何だ?」
「あ…うん。色々話したいことがあって…私の事と…肩祓いの事と…折原さんの事と…実弥ちゃんの事と…整理付かなくてね、頭の中ごちゃごちゃなんだ…けど、聞いてくれるかな」
俺は冷静なふりをしながら、本当は動揺しまくっていた。俺が今まさに直面している問題ばかりじゃないか。
「……実弥ちゃん、いっぱいウソついてるよね?」
「ああ…」
「私は…ウソとか、隠し事とか…そういうの無しで、皆で仲良くしたい。だから、私の話聞いてくれる?絶対ウソもつかない、隠し事もしない。知ってる事なら何でも話す。この…遊鳥村の事」
麦茶を持つ手が震える。俺は麦茶の入ったコップを、床に置いて手を握り締めた。
「その前に1ついい?雄介君、肩祓い来てないよね?」
「悪いかよ…あんなモン行ってられねぇよ、俺」
「責めるつもりで言ったんじゃないの。確かめたかっただけ。私、肩祓いの実行委員だから知ってるだけだし…。それでね、せめてこれだけは持ってて欲しいな…なんて」
光理は巫女衣装の中から、小さなお守りを取り出し、俺に差し出した。
「肩祓いの…お守り」
「俺、神様とか信じてないけど…」
「まず、持っててよ。守ってくれるからっ」
いつもは大声を出さない光理が、今日は声を荒げていた。
「…このお守りは、対時乃神用じゃないの。対村人用―なの」
「村人?一体どうして」
「見た…んでしょ?肩祓いで、村の人の様子。皆おかしいんだよ。だから、肩祓いに行ってないなんて知れたら…だいたい分かるよね?どうなるか。このお守りは肩祓いに来た人にしか渡してないから、お守りが証拠になってくれるよ。だから、持ってた方がいいと思うの」
俺は光理があまりに真剣なのに驚き、受け取る気の無かったお守りを手に取ってしまった。
「じゃあ…本題に入るよ?ちょっと楽しくないお話になるけど…雄介君は受け止めてくれるって信じてる。だから、この機会に全部話したいと思う―…」
次こそ、光理が秘密を告白してくれるように頑張ります…。展開が遅いです、すみません。こんな小説を読んでくださる方々、本当に有り難うございます。