参.儀式…肩祓い
折原さんのノート。俺の知りたい事が、書かれているかも―…。
「雄介君っ」
後ろからいきなり肩を叩かれて、俺は振り返った。そこには…実弥。
「雄介君、肩祓い行った?」
「ま、まだだけど…」
「えへへ、そうだと思って、迎えに来てあげたんだよ。さ、行こっ」
実弥が俺の腕をぐいと引っ張る。ったく、おせっかいというか…世話好きというか。
「あ、そうだ雄介君」
「何だよ?」
「雄介君の『用事』って、折原さんに会う事だったの?」
「んーと…」
そうしておいた方が都合がいいよな。
「そうだけど」
「…何お話しした?」
「……何でそんなこと訊くんだよ」
ぴた、と実弥の動きが止まる。実弥は微笑を顔に貼り付けたまま言った。
「聞かれたくない話でも し て た ?」
こ…これは…
「時乃神の悪い噂を吹き込まれたでしょ?肩祓いが何か訊いてたでしょ?」
顔では…笑っているけど…
「知ってるよ?聞いてたよ?私ぜーんぶ聞いてたよ」
怒ってるんだ…俺が折原さんに会った事を。
「ね、雄介君?約束しよ?」
「な…何を?」
「雄介君は折原さんと話しちゃダメだよ…?雄介君までおかしくなっちゃうじゃない」
おかしく…?それを言うなら
「ゆびきりげんまん うそついたら はりせんぼん のーます…」
真顔でこんなこと言ってくるお前が
「…やっぱり はりせんぼん じゃあ許さない。 はりいちまんぼんのーます…」
実弥の方がおかしいんじゃないか!?
「ゆ び き っ た ぁ」
実弥がにたりと笑う。その時俺は―…約束を破ったら本当に針一万本を飲まされてしまう気がして…不安でたまらなくなった。
情けない事に、肩が震えているのが分かる。こんな普通の女子中学生に、実弥にこんな…恐怖心を抱く事になるなんて―思いもしなかった。
「…約束もしたことだし。肩祓い行こっか?」
「あ…そうだな、行くか」
実弥が無邪気に笑っている。さっきの歪んだ笑いなんて想像できない。
なぁ実弥…お前は本当は、どっちの実弥なんだよ…?優しく笑う実弥は、本当の実弥じゃないのかよ…?
――神社――
神社に着いた俺は、
「何だよ…コレ?」
と、声をもらしてしまった。
「…肩祓いだよ。皆、はやくお祓いしてもらいたくて必死なの」
必死…だって?
だからって…村人全員が集まるようなものなのか!?
すぐ横で、お祓いの順番争いの殴り合いが行われている。神社の中心部では、叫び声が響いている。
ただの村の行事が…お祓いが…警察沙汰になったっておかしくない勢いじゃないか!!
「雄介君もちゃんと肩祓いしてもらお?」
「お…俺、いいよ」
「へ?」
「俺、肩祓いなんてしなくていい!」
正直に…こう思っていたんだ。
だって…皆異常だ。実弥だけじゃない…。
「どうして?雄介君…ッ」
実弥が俺の服を引っ張る。俺は本能的に、その手を振り払った。
「ゆ…雄介く…」
「もうっ…俺に触るなぁ!!」
「ひっ…」
俺の気迫にひるむ実弥を残し、俺は神社から逃げ出した。
「ゆ う す け た た り け っ て い だ ね」
実弥がこうつぶやいたのも、知らなかった。
「おかしい…村全体、全部おかしい…」
この考えだけは、はっきりしていたけれど。
なんだかまとまりのない話になってしまいました。
読んでくださった方に感謝&ごめんなさい。