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復讐という名の物語  作者: 笑わない猫
孤児の少年少女
6/24

第一章 ―5 呪いの覚醒秘話

更新遅れてすいませんでした。






――――――――――――――――呪いの覚醒秘話――――――――――――――――



 キリアは必死に大通りを駆け抜ける。

 人にぶつかりかければ紙一重でかわし、人の迷惑関係無しで走り抜ける。

 クレアが呼んでいる。

 あいつが俺を呼んでいる。

 意識に届いたクレアの声から‘危険’を感じ取ったキリアはクレアが呼んでいることを意識した。

(俺が行かなければクレアは……)

 情報屋から聞いたクレアの居場所に向かい、キリアは走った。






 クレアはゆっくり目を開けた。

 激しい痛みのせいで意識が飛んでいたのだ。

 体を動かそうとするが、変わらず魔法の呪縛を受けているため身動き一つ取れない。

 周りを見渡す。

 魔法陣使いの少年の姿は無い。

 クレアははぁ……と安堵の息を吐く。

 でもこれからどうするか。

 一番の問題を考える。

 クレアは覚醒者でもなければ頭の切れる秀才でもない。

 呪縛からの開放策など見当もつかない。

(キリアお兄ちゃんが駆け付けてくれたらなぁ)

 一番の開放策。

 とても人任せだなと今度は情けない息を吐く。

 すると、何も無い部屋の扉が開いた。

 右目に魔法陣を浮かべた少年が入ってきた。

「起きたか……」

 少年はクレアの前に立った。

 少年の目をクレアはまた睨みつけた。

「まだそんな目で俺を見るか……俺を非難するその目で」

 少年は大きく息を吸い込んだ後、大きく叫んだ。

「周りの人間は全てそんな目で俺を見る!! 俺以外の人間はクソだ!」

 今にも泣き出しそうな、そんな震えた声だった。

 クレアはゆっくりと喋り始めた。

 その声はとても深く重い物だった。

「私も前までそう思ってた」

「?」

 少年は眉をひそめた。

「私以外の人間は必要ないものだって。だから他の人間からお金を盗っていた。他の人間が苦しもうと私には関係なかったから」

 少年は黙って耳を傾けていた。

「でも、キリアお兄ちゃんは違った。独りだった私を拾ってくれた。この時確信したの……人間にも私を見てくれる人がいるって」

「だからどうしたって言うんだ」

 クレアが言い終わった瞬間に少年は吐き捨てた。

「だから、もう少し耐えてみようよ」

「お前は俺のことを知らないからそんな口が叩ける…………。……いいだろう。教えてやる」

 少年は語り始めた。

 五年前の覚醒の物語を。




 俺は小さな村の住民だった。

 家族は妹だけ、両親は他界。もうこの世にはいない。

 お金の支給だけ村長にしてもらい、日常生活は妹と二人っきり。

 辛いことやしんどい事があったけどなにより楽しかった。

 お前も知っているだろう。この頃、覚醒集団アブノーマルが村荒らしをしていた事を。

 ある日、俺の住む村に覚醒集団アブノーマルがやってきた。

 もちろん、目的は村荒らし。

 村荒らしといっても村の皆は皆殺し。

 入り口からは逃げれないので村の奥に逃げて、身を隠すことにした。

 だがその努力は空しく、覚醒集団アブノーマルに見つかってしまった。

 相手は5人。それに覚醒者だ。太刀打ちなど出来やしない。

 覚醒集団アブノーマルの一人が妹に手を伸ばした。

 守らないと、そう思った瞬間だった。

 頭の何かが外れた。

 その時が俺の覚醒の瞬間だった。

 力がみなぎった。

 だが、覚醒者なりたての子供ガキ覚醒集団アブノーマルの一人に勝てるわけなど無い。

 散々にやられた。

 とどめの一撃を相手が振り上げた時。

 次は妹が覚醒したんだ。

 それだけじゃない妹の覚醒は俺より数十倍、いや、もっと上の覚醒だった。

 右手に黒い大鎌が現れたかと思うと、目の前は血の海だった。

 目の前には死体が五つ。覚醒集団アブノーマルの死体だった。

 その死体の上に立つように妹は身の丈ほどの大鎌を構えて立っていた。

 俺の体も妹の体も返り血で真っ赤。

 その時はじめて、妹に恐怖した。

 それからだ。

 妹は俺から離れていき、俺は一人になった。

 スリをし万引きをし、どうしようもなかった時は覚醒能力を使った。

 それから覚醒者であると警備兵ディリングにバレ、追われる身になった。

 そして現在に続く。


「わかるか、覚醒を背負った人間の辛さを」

 語り終わった少年はゆっくり目を閉じた。

「だからこそ、耐えてみようよ。あと少しで私みたいに」

「黙れ!!! それ以上、俺を語るな・・・・・!」

 少年は左手を強く、さっきよりもより一層強く握り締めた。

「うあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ」

 クレアが悲鳴を上げる。

 普通の部屋だというのに嫌というほど悲鳴が響く。

 だが悲鳴の中で深く恐ろしく落ち着いた冷静な声が重なった。

「人の身内に手を出すとは、見上げた根性だな」



 クレアが待ち望んだ男の姿が少年の首元に刀の切先きっさきを当てる状態で立っていた。




 二人は復讐の物語を創造していく。

 繋げられた因果を伝い、どこまでも続く闇に向かい……。

 

 復讐という名の物語を創っていく。



                       To Be Continued





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