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復讐という名の物語  作者: 笑わない猫
覚醒集団 大都市襲撃
18/24

第三章 ―4 復讐者?


 遅れて本当にすいませんでした。





 大きな花が咲く大都市の中心部。

 常人には認識できない大魔法。認知できるのは覚醒者とそれなりに特訓された警備兵ディリングのみ。

 だが、剣を交え血を流す姿が常人に認識できるかと聞かれたら認識できるに決まっている。

 それゆえ今、大都市は大混乱の真っ只中にいた。

 中心部から逃げるように人たちが波を作り道という道を走っていく。

 その中で流れに逆らいながらリーフとクレアは走っていた。

 離れないようにしっかり手を繋ぎ、人たちにぶつかり流されそうになりながらキリアの後を追っていた。

 クレアは息が絶え絶えとなり足がおぼつかなくなっていた。

 走っているというのもあるが、一番の問題は花弁オンによる魔法吸収にあった。

 覚醒者であるクレアは花弁オンの吸収を受ける。

 そして覚醒してあまり時間が経っていない事から魔力も普通の覚醒者よりも極端に少ない。

 それがここまでの疲労を与えていた。

「大丈夫かよ」

「……うん……大丈夫」

 その時、すれ違う男に肩をぶつけるクレア。それを耐えれず倒れこむ。

 それを感じたリーフはクレアに近寄り、体を抱き上げた。

「う……重てぇ……」

「……そういうこと言わないでよ」

「悪い」

 また人の濁流に飲まれないように走り始める。

 大きな花は目の前に迫っていた。





「次から次へと……」

 ぼさっとぼやくレデント。

 その目の先には倒れこむフィレスとそれを助けた「復讐者」と名乗った男。

 男が持つ刀は長年の戦いを記したように傷が多数ついている。

 フィレスは男に向かっていった。

「ありがとう。でも……一体誰なの? 私はあなたのことを知らない……。警備兵ディリングではないのね」

「あぁ。俺は復讐者だからな」

 さっきまでの真剣な顔つきはどこかに行き、にっこりとした顔で答えた。

 明らか過ぎるギャップにフィレスは唖然としながら答える。

「一体どういうこと? なんで……」

「ちょっと覚醒集団アブノーマルにむかつく奴がいてね♪ そいつを殺したいって思ってるわけ。で、今回ちょうどよく覚醒集団アブノーマルが現れたから聞きにきたら、あら? 誰かやられてるじゃんって訳で助けた。わかった?」

「……うん。なんとなく」

 軽いノリで話す男にフィレスは頬を引きつらせる。

 あまりにも違いすぎる。

 戦いに長ける人物というのは人を多く殺す事から『感情を失くす』タイプと「感情が狂う」タイプに分かれる。

 それは精神的に負けてしまう事からある。

 それに負けないように精神を鍛えるとそのうち『感情を忘れる』ようになり『感情を失くす』タイプになる。

 まだフィレスはそこまで人を殺したことは無い。

 だから自分をしっかり保ち、感情に異常がない。

 だが、この男からは幾つ物戦いを乗り切ったオーラが感じられていた。

 明らかなほどの戦闘経験の差。レデントと並ぶほどの威圧のプレッシャー。

 今までの戦いが物語っている。

「さて……じゃあ聞きますかね」

 男はレデントの方を向く。

 その顔はもうあのにっこりとした顔ではなかった。

 レデントはその顔を見ると大太刀を大きく構える。

 明らかに男のオーラはさっきまでと違っていた。

 傍にいるだけでフィレスは感じていた。

 恐ろしい殺気と圧力。

 幾人もの人を殺してきた実力の差。

 それが今、大きな波動のようにフィレスに襲い掛かった。

(この男……一体……)

 額から流れる汗を拭い、フィレスは二丁拳銃を構える。

 その行動に男は話す。

「邪魔をするな……。ひっこんでろ」

 その言葉でフィレスの体は硬直。

 腕から力が抜け、二丁拳銃を持った手が下がった。

(なんだろう、……この……感覚)

 恐怖……とはかけ離れている。

 だが体は硬直して体が小刻みに震える。

 ふぅ……とため息を吐き、フィレスは大きく後退した。

「全く、物騒だなぁ」

「なんだ?」

 男のいきなりの発言にレデントは怪訝な顔をする。

 刀を地面に突き刺し、手を挙げる。

 あまりに唐突過ぎる。

 レデントは強く警戒を怠らない。

「こんな魔法は物騒だって言ってるんだ。このままだと全然力のない覚醒者が死んでしまう。この都市に数人くらいの気配を感じた。今、一人こちらに向かってきているみたいだけど」

 その言葉にフィレスはハっとする。

 キリアのそばにいた二人の少年少女。その一方の少年はそこまで弱い魔力の気配はしなかった。だが、もう一方の少女は……。

「知ったことじゃないさ。元々、この花弁オンの使用は俺が提案したことじゃない」

「ん? ということは他に同行者がいるって事か? おかしいな? 全然気配を感じないんだけど」

 男の言葉にフッ……と鼻でレデントは笑い返す。

「そりゃあ、お前らごときじゃスレイディッシュの気配には築かないだろうよ。まぁ、実際あいつの姿を見ないと俺だって感じにくいし」

「なるほどね……」

 男はその言葉を聞いて少し溜息をつく。

 頭を下に垂らしながら、地面に突き刺した刀を抜きとる。

「じゃあ、ルナはいないんだな」

「……」

 男の問いかけにレデントは答えない。

 だが、男はそれを肯定と判断し……。

 

 刀を構えた。





「いらっしゃい……今度は楽しませてくれるのかな?」

「答えろ……」


 大鎌を構える少女は笑みを浮かべながら、駆け付けた青年を見据える。


「クレイモアはどこにいる!?」

「私を楽しませてくれたら教えてあげるよ。お兄さん?」




 


 三人は復讐の物語を創造していく。

 生きる意味と存在の答えを求めながら、

 繋げられた因果を伝い、どこまでも続く闇に向かい……。

 

 復讐という名の物語を創っていく。



                       To Be Continued





 

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