第三章 ―3 境界眼
知ってる人は知っている「直死の魔眼」と同じ能力みたいのが出てきています。
スレイディッシュは微笑みながら空を仰ぐ。
程度に雲があり、しっかり青い顔が出ている。
それを無駄に色づけるように薄紫の霧のようなものが飛んで、自分の近くに咲く大きな白い一輪の花に集まっている。
時間が経つにつれ花は輝いていく。
「やっぱり大都市でやって正解じゃない……。いっぱい魔力が集まってくる。次々に集まってくる……クスクスクスクス」
小さく笑う。
手に持つ漆黒色の大鎌は怪しく煌いている。
そこに光る真っ赤な鮮血。
近くに倒れる三人の死体のものだ。
その三人の服装の肩には警備兵の証といえる紋章がついている。
スレイディッシュは魔法陣の発動で感づき、止めに入ってきた警備兵を殺したのだ。
その死体が倒れる三人。
あまりにも呆気なかった事に不満があったスレイディッシュだったがこの後も違う警備兵が来る事もわかっていたため次やってくるやつ等に期待していた。
「随分きれいに咲くわね。そんなにここの魔力はおいしい?」
答えが返ってこない事を知っているがあえて問うてみる。
白い花はただ魔力を吸い取るのみだった。
「フフフ」
小さく微笑む。
それと同時に現れる複数の警備兵。
スレイディッシュは静かに唇を舐めた。
「めんどくさいな……」
スレイディッシュがいる花弁の逆側でレデントは愚痴を吐く。
でかい花弁なので今のスレイディッシュの行動は把握できない。
する事が出来るのは時々聞こえる刃物がかち合う音。
それはスレイディッシュが戦っている事を意味するからだ。
そして今まさに刃物がかち合う音が聞こえてきている。
「レイの奴遊んでやがるな……。全く……ほんとに人を殺すのが好きな奴だ……」
また愚痴を吐く。
それと共に警備兵が二人現れる。
「見つけたぞ!」
一人の警備兵が叫ぶ。
それと同時に二人はレデントに飛び込んでくる。
「面白くないな」
レデントは呟き、飛び込んでくる二人の警備兵の間を瞬間で駆け抜ける。
すれ違う形になったことにより戸惑う警備兵。
だが、戸惑うのもつかの間。
すぐに二人の警備兵の胸元から腰にかけて血が溢れる。
そのまま二人の警備兵は倒れこむ。
その様子をレデントは見つめ、言い放った。
「俺の‘眼’の前ではお前達なぞ紙に等しい」
自分が手にしていた大太刀を背中の鞘に戻す。
そしてまたその場にしゃがみこむ。
「なんか無いのか?」
楽しみを探す。
しかし、特に見つからず大きなため息を吐く。
「……暇だ…………ん??」
ふと、顔を上げる。
ちょうど前の方からこちらに全速力で近づくひとつの影がある。
太陽に照らされ、金色の髪がきれいに輝いている。
「新手か……。この感じ……さっきの奴等とは違うな」
特別な気配を感じたレデントは立ち上がり、早めに大太刀を抜く。
レデントに近づく影は次第に大きくなり、すぐ前に対峙する瞬間、金髪の警備兵は腰につけていた銀色の二丁拳銃を引き抜きレデントに向ける。
瞬間、放たれる形無き魔力の弾丸。
レデントは反射で横に避ける。
弾丸は途中で分散しそのまま掻き消える。
そこでやっと二人はまともに向き合える事が出来た。
「なかなかできるな。名はなんていう? 警備兵」
「フィレス・クラウソン」
「俺はレデント・エクローションだ」
しばらくの沈黙……。
どちらも静止して数秒。
先制を仕掛けたのはフィレスだった。
右手の拳銃から魔弾を撃ちだす。それを避けるためにレデントは左に跳ぶ、がその跳ぶ先にはもうひとつの弾丸。
左手の拳銃から放たれた弾丸である。
瞬時に大太刀を構え、弾を両断する。
左右に分かれた弾は分散し、消える。それを確認したレデントがまばたき一つ付いたとき――。
すでに目の前からフィレスは消えていた。
(――速い!!)
すぐに視界を真上の上空に向ける。
そこには拳銃を二丁レデントに向けているフィレスの姿があった。
放たれる二発の弾丸。空中で身動きが取れないレデントは無理やり向きを変えるため大太刀を地面に突き刺し、それを支点に反転。方向を強制的に変える。
二発の弾は地面にぶつかり穴を開け分散する。
方向変え、地面に着地したレデントは大太刀を引き抜き、構える。
その様子を見たフィレスは左手の拳銃を腰に戻し、右手の拳銃の取っ手を引っ張る。
すると銃は変形を始め、取っ手が拳銃本体と水平に設置される形になる。
すると銃口からビーム状の剣が展開される。
そのまま急速落下。レデントに切り掛かる。
それをレデントは大太刀で受け止める。
「動きのキレが良いな。ただの警備兵じゃないな」
せばづり合いの中、レデントが口を開く。
「警備兵捜索部隊第一分隊隊長だ」
「なるほど、隊長か」
レデントは口をニヤつかせる。
「ならば、本気で行ったほうが良い様だな」
言い終わると同時にレデントの右目が真っ赤に変わる。
「それは……!!!」
フィレスが唖然とし、下唇をかみ締める。
それと同時に剣の圧しも強くなる。
「なんだ? 『境界眼』を見て焦ったか?」
「それは……それは……」
ふるふると震えだすフィレスの両手。
「なんだ? 恐怖で震えているのか?」
一瞬間を置き、大声でフィレスは言い放った。
「それは! 私の眼だぁぁぁぁ!!」
腰から左手の銃を引き抜き、レデントの顔面に向ける。
引き金を引く瞬間、レデントの姿が消える。
圧し合っていた相手が急に消える事になり、フィレスは体のバランスを崩しよろめく。
その背後にレデントが現れる。
「お前の眼?? なるほど……前期のリーダーが言っていた『境界眼の器』って言うのは……お前の事だったんだな」
振り上げられる大太刀。
レデントが狙うのはフィレスの体に見える数本の細い線。
死と生の境界線である。
だが振り下ろした大太刀が捕らえたのは、細い刀だった。
「!!?」
すぐに大太刀を引き、レデントはその刀の持ち主とフィレスから距離を取る。
「また新手の警備兵か?」
そのレデントの問いに刀の持ち主は独り言のように答えた。
「復讐者だ」
三人は復讐の物語を創造していく。
生きる意味と存在の答えを求めながら、
繋げられた因果を伝い、どこまでも続く闇に向かい……。
復讐という名の物語を創っていく。
To Be Continued