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復讐という名の物語  作者: 笑わない猫
覚醒集団 大都市襲撃
14/24

プロローグ&第三章

 更新遅れて申し訳ありませんでした。


 楽しみに待っていた人。

 すいません。






「魔力の流れが……乱れている」

「確かにな……なんの魔法だ?」

「読めない……禁詩きんしの可能性が高い」

「ということは……覚醒集団アブノーマルか……」

「次は何をたくらんでいる?」

 男たちはベルフェリングを見下ろせる高台の上で話していた。

 一人は旅人装束に白の布をマフラーみたいに首に巻いている。

 もうひとりは茶色のフードをかぶり、下は黒の革ズボンという貧相な服装をしていた。

 この二人は魔力の流れ、つまり大気を観測する警備兵ディリング情報隊インフォテストの隊員である。

 警備兵ディリング捜査隊インケステントと同じ立場にあり、同じ機関に所属する警備兵ディリング随一の能力者が揃う場所。

 そのうちの二人が彼らである。

 白い布の男は腰に付けてある警備兵ディリング常備の剣を地面に突き刺し、その場に魔法陣を展開させる。

 その魔法陣の中にもう一人のフードを被った男が入り、重なるように魔法陣を展開させる。

 違う色、違う波紋の魔法陣が急速に回り始め、中にいるフードを被った男に取り巻くようになぞの文字列が浮かび上がる。

 弔詞魔法ちょうしまほう

 浮かんだ文字列を暗唱することにより、通常よりも強力な魔法、もしくは魔法陣が展開できる。

 フードを被った男は浮かんだ文字列を読み進める。

 白い布を巻いた男は魔法陣の展開に集中している。


 背後から忍び寄る影に気づいていない。


 高台から見えるベルフェリングは全体図をきれいに見せてくれる。

 そして、魔力の乱れがどこから発生させられているのかは一目瞭然だった。


 そう――。

 ベルフェリングの各部分でそれは引き起こされていた。

 その問題を解決するためにも、状態、魔法か否か、構造。

 全てを把握し、確かな判断を下さなければならない。

 その為の魔法陣展開、そして弔詞魔法の使用理由だった。

「!!?」

 フードの男がピクリと反応する。

「どうした??」

 白い布を巻いた男が問いかける。

 フードを被った男は眉をしかめ、弔詞を読む。

 が、途中でやめ、白い布の男に振り向く。

「だめだ……。察知できない。多分、因果孤立だ! 厄介な……もっと近づかなければ分からない」

「そうか」

 魔法陣を収縮させ、かき消す。

 白い布の男が剣を手に取り、鞘に戻し、振り向いた瞬間。

 目の前に一匹の黒い蝶が舞った。

 つい、その黒い蝶に二人は見とれてしまう。


 そして……。


「さようなら……。あなたは私の手の中よ」


 女の声が響き、地面に黒色で構成された魔法の蜘蛛の巣が広がる。

 それは男達の足に絡みつき、動きを制限。そして……。


「儚く消えるのよ……私に食べられて」


 女の声と共に二人の男は叫び声を上げる。

 数秒もせぬまま、二人はいなくなり、ただ着てきた服のみが残った。


「……まずまずね。1つ星ってとこ」

 黒い羽が舞い散り、その場に黒い着物を着た女性が現れる。

 黒い着物には赤色で蝶が描かれてあり、顔は化粧で作っている。

 大人の上品さをかもし出していた。

 空を舞った蝶は女性の下に降り立ち、フッと音無く消えた。

 女性は手に持っている一枚の透明な破片を投げ捨てた。

 それはもう誰も着ていない服の上に落ちる。

「……返しといてあげる……供養ぐらいはされたいでしょ?」

 投げ捨てた薄い一枚の破片は、紛れも無く、白い布を巻いた男の爪だった。





 俺は負けたのか……。

 あいつを殺せなかったのか……。

 失敗したのか……。

 俺は……弱い……。


「キリアお兄ちゃん!」

「……! クレア……?」

 気を失っていたキリアは身を起こす。

 横腹に激痛がはしるが、耐え抜き立ち上がる。

 クレアは心配そうにキリアの姿をまじまじ見つめた。

 見ため的には外傷は見れない。

 だが、キリアの耐える顔がクレアは心配でたまらなかった。

 いつも無表情。無愛想。

 そのキリアの表情が変わっている。

 それだけで、クレアは怖かったのだ。

「……クレイモアは……」

「帰って行ったよ」

「……そうか……」

 キリアは嘆息し、周りを見渡す。

 ずり向けてへっこんでいる岩の壁。

 地面に残る戦闘の後。

 そして、遠くで顎に手を添えて悩んでいるリーフ。

「あいつは何してるんだ?」

「わからない……なにか考えてるみたいだけど……教えてくれなくて」

 涙目でクレアは告げた。

 なぜ涙目? とキリアは首をかしげたが、すぐに元に戻しその場で立ち上がった。

 こうしてはいられない。

 まだクレイモアはそばにいる。

 そういう気持ちはキリアを焦らすばかり。

 だが、そのキリアの足をクレアはつかんだ。

「なんだ?」

「行く気……なんでしょ?」

 キリアは押し黙り、掴まれてない足を前に踏み出す。

「ダメ!!!」

「……」

 黙ったままつかまれた手を強引に解く。

 クレアは再度つかもうと試みるが、キリアの背中から発せられる無言の圧力に手を引く。

 キリアは足を止めることなく、床に刺さった刀を引き抜き、出口に向かう。

 が、その行き先をリーフは遮った。

「……なんのつもりだ?」

「行かせねぇって言ってんだ」

「邪魔をするのか?」

 キリアが抜き身の刀の頭を上げ始める。

 リーフはそれを見て、すかさずナイフを構える。

「俺を……殺る気かよ? キリア」

「邪魔をするなら、切らしてもらう」

 刀の切っ先がリーフに向けられる。

 硬直する空気。

 風が吹いたわけではない。

 が、風が通り過ぎたと圧覚するほど、微動だにしない二人。

 瞬間。

 大きな金切り音が空気を揺るがした。

 キーンと鼓膜を直線で刺激する。

 洞窟内にいる三人は耳に響く金切り音に顔を歪める。

 


 ――解せぬ……。



 金切り音にまぎれて声が響く。



 ――仲間割れか……。我の神聖な場所で騒ぎよって……



 声と金切り音が絶え間なく響き、その中、結晶石の前に一人の女性が現れる。

 その姿は平安時代に出てくるような十二単を身にまとい、上品な貴族としか言いようのないオーラを放っている。

 

「誰……だ??」

 金切り音に絶えながら、ぎりぎり出したキリアの問いに女性は言葉ではなく、念力のような言葉を送る。


 ――我は世界を造り、人間を想像した創造神の片割れ……‘吸血姫’


 




 吸血姫と名乗る女性の声に耳を貸す三人。

 それが、新たな物語を書き記すための一ページ目だとは、知る由も無く……。


 




 三人は復讐の物語を創造していく。

 生きる意味と存在の答えを求めながら、

 繋げられた因果を伝い、どこまでも続く闇に向かい……。

 

 復讐という名の物語を創っていく。



                       To Be Continued





 

 

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