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復讐という名の物語  作者: 笑わない猫
復讐再戦
12/24

第二章 ―4 対峙





 静かな足音のみが聞こえる。

 時々、天井から滴が落ち、薄暗い鍾乳洞に静かに響く。

 結界トラップにはまらないように気をつけながら、ゆっくりとキリアたちは歩いて行く。

 壁に立てられている松明が揺れる度、影が不気味に蠢く。

「足場がほぼ無いな」

「そりゃあ、ひっかかるように仕組んでるんだから」

「でも、なんで完璧にしきつめてないのかな?」

 クレアの質問に簡潔にリーフが答える。

「ここの管理者。警備兵ディリングが出入りできるように、でしょ?」

「あ! そっか」

 クレアはにっこり笑い、相槌を打つ。

 

 長い間歩いたおかげでかなり奥に入ってきた。

 風が薄くなり、声がより響くようになってきた。

 結界トラップもさっきより簡単に避けれるようになってきている。

 と、矢先に光り輝く何かをキリアたちは見つける。

 目がくらやむほどの明るさではないが、きれいなのは確かであり、少しの間見とれてしまう。

「きれい……」

 クレアは小さく呟く。

「結晶石だ……」

「あれが……?」

 光を見つめながら、キリアは歩を進める。

 それにリーフとクレアが続く。

 光に近づき、キリアはそっと、その光に触れた。

 瞬間。

 光は消え去り、薄橙の結晶が顔を出した。

 それは地面から根強く繁茂していた。

 キリアは、手にかすかな力を加える。

 すると、簡単に結晶は折れ、手のひらに収まる大きさの結晶石をキリアは手にする。

「これで……。 !!」

 キリアは途中で言葉を止め、後ろを振り返る。

 だが、後ろにはいきなりキリアが振り向いた事にびっくりしているリーフとクレアしかいない。

 が、その見つめる先には、なにかの気配がある。

 そうキリアは感じていた。

「どしたの? キリアお兄ちゃん?」

「静かにしろ!」

 どうやら、クレアとリーフは気配に気づいていないらしい。

 キリアは辺りを見わたし、隠れられそうな岩影を見つける。

「あそこに隠れろ!」

 キリアは指差しながら岩陰に走る。

 リーフとクレアも分からないまま、キリアと一緒に隠れる。

 仮にその気配が警備兵ディリングだとしたらそれはそれでかなり厄介なことになる。

 不法侵入。覚醒犯罪者(覚醒能力を使って悪さをした者の事)のリーフ。

 ほんとに厄介なことになる。

 キリアたちは息を殺し、近づく気配がくるであろう大広間の入り口を見る。


 そこに入ってきたのは……。


 黒色のマントを羽織った一人の男だった。


 瞬間。

 キリアの体が一瞬動く。

 不振に思ったリーフがキリアの顔を覗き込むと……。


 そこには、殺気に満ちた目をした険しい表情が浮かんでいた。





 おかしい。

 そう頭が警告する。

 さきほどから歩いてきた道はすべて‘無’。

 魔法の類は感じ取れなかった。

 幼い警備兵ディリングは前を行く二つの灯火。

 覚醒集団アブノーマルの二人を追っていた。

 すでに覚醒集団アブノーマルがあの旅人もどきだということに気がついている。

 すれ違ったときから。

 だが、自分一人では……否、警備兵ディリングでは覚醒集団アブノーマルを倒せないのは分かりきっていた。

 だから、後をつけ、何を企みこの大都市に足を踏み入れたのかを調べ、それを消し去る。

 そのための尾行だった。

 だが、やつらがおかしな行動を取った場所をいくら探ってもなにも出てこない。

 おかしすぎた。

 自分は、あいつらの手のひらで転がっているのではないか?

 このまま引き下がってしまったほうがいいか??

 頭によぎる警告。

 それを、過去の惨状が破り去る。

(そうだ……私は……やっと掴めたんだ……あいつの手がかりを!!)

 幼い警備兵ディリングは長い金髪に隠れた右目を抑える。

 いまや、自分の目ではない目を抑える。

 空いているもうひとつの手をひざに装着している魔弾銃まだんじゅうにかける。

 周りの人など関係ない。

 今は、奴の手がかりが最優先。

 人を守るべき警備兵ディリングあるまじき思考。

 だが、今の自分には関係ない。

 銃口をこの先にいるはずの覚醒集団アブノーマルに向ける。

 引き金に手をかけた瞬間。

 一瞬。魔法の発動を感じる。

 だが、それも一瞬にして消える。

 戸惑った矢先。

 幼い警備兵ディリングの足元に魔法陣が浮かび、それを支点にするように幾つもの魔法陣が幼い警備兵ディリングを取り囲む。

空間転移魔法ニフレ!? そんな……!」

 言葉も言い切れぬまま、幼い警備兵ディリングは姿を消した。






「クレイモア!!!」

 大声を張り上げ、キリアは岩陰を飛び出し、一直線にクレイモアと呼ばれた黒色のマントを羽織る男に駆ける。

 刀を鞘から引き抜き、刃を返し、クレイモアに振り下ろす。

 キンッ!!!

 甲高い金属音が弾ける。

 キリアの刀はクレイモアの顔面から50cmほどで止まっている。

 火花を散らしながら。

「くそ……」

「こんな所で会うとはな……キリア……」

 クレイモアが右手を横に振るとキリアの刀も動きに流され、弾かれる。

 すぐに体制を立て戻し、クレイモアと距離を取る。

「クレイモア……!」

「そう怖い顔をするな。 なにを怒っている?」

「っだと!!」

 もう一度、クレイモアに刀を振る。

 だが、またしても金属音を奏で、止められる。

「双竜‘不知火’か……」

「覚えていたか……光栄だ」

 そう。

 キリアの刀を止めているのは、魔法でも結界でもない。

 刀である。

 だが、クレイモアの持つ相竜‘不知火’は刀が見えない。

 刀身……否、柄さえも見えず、ただそこに存在する。

 最凶の刀の片割れである。

「てめぇ……」

「ふ……。 怒った顔をみるのは3年ぶりだな」

「黙れ!!!」

 キリアは刀を大きく振り切る。

 そのまま回転。

 もう一撃をクレイモアに浴びせようとする。

 が、また止められる。

「まだ引きずっているのか……? キリアよ」

「うるさい!!」

 また振り切る。

 今度は距離を取り、体制を整える。

 キリアには冷静さの欠片もない。

「そんな戦い方を教えた覚えはないぞ」

「だまれぇぇぇ!!!」

 キリアはまた飛び出す。




 復讐の対象である男に向かって。




 三人は復讐の物語を創造していく。

 生きる意味と存在の答えを求めながら、

 繋げられた因果を伝い、どこまでも続く闇に向かい……。

 

 復讐という名の物語を創っていく。



                       To Be Continued






 

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