第8話 お祝いのお茶会 1
春とはいえ晴れた日は暑いくらいだ。
今日は我が家で、ボクの王立学園への入学を祝ったお茶会が開かれる。
おめかしをしたボクが主役だよ。
今日のボクは金色の縁取りのある白っぽい貴族服を着ている。
フリルいっぱいの白いクラバットも好きだけど、オズワルドの色も入れたかったなぁ。
もちろん首元には、オズワルドのくれたネックガードであるチョーカーが光っている。
オメガの首元はデリケートだから守らないといけないんだって。
守護魔法で守られているのに、何が足りないのかなぁ?
ボク子どもだから分からないや。
淡い茶色のくるくる巻き毛は、メイドたちにたっぷりブラッシングされてツヤツヤフワフワ。
とっても撫でたくなる輝きを放っているよ。
オズワルドは撫でてくれるかな? へへ。楽しみ。
シロもメイドたちがたっふりとブラッシングしてくれたからツヤツヤだ。
赤い宝石のついたリボンの首輪がとても映える。
ちなみにリボンはくすんでいて淡いピンク。
可愛いねぇ。
ボクはシロと一緒にお客さまたちを出迎えた。
お父さまとお兄さまも一緒だよ。
「いらっしゃいませ。本日はお越しいただきありがとうございます」
「お招きいただきありがとうございます。いやぁ~、子どもの成長というものは早いね。アイリスさまが、もう王立学園とは……」
お客さまへの対応は、お父さまの役目だ。
隣では、お兄さまがニコニコして挨拶している。
ボクは少し後ろのほうで、ニコニコしながら頭を下げているだけだよ。
お母さまは、堅苦しい挨拶は苦手だからと奥に引っ込んで会場の準備を指示する役目。
我が家で開催するイベントの時は、いつもこんな感じだ。
ボクの王立学園入学を祝うお茶会ではあるけれど、両親の人脈が広いから色々な人たちが来ている。
ロックハート伯爵家は、爵位のわりに屋敷が立派なんだよ。
これはお母さまが商売上手なおかげなの。
だからお母さまのことも、みんな知っているんだ。
ちょっと太った中年の貴族男性が、お父さまと話をしている。
「今日は、ミッチェルさまはいらっしゃらないのですか?」
「ああ。ミッチならなかにいます。張り切って用意していましたから、なかへどうぞ」
「それは楽しみですね。ミッチェルさまの商会で扱う新製品があるかもしれない」
中年の貴族男性は、ホクホクした笑みを浮かべて庭のほうへと歩いていった。
商売人として凄腕なうえに美形の筋肉マッチョオメガだから人気があるんだよ。
だからちょっとお父さまは面白くないみたい。
愛想よく対応しているお父さまの頬が時々ビクッと引きつったりして、ボクは面白いけどね。
玄関前のアプローチに、立派な黒塗りの馬車が停まった。
この馬車は見たことがないなぁ。誰だろう?
馬車からは、細くてちっこくて偉そうな金髪の少年が、白地を覆いつくすように金色の飾りをつけた貴族服を着て下りてきた。
そしてお父さまに丁寧な挨拶をする。
「ロックハート伯爵お招きありがとうございます」
そいつはボクに向き直ると、鼻から息をふんすと吐いてから口を開いた。
「我が来てやったぞ、アイリス」
「いらっしゃいませ、セインさま」
魔法契約を結ばされたから親友だけどさ。
コイツ、偉そうだから気に入らない。
いつかギャフンと言わせてやるんだから。
ボクは心の中で赤い舌を出して頭を下げた。
「小生も来ましたよ」
セインの後ろに控えていたカーティスが頭を下げた。
青みの強い暗い色の髪がサラリと揺れる。
何気に顔面偏差値高いな、この2人。
セインはオメガだけど、カーティスはベータみたいだ。
お茶会のために来てくれた2人に、周囲はちょっとざわめく。
そういえばコイツ王子さまだったな、とセインを眺めて思う。
来客たちがザワザワと噂する。
「隣国の王子であるセインさまを、お茶会にお招きするとは……」
「王立学園に上がったばかりだというのに……」
「流石はミッチェルさまのご子息。やり手ですな」
おおむね好評なようでよかったです。
王子さまといってもセインは隣国の第三王子だけどね。
しかもボクとは喧嘩の罰として魔法契約で友人になっただけの仲だけど。
お母さまの子どもらしいと褒められると悪い気はしないね、えへへ。
馬車の停まる音がして、ボクはそちらを振り返った。
見覚えのある馬車が視界いっぱいに広がる。
オズワルドが来た!!!




