第25話 我が家は商会出張所 1
週末。
とてもよく晴れていて、気持ちの良い日。
我が家の応接間は、ちょっとしたお店屋さんになった。
商会から運び入れられた商品は、華やかな店頭のディスプレイのように並べられている。
といっても、女性もののアクセサリーのように商品そのものが煌びやかというわけではないよ。
でも商品を売る気満々という、やる気のオーラが溢れ出ているような並べ方だ。
洋服やアクセサリーはもちろんのこと、魔石や剣も並べ方次第で華やかになるんだね。
勉強になるよ。
ボクもお母さまみたいに商売上手なオメガを目指しているからさ。
しっかり見習わないとね。
そこにやってきたのはセインとカーティス、マキシムだ。
応接間の様子を眺めてセインがつぶやく。
「これは凄いな」
「でしょー。しっかり買ってね」
セインは一応、王子さまだからね。カモだよ。
カーティスとマキシムも目を丸くして室内をキョロキョロと見まわしている。
しっかり買ってね!
あとからオズワルドも来る予定。
オズワルドはボクが隙あらば呼ぶスタイルをとっているからね。
忙しいオズワルドも、週末はだいたい休みだ。
本来の目的とは関係ないけどわくわくしちゃう。
「こちらにお茶の用意がしてありますからどうぞ」
ボクはホストらしく、セインたちをおもてなしする。
応接間のスペースはほとんどお店のようになってしまったから、お茶は部屋の隅に置いたテーブルの上に用意してある。
壁際だけど、椅子に座ってゆっくり商品が見られるようにしてみたよ。
椅子に腰を下ろしてお茶を一口飲んだカーティスが、驚いて目を丸くしている。
うんうん、わかるよ。
そのお茶は、お母さまの商会で扱っている最上級の茶葉を使っていれたものだからね。
普段飲んでるお茶とは一味違うでしょ。
でも王子さまであるセインにとっては珍しくもないみたい。
応接間の椅子に座ったセインは、紅茶をすすりながらぼやく。
「今日もオズワルドが来るんだろう? なんだか我たちはダシにされている気がするな?」
「いやセイン。君はカモだよ」
セインがぶすっとした顔をして言うので、ボクは真実をつきつけておいた。
セインは隣国の王子さまでオメガだ。
オメガは、着飾るのが普通だから、お母さまは張り切って商品の準備をしていたよ。
「今日は君の国の駐在員さんも来てくれたし。たっぷりお金を落としていってよ」
「んー。我は……こういう装飾品とかはよくわからん。カーティスたちに任せる」
セインは着飾ることには興味がないみたいだ。
お母さまはセインの方をチラチラ見ながら、隣国の駐在員に商品を勧めている。
「我は何を着ていても素晴らしい男だからな」
セインはふんすと鼻息荒くしながら、椅子に座ったまま胸を張る。
「ふーん」
ボクは気のない返事をして紅茶をすすった。
ボクとセイン、そしてマキシムは、応接間の椅子に座ってテーブルの上に用意された紅茶とお菓子を味わっていた。
カーティスは隣国の駐在員と一緒に商会の人たちと話をしている。
同じ8歳とは思えないなぁ。
しっかりしている。
「このお菓子美味しいっ!」
マキシムは手に取ったクッキーを一口かじってから、目を丸くして固まった。
分かりにくいが、勘当で小さく震えている。
ボクでなきゃ見逃しちゃうね。
これが獣化しているときだったら、小さくキャンと鳴いて固まっちゃっているだろう。
可愛いマキシムは、ボクの御眼鏡にかなう人物でなきゃ、任せられないなぁ。
「マキシムは自分で選ばなくていいの?」
「うん。僕、ああいうのは分からないから」
マキシムはコクンとうなずきながら答えた。
白い髪がふわっと揺れる。
マキシムも服飾品には興味がないようだ。
獣化したマキシムは、そのままが一番可愛いもんね。仕方ない。
マキシムの物は、獣人国の駐在員が来ていて、お母さまと相談しながら決めている。
赤い飾りのついたチョーカーは似合っているから、赤が似合うんじゃないかなぁ、とボクは思っているけど、お母さまたちが見ているのは青だ。
瞳の色と合わせるみたい。
それはそれでアリだね。
「あ! オズワルドが来た!」
オズワルドの姿を確認したボクは、座っていた椅子からピョンと飛び上がるように下りて、応接間の入り口に駆け寄った。




