第19話 楽しい学園生活 1
王立学園での生活も本格的になってきた。
ボクはそれなりに忙しい。
神殿での鑑定以降、お父さまやお兄さまがガシャガシャ何か言っていたけど無視しました。
ボクの気持ちは、ボクの能力とは関係ないからね。
魔力量が多い優性オメガの進路は色々と選べるけど、ボクはオズワルドと結婚して幸せになるんだ。
オズワルドのために役立てるものであって、ボクの経歴を華やかに彩るためになんて使わないよ。
お母さまは何も言わない。
だからボクは、お母さまには相談するつもりだ。
「アイリス。お前は魔力量も多くて優性オメガなのだから、もっといい嫁ぎ先はあるぞ? 気になるクラスメイトとかいないのか?」
今朝もお兄さまはうるさい。
「お兄さま。ボクのクラスには、オメガとベータしかいませんよ」
よく晴れていて気持ちのいい朝なのに、とても残念。
馬車の中でボクはうんざりしていた。
「そんなことはないだろう? アルファだっているよ。学年が上の生徒でも……」
お兄さまはオズワルドが気に入らないくらいなんだから、他のアルファが婚約者になっても気に入らないと思うけど。
それを言うとまた面倒なことになりそうなので、ボクは馬車の小窓から外を眺めてくちをつぐんだ。
ボクの人生、ボクの力なんだから。
使いどころなんて、ボクが決めたらいいだけのことだと思うけど。
違うのかなぁ~?
それを知るために、ボクはしっかり勉強するよ。
馬車が学園につき、お兄さまと別れて教室へと向かう。
学園内は広いから、移動だけでも運動になる。
教室に入ると、マキシムが目ざとくボクを見つけて声をかけてきた。
「おはよう、アイリス。今日もいい日だね」
「おはよう、マキシム。そうだね。今日も気持ちのいい日だね」
ボクは、マキシムと一緒にいたセインとカーティスにも朝の挨拶をする。
マキシムは寮に入ってクラスメイトに加わった。
セインとカーティスも寮住まいだ。
だから割と三人セットで一緒にいることが多い。
カーティスはともかく、セインから悪影響を受けなきゃいいけどな、とボクは思っている。
「今日もマキシムはかわいいね」
ボクはニコニコしながら、彼の頭を撫でる。
撫でたくなっちゃうんだよ。
しばらくボクのペットとして一緒に暮らしたからさ。
シロと名付けたくらい、マキシムの髪は白い。
しかも細身で可憐。
なのに虎の獣人とか意外性あるよね。
「僕は白虎の獣人なんだけど……猫っぽいよね?」
本人も自覚あるみたいで、より可愛い。
オーレリア先生の言っていた【行方不明の獣人君】はマキシムのことだった。
最初から王立学園へ入学予定だったから、無事クラスメイトになれて嬉しいよ。
「確かに猫っぽいね。しかも子猫」
「それ言わないでぇ~、アイリス」
マキシムが赤くなった顔を恥ずかしそうに両手で隠した。
そんなことをしたら余計に可愛いぞ。
ボクが守ってあげないとね。
そんな気持ちにさせるところがマキシムにはある。
「怪しい。もしやアイリスはマキシムのことが好きなのか?」
セインが変な疑いをボクにかけた。
「まさか」
ボクは即座に否定した。
守りたいと思いはしても、ボクもマキシムと同じオメガだから、別に惚れちゃったりするわけじゃないよ。
それにボクにはオズワルドがいる。
「怖い目にあったあとだもん。気を付けてあげなきゃね」
「ありがとう、アイリス」
お礼を言うマキシムの首元には赤い石のついたリボンが結ばれていた。
今のマキシムは猫みたいな姿ではないけど、万が一のことを考えて位置情報の分かる魔法道具はそのまま付けてもらっている。
位置情報の管理は寮の警備へ譲ったけどね。
マキシムが安全なら、管理なんてどこでもいいよ。
一緒に暮らしてた時も楽しかったけど、クラスが同じだからやっぱり楽しい。
ときどきセインが「我と魔法契約を結んだくせに……」などとブツブツ言って拗ねたりしてメンドクサイ。
寮で一緒に暮らしてるの楽しそうで羨ましいけどなー。
ボクも中等科に上がったら、寮に入ろうかな?
などと考えたタイミングでオーレリア先生が紫色の髪を揺らしながら教室へ入ってきたので、ボクは慌てて自分の席へ着いた。




