第16話 シロは語る
事態に気付いたメイドたちの動きは早かった。
地面にぺちゃんと座ったシロの白い肌はテーブルクロスであっという間に隠されて、ピクニックシートのようなものを敷いた上に移動させていた。
「これは一体……どういうこと?」
ボクは少年になったシロを見下ろしながら首を傾げる。
さっきまで腕のなかにいた白いモフモフはどこへいってしまったのか?
化かされたような気分だ。
シロは少年の姿になっても髪の色は白。
色素が抜けた白髪ではなくて、白いクリームが塗られているような白髪だ。
ケモミミはついているが人間の耳もついている。
どんな構造になっているのだろうか?
肌の色は透き通るように白い。
身長はボクと同じくらいだが、手足が長くからとても華奢に見えた。
顔は小さくて整っている。
人間の姿になっても、とても可愛い。
メイドたちがテーブルクロスをカーテンのように広げてシロの姿を隠した。
そして再びシロの姿が現れたときには、どこから持ってきたのか男の子用の服が着せられていた。
イリュージョンのようだ。
ボクは目をぱちくりさせた。
オズワルドも驚いたように目をぱちくりさせている。
でもダメだよ、オズワルド。
ボク以外の子をジロジロ見るのは禁止だからね。
失神してゴロンと倒れているゴリラっぽい人間にも服が着せられて、こちらにはグルグルと縄も巻かれていた。
どうなってるのか、誰か説明して⁉
ボクがそう思っていると、処理の手配を終えたお母さまたちがこちらへやってきた。
お母さまはシロを椅子に座らせると、自分はその正面に座って口を開く。
「さて、説明してもらおうか」
「えっと……」
シロは説明を始めた。
「僕は獣人で、名はマキシムといいます。そこに転がっている化け物は、僕の許婚です」
「許婚? ならばなぜ彼は襲ってきたのです?」
「それは……」
シロ改めマキシムはぷっくりした唇をキュッと引き結んだ。
そして膝の上に置いた両手をギュッと握りしめると意を決したように口を開く。
「許婚だからいいだろう、ってまだ8歳の僕に手を出そうとしたのです」
「「「「なんだって⁉」」」」
その場にいたお母さまとお父さま、お兄さまとオズワルドが声を合わせて叫んだ。
ボクはちょっとビビった。
8歳というと、マキシムとボクは同い年だね。
でも『手を出す』ってなんだろう?
「獣人だから8歳でも大人だと言って……いやらしいことをしようと……」
ほう。『手を出す』っていやらしいことをすることなんだ。
なぜかオズワルドがお父さまとお兄さまに睨まれているけれど。
ボクは『手を出されていない』からやめてあげて欲しいです。
「僕は嫌だっていって断ったんです。そしたら呪いをかけられて、あの姿に……」
「ああそうか。だから獣人だって分からなかったんだ」
マキシムはうなずいた。
「自分で獣化したなら変身は自分の意志で解けるのですが、呪いだったので人間に戻ることができなくて……あいつから逃げようとして、馬車の荷台に乗り込んだら、ここまで来てしまい……こうなりました」
お母さまが相づちを打つように手をたたいて、コクコクとうなずいている。
「俺は商売であちこち行くから、獣人も初めて見るわけじゃないし。鑑定も出来るから、普通なら動物の種類もだいたいは分かるはずなのに、君の場合には全然わからなくて不思議だったけど。呪いだったか。なら分からなくても仕方ないか」
お母さまは1人納得している。
あの姿は呪いによるものだったんだ。
可愛くなっちゃうのも呪いなのかー。
うーん。シロは可愛かったから、呪い解けちゃって残念ではあるなぁ。
で、これからどうする?




