第13話 襲撃 2
「来るぞっ!」
オズワルドが空に広がった割れ目を睨みながら叫ぶ。
「屋敷のなかにシェルターがありますっ。戦えない方は、そちらへっ!」
お母さまが腕ごと屋敷のほうへ右手を向けながら叫んでいる。
だが屋敷のなかへ飛び込む者は、誰もいない。
来客は皆それぞれに態勢を整えて立ち向かうつもりのようだ。
「我らは戦えますっ。なんといっても王立学園の卒業生ですからっ」
貴族服を着たご老人が黒いボックスのなかから剣を引き抜きながら大声で答えれば、でっぷりと太った商人風の男性も笑いながら剣を構えた。
「はっはっは。商人にとって襲撃など日常茶飯事っ! 平民とて戦えますっ!」
綺麗なドレスを着たご婦人は両手でシールドを張りながら、叫んでいる。
「戦闘向きでない能力をお持ちの方は、わたくしの後ろへ! 癒しの力は戦闘後にこそ必要でしてよ!」
使用人の何人かは、シールドの陰へと逃れた。
男女や身分、立場を問わず、大人たちはそれぞれの能力に適した場所へと移動して自分を活かそうとしている。
だとしたら、ボクに出来ることは何だろう?
カーティスの後ろにいるセインすら剣を構えて上空を睨んでいる。
シロを抱きしめ、オズワルドの背中に隠れることしかできない自分が悔しくて、ボクは唇をかむ。
「アイリスはそこにいなさい。この状況でシェルターに移動しようとするのも危ない」
オズワルドの言葉に、ボクはコクリと頷いた。
シロはボクの腕のなかで震えている。
「大丈夫だよ、シロ。お母さまも強いし、オズワルドも強いからね」
「みゅ~……」
シロが庇護欲をそそる小さな声を上げる。
ボクが守ってあげられたらいいんだけど。
ボクには何ができる?
シールドにミシミシミシッとヒビが走って、小さな欠片がボロボロと落ちてくる。
羽の生えたゴリラにとっては、我が家のシールドは卵の殻程度のものだったらしい。
化け物はシールドに出来た穴へ肩をガンッとぶつけて広げている。
何か叫んでいるようだが、声が大きいうえに割れて聞こえるからゴォォォォという地響きのようにしか聞こえない。
化け物は化け物なりに必死なようだが迷惑だ。
ガンッとぶつかった拍子に、シールドと化け物の体から抜けた羽が炎を上げながら庭にドスンと音を立てて落ちた。
化け物がシールドの穴を通ってこちら側へと侵入している。
バラバラと落ちてくる燃え盛る何かをオズワルドが剣で薙ぎ払った。
ボクは守られているだけで無力だ。
「来たぞっ!」
崩れ行くシールドの音と衝撃と共に、お母さまの声が響いた。
翼の生えた化け物ゴリラが空からボクたちの方へ降りてくるのが見えた――――




