第12話 襲撃 1
屋敷は、セキュリティのための魔法道具で覆われている。
魔獣が出ても大丈夫なくらいのシールドが張ってあるはずなのに、衝撃は空から訪れた。
「ちょっ……なにあれ⁉」
ボクは空を指さして叫んだ。
空にはゴリラ。翼の生えたゴリラみたいな生物がいるっ!
しかも燃えているから、肌は毛皮でモフモフというよりも、溶岩のようにゴツゴツだ。
冷えた表面だけが黒く変色している。
鳥のような足をしているが、太いし、炎は出ているし、爪も太くて鋭い。
バッサバッサと翼を羽ばたかせているその姿はまさに――――
「化け物!!!」
セインが恐怖で顔を引きつらせて叫んでいる。
確かに化け物だ。
ボクもセインに同意する。
「セインさま! 小生の後ろへ! セインさまを狙った襲撃かもしれませんっ!」
カーティスが空を見上げながら叫び、セインの前に出た。
流石はお付きの人だ。
でも空から来られると、後ろにさがったくらいではサッと上空にさらわれちゃいそう。
「アイリスはオレの後ろへ隠れて」
オズワルドがキリッと引き締まった表情でボクの前に立った。
ボクはシロをギュッと腕に抱いて、オズワルドの陰にかくれた。
本気になって時のオズワルドは一人称が『オレ』になる。
緊急事態なのに、上空を睨む真剣な黒い瞳に、ボクはキュンとなった。
ボクってばオズワルドに守られて、お姫さまみたい。
いやいや、ボクは男オメガだから、王子さまか。
でも王子さまは守られてムネキュンしないよね?
じゃ、やっぱお姫さまか。
ギュインギュイン激しく点滅する赤い光とけたたましい警告音が庭に響いた。
ちょっとくだらないことを考えていたボクを怒ったのかな?
ボクがちょっとだけ反省すると地面からギュインと長方形の黒っぽい箱が出てきた。
お母さまの声が響く。
「その箱の中に剣が入っていますっ! 武器をお持ちでない方は、ご活用くださいっ! 使用許可は入場時の確認で付与されていますから、手をかざすだけで取り出せますっ!」
おおっ。
我が家にこんな仕掛けがあったとは!
……あ、お母さま、コレも売る気だ。
でも剣を握るオズワルドを間近で見られたから、どっちでもいいや。
「来るぞっ!」
お父さまの声が響いた。
お父さまも剣を握っている。
お兄さまもだ。
お兄さまはアルファだし強いけど、お父さまは弱いのになぁ。
地面から生えた金属の箱は、単純な容器ではなくて高度な魔法道具のようだ。
初めて手にする剣だというのに、持ち主に合わせて変形している。
お兄さまの剣は切れ味が鋭そうな細身のもので、お母さまが持っている剣は大剣のようだ。
お父さまが持っている剣は軽そう。
オズワルドが持っている剣はクールな感じ。
氷系の魔力をまとっているように見える。
他の皆もそれぞれに武器を構えているようだが、形や特性が異なるようだ。
カーティスは剣をとらずに、自らの魔力で青白く光る小刀のようなものを片手ずつ両手に作って握っている。
「うわっ!」
激しい衝撃が再び屋敷を襲った。
足元が揺れてボクはふらつく。
「大丈夫か、アイリス⁉」
「うん、大丈夫」
ボクは態勢を整えながら空を見上げた。
翼の生えたゴリラがシールドにガンガンぶつかっている。
シールドは庭と屋敷を地面ごと包む形で張られているから、ぶつかられると全体に衝撃があるのだ。
ボクの腕のなかではシロがブルブルと震えている。
「大丈夫だよ、シロ。ボクが守ってあげるから」
「にゃ~」
小さな鳴き声を上げる弱々しい生き物をギュッと抱えて、ボクはオズワルドの陰に隠れた。
シールドがメリメリと音を立てるのが聞こえる。
破られてしまうのだろうか?
破られたら、ボクらはどうなってしまうのか?
ボクはシロを抱きしめながら、オズワルドの上着の背中を右手でギュッと握った。




