はじまり
俺がこの施設に入ったのは10歳になりたての時だった。別に嫌な思い出があったというわけではないし、感謝に値する恩もあると思っている。ただ、こうやって施設を出てみると相対的に自由が恨めしかったことが思い出される。
施設に入る前の俺は孤児だった。おそらくみんなそうで、おそらくみんな形だけはお金持ちの子供になっていて、おそらく虚ろな愛を受け取ってきたんだと思う。食べ物も着るものもあったけど、学校に行けたこと以外は寂しかった。
ここに入ってすぐ、ペアを組まされた。俺の相手はエルナリア。ちょうど3ヶ月年上の女の子だった。
「私はエルナリア。君は?」
「僕はカガリ。」
これが記念すべき最初の彼女との会話だ。きっと彼女も今も覚えていると思う。
ここでは十分な食料も服も貰えたし、軽い小遣いも貰えた。この施設は一つの街みたいになっていて、中にはどんな店でもあった。みんなそこでお菓子を買ったり貯金してゲーム機を買ったりしていた。でも、簡単な授業と戦闘の訓練を受けなくちゃいけなかったのは少し億劫だった。
授業はどうでも良かったのだが、印象に残っているのはやはり戦闘訓練だった。専属の教官がペアごとに付いて武器や体術、魔法などを指導する。1ヶ月ごとに対抗戦があったのだが、そこで俺とエルナリアは負け無しだった。俺は近距離での戦闘が強かったと自負しているが、彼女の弓の技術には人生で初めてすごいと思った。なにせ弓の狙いが正確なだけじゃなくて、部品を買い足しては弓を改造してたんだ。俺も気になって聞いたよ。
「欲しいもの他にあるだろ」
って。そしたら、
「お金ならあるよ。欲しいものも全部買ってる。改造した弓売ってるからね。」
って言ったんだよ。なかなかぶっ飛んだ性格していると思うんだ。あんたのせいで俺まで苦戦するんだからな。勘弁してほしかった。
実は、今回施設を出ていく原因になった原因がこれだった。何でも鬼と人間の戦争だって聞いて、こっから徴兵だってね。「馬鹿げてるな」って最初は思ってたけど、なんか10年くらい前から緊張状態だったかなんだかで。まあそんな話はどうでも良いわけなんだけどね。回想終わり。
「そういやさ、ゲットした鑑定スキル使ってみるか?」
「ステータス見られるやつでしょ。見てみてよ。」
見てみる。えっと…
【ステータス:エルナリア】
職業:弓使い
Level:1 (0%)
HP:100
攻撃力:60
守備力:30
俊敏値:-10%
魔力軽減:5%
魔力値:1C
魔力変換効率:10%
「エルナリアってファイア撃てるんだな」
「10秒かかるけどね。そんなんじゃ全然ダメ。ファイアは威力20しか出ないのに、10秒もかかってたら効率悪すぎるじゃない。」
「撃ったことないだろ」
「さすがに1回くらいはあるわよ。あんたのステータスも見せてよ。」
【ステータス:カガリ】
職業:剣士
Level:1 (0%)
HP:90
攻撃力:40
守備力:20
俊敏値:30%
魔力軽減:10%
魔力値:0C
魔力変換効率:-
「私のこと言っておいてあんたそもそも魔法撃てないじゃない。ステータスもなんか私より弱いし。」
「剣士はハヤブサみたいな職業だからな。エルナリアだって近づかれたら何もできないし、そもそも剣の方が弓より攻撃頻度圧倒的に早いんだからそうなるだろ」
「前衛がいなくちゃ私なにもできないからね、まあいないよりはましよ。」
そんな会話をしていたら、それらしいところに着いた。
「なるほど、君たちがカガリとエルナリアか。私はオルベク。この国の騎士団長だ。君たちの他にも2人来ているからね。お互いに顔を合わせておかないと。」
「「よろしくお願いします。」」
声が揃った。
「あ、お姉ちゃんたちがあたしの仲間になるの?よろしくね!私はアマリだよ!よろしく!お姉ちゃんたちの名前はなんて言うの?」
「私はエルナリア。こっちはカガリ。」
「よろしく。ずいぶん元気だな。」
「カガリとエルナリア、だね、よろしくね。」
「私からも言わせてもらおう。アマリは武器商人の生まれだったんだがね、わけあって私の家で暮らしていたんだ。まだ幼いけど、彼女の槍術には目を見張るものがあるな。」
「あたし強いんだよ!ステータス見て!」
【ステータス:アマリ】
職業:槍使い
Level:5 (0%)
HP:140
攻撃力:50
守備力:50
俊敏値:0%
魔力軽減:5%
魔力値:1.5C
魔力変換効率:15%
もうレベル5なのか…どういう原理でレベルアップしてるんだ…
「あなた、なかなか魔法の素質があるわね。羨ましいわ。」
「へへーん、ありがとうね」
「そういえば、もう1人来ているぞ」
「おっしゃ!俺はミズナス!よろしくな!ほら、ステータスを見せてやるよ」
【ステータス:ミズナス】
職業:魔法使い
Level:1 (0%)
HP:70
攻撃力:0
守備力:20
俊敏値:5%
魔力軽減:25%
魔力値:3C
魔力変換効率:30%
「ファイアどころかアファイアも撃てるぜ」
「まあそういうわけで、明日くらいには早速出撃してもらうから、装備でも整えておいてくれ」