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すっぽんじゃなくて太陽の女神です  作者: 土広 真丘
番外編 -焔の神器とフルード編-
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15.おまけ―焔の神器に関する、天威師と聖威師の悩ましい談話 中編―

お読みいただきありがとうございます。

(有色の神は至高神が坐す超天に来られる。抑えてる力を解放すれば、薄くだけど私たちと同じ虹を纏うしね)


 神々は普段、自らの力のほぼ全てを抑え込んでいる。あまりにも強大な御稜威は、発するだけで世界を威圧し、瓦解させてしまうからだ。

 そして、抑制に抑制を重ねた状態であってもなお、最下位の神ですら地上を簡単に消し飛ばせるのだから、真価を解き放てばどうなるかは推して知るべしだ。


(本気になったら淡虹を帯びる。それが有色の神の真価にして真骨頂、辿り着く境地の果て……なんだけど。それは合ってるんだけど)


 日香は保冷霊具が取り付けられた水差しから、紅茶を注いだ。温かいものは飽きて来たので、今度は冷製の紅茶だ。


(でも実は、さらにその上があるんだよね〜。先じゃなくて、上が。天の神として到達する終着点は、淡い虹を出すところまでだから)


 キンと冷えた液体が喉を通ると、何とも言えない清涼感が満ちた。そよ風にはためく衣を遊ばせつつ、日香は思考を巡らせる。


(上に行く方法はとっても簡単。薄虹を出した状態でえーいって気合いを入れて、その虹をもっともっともっと色濃く鮮やかにしてくだけ)


 こうして言葉にすると時間がかかりそうに思うが、その気になれば一瞬でできる。神は自らの精神や意思を自在に制御できるためだ。己の気勢を、一瞬で最高点にまで持っていくことなど容易い。


(そうして虹を強めて強めて強めれば――有色の神は終着点の最果てを超えて、至高神に転化する。要するに至高神になるってことだね)


 これが先ほどから出ている、転化や至高神化という言葉の正体だ。色持ちの神は、その真価を解放して極限まで虹を高めれば、存在自体が次元の違うものに転じ、至高神の一種になるのだ。


 選ばれし神は普段表出させている仮の神格の奥に真の神格を持つが、転化はそれとは全く違う。自身の存在自体を変えてしまう現象なのだ。真の神格を出すどころの話ではない。文字通り次元が違う現象だ。


(当たり前だけど、転化したら神格も変わる。最高神と選ばれし神は、陽神(ようしん)朏神(ひしん)暗神(おんしん)亡神(ぼうしん)のどれかに転化するんだよね)


 選ばれし神は、常々は押さえ込んでいるものの、最高神に匹敵する神格を持つ神だ。ゆえに、転化後の神格は最高神が転化した場合と同じものになる。同じ神格でも、神ごとによって個体差が生じるため、紅日神(こうにちしん)緋日神(ひにちしん)橙日神(とうにちしん)のように細分化はされるだろうが。


(選ばれし神より下の高位神が至高神化した場合は、暉神(きしん)朎神(れいしん)昏神(こんしん)逝神(せいしん)のどれかになる。佳良たちやフルード君はこっちだね)


 それがために、至高神とっての色持ちの神は、正真正銘の意味での同族――()()()()()なのだ。なお、至高神化した後でも、転化前の神格に戻ることはできる。その後で再び転化することも可能であり、任意の神格と状態を変幻自在に移ろうことが可能だ。


(でも、だからってそれを誇示したり、私たちに対して居丈高になったりする高位神はいないけど)


 自分は至高神になれる特性を持っていると自認して、それだけだ。自分たちは偉いのだと調子付いたりすることはない。理由もなく至高神化のことを言いふらしたり、自慢げに匂わせたりもしない。

 佳良たちとてそうだ。天威師に対しては常に(へりくだ)り、尊崇の念を向けている。高飛車な態度をとったり、侮ることもない。真の強者は常に余裕がある。わざわざ誰かをやり込めたりしようとは考えないのだ。


 日香の胸中に連動するように、秀峰たちと話していた佳良が言う。


「フルードの中にいらっしゃる焔神様……いえ、焔の神器も同様でしょう。意味もなく真の神格を出したり、ましてや転化などなさらぬはず」

「だが、そうせねばならぬ理由があれば別であろう。……フルードを害そうとする得体の知れぬモノが気になるところだ」


 涼やかな美貌に険相を浮かべ、ラウが呟いた。場に緊張が走る。


(そうなんだよねー)


 日香もうんうんと頷いた。フルードを何が何でも不幸と絶望の底の底へ叩き落とさんとする、不気味な何か。

 フルードが天界で修行していた頃、焔神もその存在を朧げに感じ取り、酷く気にしていたという。


 ……だからフルード専用の自分を増やして、その身の内に常駐させて守ろう、と考えるところがぶっ飛びすぎているが。そんなことを実行した神など前代未聞だ。


「そも、私はフルードの生育環境を知った時から気になっていた。何故誰も、あの子が置かれている地獄に気付かなかったのであろうか」


 秀峰が難しい顔でひとりごちた。それは皆が疑問に思っていることだった。

ありがとうございました。

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