第1話 金欠アルバイター
「ん~~っ!今日もつかれた~!」
そう言って大きく伸びる黒霧。……なんか艶めかしかった。
バイト終わり、僕らは帰路を辿っていた。偶然にも、彼女は隣町に住んでいるらしく、毎日一緒に帰ることができている。
ちなみに、僕らの仕事内容はドラッグストアの商品陳列・在庫管理。今日のバイトでは、先週からの新人が薬を落とし、その処理に追われていたのだ。
「お疲れ。今日はドタバタだったな。」
「ほんとだね〜。あの新人の子、滅多にミスとかしないから油断しちゃってた。」
「まあミスなんてしょうがないし。ね?黒霧さん?」
「あ、え、そそ、そうですねー…」
そう、何を隠そうこの黒霧、バイト初日に遅刻+陳列ミス+レジ破壊(?)と盛大にやらかしている。正直、この人と関わらない方がいいと思っていた。
「ちょっとコンビニ寄るね。」
煽っていたら黒霧が話を変えてきた。
「もちろんどうぞ。」
黒霧がお腹すいたということで軽いスイーツを選んでいる。
「宵暮くんはなんか買わないの?」
ちょっとあざとく、ちょっと顔色をうかがうように尋ねてきた。
「あー、まあ今は金欠だし、いいかな。」
「宵暮くんっていつも何も買わないよね、私がお店寄っても。やましいことでもあるの?」
ドキっとした。少し痛いところを突かれてしまった。
「いや、そういうわけじゃないけど…」
今が金欠なのは嘘ではない。しかし、いつも何も買わないのも事実。
「まあまあ、あなたには関係ないことだから、安心して。」
「えー、何か無責任な感じー。…まあいっか!スイーツた~べよ!」
この人はいつも、僕が言い淀んでもあまり詮索してこない。それには助けられているし、そんな彼女がまた好きになる。
イートインスペースで小動物のようにシュークリームを頬張る彼女を横目に、スマホの通知を確認する。
『シャンプーカップ麺ガム酒』
………はぁ〜。
好物を食べて満足そうな彼女をある程度まで見送ったのち、僕は踵を返した。
さて。
「いつものスーパーかな。」
暗闇の中、頭が痛くなってきた。