心の揺らぎ、射ち抜きます。
この物語は…….
弓道に人生を捧げてきた武道派女子高生が1人の男の子のハートを射止めるまでの物語である。
桜が舞い、冬の寒気さを取り除いた風が彼女の髪を揺らす。お互いに顔を見つめ合い、最後の一射が放たれる。彼女に取っての一射一生の一撃だ。
「やっと射つことができます。私と付き合ってください。」
「………….
主人公、矢島 弓奈は早起きだ。毎朝5時には起床し、柔軟を欠かさずに行う。その後瞑想と朝食、お化粧もナチュラルメイクを施す。そして家を出るためどうしても朝が早くなってしまうが致し方のないことであろう。と、真面目な武道を嗜む清楚系な女の子ならこの様な生活もあるかもしれない。否!!、この娘の通う高校、私立天道高校は文武両道を校訓とし、睡眠時間と勉強時間•体内リズムの関係から全部活動での朝練習を禁じている.そのため弓奈は家から学校までゆっくり歩いても30分ほどの距離にあるため、正直8時15分に家を出ることができれば十分に間に合うのである。しかし彼女は8時に家を出なければならない。それは彼に会うために他ならない。今日も彼に会うために家を出る。
「行ってきまーす。」
と扉を出て門を開ける。
「あら、毎朝会うわね、的井 圭君、本を読みながら歩いていると転ぶわよ。」
「….うん」
(うん、じゃないわよ、こんなに可愛い子が毎朝会って、一緒に登校してあげてるのよ。今日も可愛いねとか、おはようの一言くらい言いなさいよ、人見知りかよ)と彼女は毎朝同じようなことを考える。
彼女はこの冴えない読書が唯一の趣味と言える的井圭に好意を持ち、偶然を装い毎朝登校しているのである。