回避成功
ふざけた画家とやる気という文字を母体に置いてきた女の、屋上のフェンス越しから始まる物語書いてー。
というお題で書きました。(↓URLです)
https://shindanmaker.com/151526
死の間際、人間は最高の快楽を得るという。
情報の真偽はは知らないが、試してみたいと思った。
「どこで寝ているんですか、貴方は。」
無気力な声が上から落とされる。ゆっくりと目を開くと、逆光の中で緑に光る眼が見える。
僕がいるのは、塔の屋上。ぐるりと張り巡らされたフェンスを越えた、狭い足場だ。そこに寝転んでいる。塔と言っても円柱じゃなくて角柱だから、変な体勢じゃない………はず。
「疑似的な死を体験しようのコーナーだよ。一回は気になったことない?死に快楽が伴うのか否か。」
「気になっても実践しないのが正常。で、結果は?」
「怖いだけで特に何もないよ、残念。ところでなんだけど」
「何ですか唐突に。」
「怖くて動けないから助けてくれない?実は、寝てたんじゃなくて気絶してたんだよね。自分でも驚いてる。」
「厄介な奴ですね…」
「それは君も一緒でしょ?正確には親がだけど。」
「その問題はやはり、どうにもなりません。生贄を何度無駄にしたことか。もういっそのこと、貴方が生贄になってくれませんか?絶賛募集中ですよ。今なら優しくしてあげますよ。」
楽しそうに言っているけれど、普通にアウトだ。
なんでこんな奴と居るんだっけ。そう言いたくなる。
「絶対嫌だよ、生贄反対!僕をモルモットにしようとしないでよ。」
「残念。貴方なら私を開放できるのに。」
本当に残念そうで、罪悪感がすごい。けどこいつがしようとしてるのは僕を使った実験だし、罪悪感なんて持つだけ無駄だ。
僕は押しに弱いから、そう遠くない未来に実験体をしてる。絶対に。そうなる前に策を打つしかない。
「……あのさ、生贄を探さずに根源を絶っちゃえば?仕組みは知ってるんでしょ?」
「それは、……………それは、そうですよね。なるべくやる気を出したくないんですけど…」
珍しく悩んでる。両親を殺るんだから、悩まないほうがおかしいか。
「大丈夫大丈夫。やる気と殺る気は違うし、いいんじゃない?」
「かなり暴論な気もしますけど、いいでしょう。私を取り戻してきましょう。きっと両親以外は納得してくれるでしょう!」
「楽しそうなのはいいけど、そろそろ引き上げてくれない?僕、本当に死にそうなんだけど。」
「自分で頑張ってください。私は今、殺る気に満ちあふれているんです。」
「それじゃ自分で頑張るよ。そっちも頑張ってね~」
いつもの調子で言うと、少しほっとしたように両親の元へ向かっていった。僕もそろそろここから出ようかな?
フェンスを越えて屋上の床を踏む。キャンバスと筆を出し、キャンバスに色をのせていく。
「おめでとう、君は誰よりも強くなる。」
僕も決心がついた。ずっとここにいるのは気楽だけど、暇すぎる。君の隣なら、少しは楽しそうだ。
「少なくとも、死ぬよりは楽しいだろうね」
フェンスを蹴り、遠くに見える島を目指す。
日は昇り、鎖は絶たれた。これからは自由だ。
芸術の神の子として産まれたその神は、絵を描いた。
それは未来を示す絵であり、その絵に描かれたことは絶対であった。その力を恐れた神々は、彼を塔へ閉じ込めることにした。
塔の中で孤独だった神。しかし、彼の元へある神が通うようになる。その神は主神の子で、母に生きる気力を与えるために生きていた。そうしたのは主神で、妻にかけられた無気力になる呪いへ対抗するためであった。
彼女は、母に気力を吸い取られて常に無気力だった。やる気が特に吸い取られるため、やる気を出さないように生きてきた。そして、吸い取る先を自分から変えるため、何度も実験した。
ただ生きるだけの2柱の神はある日、動き出した。
彼女は、気力を吸い取る母とその役割を与えた父を殺した。
彼は、幾星霜も続いた囚われの生活から抜け出した。
彼がいなくなった屋上。緑色の目をした女神が倒れている絵が散乱している。
その中で唯一壁に立てかけられたキャンバスには、倒れ臥した神の上に立つ緑眼の女神が描かれていた。
本当はざまぁ要素入れてみたかったんですが、上手く行きませんでした。また挑戦してみます。
題名の意味は、「画家が生贄の未来を回避できた」「女性(女神)が自死を選ぶ未来を回避できた」の2つです。
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