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第五話

天文十七年 (一五四ハ年) 九月 山城国 京 御所


「面をあげよ。」

 

 足利義藤の声が聞こえた。顔を上げて足利義藤を見てみると、剣豪将軍と言われるだけあってガッチリとした体をしている。ただ、まだ子供だからか、思っていたより怖くない。


「朝倉延景と申します。代替わりの挨拶が遅れ申し訳御座いませぬ。」


「よいよい、気にするな。そちは、足利を支えて来た朝倉家の当主なのだ。」


 足利義晴が返答した。やはり、まだ子供の義藤には、外交などは任せられないのだろう。


これからも、足利の為に働けという事か。誰が利益にもならない事をするものか。


「そうおっしゃて頂けますと、心が軽くなりまする。これからも朝倉家は足利家の為、延いては、日の本の為に働きます。」


「そうかそうか。そう言ってくれると、嬉しく思う。」


 そう言いながら、上機嫌そうな顔をしている。それもそうだ、有力な大名家の当主が代替わりの挨拶に来たのだ。それに、幕府に莫大な献金をしたからね。今なら越中国の守護職をねだれるか?


「ですが、今朝倉家は危機にひんしております。」


「危機とは何だ?余に出来る事ならするぞ。」


「はい、公方様への挨拶が遅れた原因である、加賀の一向一揆で御座います。」


「加賀の一向一揆か。朝倉家と度々衝突していると聞いている。仲介に入って欲しいのか?」


 それは、お前が幕府の権威を上げる為に、やりたい事だろうが。まぁ、本当に言う訳にはいかないが。


「いえ、もう我等朝倉家と一向一揆は和解出来ませぬ。仮に某が納得したとこで、家臣達が納得出来ませぬ。家臣の中には身内を沢山殺された者が、大勢おります故。なのでどうか、某に越中守護授けてはもらえませぬか?」


「余が仲介する事で、解決出来ないことは分かった。だが何故、越中守護なのだ?それに越中守護には、畠山が付いている筈だ。」


「加賀の一向一揆の後ろには、越中一向一揆がおりまして、戦の度に加賀の一向一揆に支援をしているのです。奴らがいる限り加賀の一向一揆との戦に、けりを付ける事ができませぬ。ですので、越中守護になり、越中の国人に越中一向一揆に対処する様、命じたいからです。そして、本来守護であるならば、一向一揆がのさばる様な状況にしてはならないのに、何の対処もしていない畠山氏に守護の資格は無いと思いましたので、某が越中守護に就きたいと思う次第に御座います。」


「ふむ、あい分かった。お主は幕府の為に、長年戦をしていた朝倉家の新当主になったのだ。祝いとしてくれてやろう。」


「ありがたき幸せに御座います!」


「これからも幕府に変わらぬ忠誠を持つのだぞ。」


「ははっ!」


天文十七年 (一五四ハ年) 九月 山城国 京 御所 足利義晴


 余の目の前に若武者がいる。顔は少し良いくらいだろうか。名門朝倉家の新当主らしい。代替わりの挨拶とは何とも殊勝な心掛けだ。それに加えて幕府にかなりの金額の献金をしたと聞いている。余の命を聞かない武家がいる中でわこの様な忠勤の志のある武家は少ない。全く、嘆かわしい事だ。


 如何やら、朝倉延景は越中守護が欲しいらしい。越前国から越中国を攻めるのは、出来ないだろうし構わないだろう。それに仮に越中国に攻め入っても、余に忠実な勢力が大きくなるだけで、何の問題もない。


 越中守護をやると言ったら、嬉しそうな表情をした。これで、三好と戦う事になっても、朝倉を上洛させて戦わせる事が出来そうだ。余も、最近病気になる事が多くなって来た。まだまだ幼い義藤に、残せるものは残しておきたい。後で、義藤に朝倉は我等足利の忠臣であると伝えねばな。






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