第二話
天文十六年 (一五四七年) 七月 越前国 一乗谷 朝倉氏館
十五歳になった今日、元服する事になった。この七年間手習を真面目に受け、父の家臣達や供回りとコミュニケーションをとって信頼を築いて来た。中々大変だったが、人として成長出来た気がする。そんな事を思っていると家臣に呼ばれた。いよいよ元服だ。
部屋に入ると、そこには父上と家臣達が居た。鳥帽子親は宗滴の爺様だ。
「朝倉家の諱である景と、これからも成長する事を願っての延の字で、延景とお名乗り下さい。」
そう言って絵帽子を俺に被せた。
「はっ!ありがとうございます!長夜叉の名は捨て、これからは朝倉延景と名乗り申します!」
その後、残りの儀式と宴会を行った。因みに、俺は酒が飲める様だ。少し安心した。
元服式から半年が経った。父上に呼び出された。
「父上お呼びでしょうか?」
「うむ、お前もそろそろ初陣を済ませるべきだろう。そこでだ、加賀の本願寺が兵を集めていると聞いた。宗滴と共に撃退して来い。」
「はっ!必ずや、功を立てまする!」
「うむ、武運を祈る。」
天文十六年 (一五四七年) 七月 越前国 北潟湖周辺
一週間経った。今、俺の目の前に、かの名将朝倉宗滴がいる。
「若様、一向一揆は大聖寺川に沿って攻めて来るでしょう。敵の兵力は一万(騎兵五百、歩兵九千五百)、我々の兵力は一万二千(騎兵千五百、歩兵一万五百)です。さて、若様ならどう言う策を立てますか?」
「そうだな、我々の方が、兵が多いから大聖寺川の越前国側に、鶴翼の陣を敷いて迎え撃つ。」
「なるほど、定石通りに行くのですか。もう少し、自由に考えて良いのですよ。」
「そう言う宗滴は、どんな策を取るのだ?」
「ふむ、そうですな。一万を大聖寺川に横陣で構えさせて、残りの別働隊二千を小森堡に待機させる。敵が川を渡り始めたら移動させて、一向一揆が川を渡り切り掛けたら、一向一揆の後方から奇襲をかける。」
「分かった。その策で行こう。」
「はっ。」
天文十六年 (一五四七年) 七月 加賀国 大聖寺川沿岸
「そんなに震えて、怖いのですか?」
「怖い訳なかろう!武者震いだ!」
「ハッハッハ、冗談で御座います。」
「伝令!伝令!一向一揆勢が前進し始めました!」
「よし、狼煙を上げろ、別働隊に知らせるのだ!」
「はっ!」
「若様、仕方ご覧ください!」
「ああ。」
敵が川を渡り始めた。そうすると、味方が矢を撃ち始める。当たりどころが悪く死ぬ兵も、ちらほらいるが、大体は負傷したくらいだ。だが、矢を撃ったおかげで、敵の士気をかなり下げる事ができた。
敵が少しずつ川を渡り切り、白兵戦が始まった。敵の士気が低いからか優勢だ。
白兵戦が始まってから四半刻程経って、敵の後方から砂煙が上がった。別働隊だ。敵はかなり混乱している。そして、少ししてから敵の軍勢が崩れた。そこからは一方的な戦いだった。
「どうでございましたか?」
「宗滴の言うとうり、定石通り戦うだけが全てでは無いと思った。俺はまだまだ未熟だが、いずれ宗滴を超える将になって見せる。」
「ハッハッハ、楽しみにして起きまする。」
こうして、俺の初陣が終わった。
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