【3】魔王になる!
「おまえ、何言ってるんだ…」
ティアは驚きすぎて、逆に頭の回転は追いついていけなかった。
「前のご褒美って回収されてなかったでしょ?だったら使えるはずだよね?」
ジェイはワクワクしている。顔を上げ、大きな目でテイアを見つめている。
だからそういうのはやめろって!
でも、たしかにかわいい!
「う…まあ、いいわ。その体の中にある、勇者のご褒美は全部封印がかけられているの。正直その封印を解かす方法とか私もわからない…もしかして強くなったら解けるんじゃない?」
「封印…ね…」
方法はわからなくても、とりあえず少し手がかりは掴めた。
この一ヶ月、ジェイはまだ限界があるこの体のコントロールを習得するだけでなく、ここはどんな世界も大体わかるようになった。
この世界では、魔族を統べる魔王という存在はいない。魔族内は東西南北を拠点にする四柱の手により、力のバランスを維持している。彼の父親はその四柱の一人、東を制している邪王、ヒュート・ラミレス。四柱はお互い友とは言えないが敵対関係でもない。自分の所轄のことで、もう手一杯らしいのだ。
彼はラミレス家で唯一の息子として、生涯裕福安泰の生活は送られると、保証させていると同然だ。しかし、魔王になろうとする彼は、家系だけではなく、誰にも文句言わせないほど、絶対的な力も必要なのだ。
邪王の息子である彼は、魔族の力はたぶん一般の人より強いのは、間違いないだろう。だったら、元勇者の力も使えるとなると、断然楽になると、確信できそうだ。
ただ、彼には分からないのは、同じ魔族であっても、自分が勇者だった頃見た魔族は、全部凶悪残忍な悪いやつしかないのに、今のこの平和の状況は何なんだ?
魔王いなかったから?
魔王いない世界なら、勇者もいないのか?
その疑問を持ちつつ、ジェイは1歳の誕生日を迎えた。
彼は普通の子供のようにはしゃいたり、子どばも発するこではできるようになった。
ただ、あえて悩みがあるというと、その八人のお姉さんたちは完全に彼をお人形扱いしていて、毎日かわいいお洋服を着せようとしている。
かわいさは彼の罪となってしまったのだ。
その日、邪王城ではジェイの1歳の誕生日パーティーを準備している。
このパーティーは魔族の中でもお偉いさんをたくさん招待していて、ジェイのお披露目ともなっている。
「ティア、いるか?」
話すのもできたが、どうせ自分しか見えないので、ジェイとティアはやはり念話を使って交流している。
「いるよ。何の用?」
ジェイに呼ばれ、ティアはまたパッと、彼の目の前に現れた。
「その…なんというか、緊張してて…」
初のお披露目、スピーチもするからか、ジェイはまさか緊張してきた。
「は?まさか~勇者のあの恥ずかしいセリフを十回も言ったのに、いまさら緊張するなんて!」
ティアはお腹を抱えながら、ケラケラ笑って、空中でぐるぐる回っていた。
「これぐらいで緊張するなら、魔王なんかやめて、はやく転生しに行こうよ!」
ティアの笑っている様子を見たら、ジェイも思わず顔赤くなってきた。
やはり、勇者のセリフは恥ずかしかった!
「ていうか、なんでずっと僕を転生させちゃいの?」
「だって次に転生したら、私は解放されちゃうもんー」
ティアは遠慮せず本音を吐き出した。
ジェイはなんだか少し悲しく感じてた。短い付き合いだったとはいえ、本当に彼の守護天使という気分はよくないね。
ティアはその悲しげな顔を見て、自分が言い過ぎたことにも気づいた。シュッとジェイの前に飛んできて、彼の頭を撫でてた。
「まあ…気にするなよ。魔王になる第一歩なのに、ここで引いたら、勇者の名に合わないだろ?」
ジェイは顔を上げ、ティアを見つめていた。
銀髪紫瞳、生まれつきの貴族気質、まだ小さいのに、もう将来有望だと、予想できる。
「と、とりあえず頑張れよ!君のパパ来たから、私は退散しとくね!」
ティアが消えた同時に、ヒュートがドアを開け、入ってきた。
「ジェイ!」
ヒュートは今日白いローブに赤いマント、これは正式な時の服装だ。
「ジェイ、大丈夫そ?」
ぶっちゃけ、ジェイから見ても、父親はかっこよすぎて、目は離せないのだ。
「頑張ります!」
ジェイは頑張って作った笑顔は、たとえ魔族であっても、「天使だ!」と思うように、ヒュートは思った。
「じゃ、行こうか!」
ジェイはヒュートが差し出してくれた手を握って、その温もりですこし安心になった。
邪王の長男の初披露目なので、残りの三柱も来た。百年一度の四柱会談以外、めったにないことなので、緊張感はすごく漂っている。
「来賓のみなさん!」
ヒュートの声で、全員の視線は会場中央の舞台に向けた。
「本日、よくぞわが息子の一歳の誕生日に参加してくれた!それではご紹介しよう!この子は我がラミレス家の長男で跡継ぎ、ジェイ・ラミレス!」
舞台の中央で、絶世の美男子の隣では、小さな子供がいた。銀色の髪に紫の瞳、すごく可愛かった。
「ほら、ジェイ、みんなに挨拶してごらん。」
ヒュートは軽くジェイの背中を押して、彼を前に出した。
ジェイは全員の視線を自分に集中していると感じ、大きく息を吸った。
「ほ、本日!みんなが来てくれて、ありがとうございます!僕はまだ小さいけど、ちゃんと努力して、大きくなったら魔王になるよう、頑張ります!」
ジェイは一気にすべてを吐き出したわりに、下はシーンとなった。
えっ?もしかして、なにか変なこと言った?
どうしようか考えていた時、誰か突然爆笑した。
「はははは!この子、本当にかわいいね!ぷははは!」
ジェイは笑い声の方向見たら、一人赤い髪の女がいた。燃える炎のような赤い髪、空のような青い瞳、頭の左側に黒い角が生えていた。その長い髪は頭の後ろに一つ束ねて、腰の下まで伸びていた。
赤い服と黒い革のズボン、すごくいいスタイルだとすぐ分かった。顔の半分は前髪に隠されたが、美人だと間違い無いとジェイは思った。
自分の母親も美人だが、この女の人はただ美しいだけではなく、凛々しさもあって、目は離せないほどだ。
女はジェイに笑いながら、話しかけた。
「ぼーや、妾の弟子にならないか?」




