コント「路上教習」
配役・・・A=生徒 B=教官 ●=ト書き
●自動車学校の教習車の中。助手席でBが待っている。
●Aが運転席に乗り込んでくる。
A「よろしくお願いします」
B「よろしく。君は今日が初めての路上教習か。気を引き締めて運転するように」
A「はぁ・・・」
B「ほら、フラフラしない!後ろ見ないで集中して」
A「すいません。でも・・・」
B「緊張するのは分かるけど、しっかりして!エンジンかけて」
A「は、はい」
●ブゥゥン(エンジン音)
●エンジン音とともに「♬~いーしやーきいもー おいも」と、録音の売り声が流れる。
A「これ、焼きイモの移動販売車ですよね?後ろに煙突ついてるし」
B「別にいいだろ。車は車なんだから」
A「嫌ですよ!もっと普通の車にしてください」
B「いや、うちの教習車はこのタイプしか無いから」
A「よりによって何でこれ一択なんですか!?」
B「ここな、昔は青果市場だったんだよ。でも破産して、出入りしてた焼きイモ屋も廃業してな。残った土地と行き場を失った焼きイモカーを活用しようと建てられたのが、この学校なんだ」
A「建てられた経緯特殊だな。大丈夫か、この学校?」
B「心配するな。見た目が少し変わってるだけだ。とにかく道路に出て」
A「分かりました」
B「ほら、キョロキョロしないで」
A「すいません、周りの目が気になって」
B「はい、ここ曲がって。この住宅街を回るから」
A「あー緊張してきた」
●キキーッ(ブレーキの音)
A「えっ何で止めるんですか?」
B「いくら何でも今のは不注意じゃないか?」
A「いや、前見てたけど何もありませんでしたよ?」
B「バックミラーを見ろ!お客さんが追いかけてるだろ!」
A「客って。そんな焼きイモ屋じゃあるまいし」
B「・・・(無言でAを見る)」
A「え?まさか焼きイモ売るんですか?」
B「当たり前だろ」
A「何でですか!?さっき見た目が少し変わってるだけって」
B「あと“お客さん”な。ちゃんと敬意を払え」
A「こだわりがすごい。焼きイモ屋でもないのに」
B「焼きイモ屋じゃないと誰が言った?」
A「えっ?教官、焼きイモ屋なんですか?」
B「元、な。かつてこの地に、焼きイモ三銃士と呼ばれる漢たちがいたんだが」
A「焼きイモ三銃士!?」
B「岩使いの重兵衛、疾風の彦八、そして残る一人“爆焼きのマサ”とは俺のことよ」
A「なんかすごい人だった」
B「とにかく、イモ売ってくるから待ってろ」
A「あっちょっと!本当に売ってるよ。なんかポンポン爆ぜてるし。あ~、何でこんな学校選んじゃったかな」
B「儲かった儲かった。じゃあ出発して」
●ブゥゥン
A「あの・・・普通に教えてください!」
B「どうした急に?」
A「僕は、必死にバイトして高い料金払って免許取りに来たんですよ!焼きイモ売るために来たんじゃない!」
B「まぁまぁ不満ばっかり言うな。不満言うエネルギーがあるならその分頑張れ。さてと、ひぃふぅみぃ」
A「売り上げ数えないでください!何であなたの小遣い稼ぎのために頑張らなきゃいけないんですか!?」
B「そんなことよりお客さん来たぞ」
A「そんなことって」
B「いやー来るわ来るわ。ウォーキングデッドみたいだ」
A「ここの人たちどんだけ焼きイモ好きなんですか」
B「書き入れ時だ。売るの手伝え」
A「何で僕が!?分かりましたやりますよ。お客さんすいません、一列に並んでお待ちくださーい」
B「儲かった儲かった。出発して」
●ブゥゥン
A「爆焼きってああやるんですね。すごかったー」
B「まぁな。君もなかなかいい声してたじゃないか」
A「そこ褒められても嬉しくないですけど」
●キキーッ
A「なんですか?お客さん来てませんよ?」
B「速度超過してたぞ。ちゃんとスピードメーター見て」
A「これ路上教習でしたね。すっかり忘れてた」
B「ここ曲がって、教習所入って。はい、今日はここまで」
A「はぁ~疲れた」
B「まぁ良かったじゃないか。焼きイモは売れたし、運転も上手くなったし」
A「ついでみたいに言わないでください。運転メインなんで」
B「さてと、ひぃふぅみぃ」
A「だから売り上げ数えないでください!」
B「だいぶ売れたな。じゃあこの売り上げの分、教習料金免除するから」
A「えっ?」
B「このペースなら、教習が終わるころには全額免除されるだろう。はい、頑張ったご褒美」
A「熱っ!」
B「それ、蜜がたっぷり入ってるから疲れなんか吹っ飛ぶぞ。またな」
A「教官・・・めっちゃいい人だった~!」