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朝焼けに泣く

良く晴れた朝だった。


夏は暑くてあまり好まない季節だが、日が昇る前、まだ蝉の音のあまり聞こえないこの時間は私にとって唯一の安らぎの時間だった。

「ふぅ……」

昔から季節に限らず、朝日が昇る前に起き、日が昇るまで窓の外を眺めながら飲み物を飲む。朝のルーティン。友達に話したところ「おばあちゃんかよ!」と笑われてしまったが、この日課だけは習慣化していてやめられそうにはなかった。

私にはこれといった趣味や特技はなかった。部活にも入っていない。友達といるときも輪の中にいるのに一人だけ取り残されているようなそんな疎外感がある。だからいつも考えている。自分がやれること、やりたいことを。


「私はだぁれ?」

高校2年になった頃から考えるようになったこの問は1年経った今でも答えの見つからない難問だった。

小さな頃は夢があっただろうか。好きな人はいたかな。あの頃は一日一日一瞬一瞬が輝いて見えていた。小学校のときにしかなかった「行間休み」あの15分しかなかった休み時間に校庭でケイドロやってたなぁ。いっつも私を引っ張ってくれるリーダー気質な女の子……名前なんだっけ?あの娘に憧れてたんだよね。


鳥のさえずりが聞こえる。

力強く鳴くその声は私に勇気をくれる。昨日を生きたぞ。今日も生きるぞ。と宣言しているように。そして、おまえはどうなんだ?とも言われている気がする。自意識過剰なことくらい私でも分かっている。でも考えずにはいられない。私は毎日後悔を繰り返しているのだから。


ミーンミンミン……セミの音が聞こえ始める。

太陽が東の夜空を焼ききるがごとく、黄みがかった赤色に染まっていく。星は見えなくなり、それと同時に鳥の数も増える。電車は動き始め、起きる人が段々と増えていく。

一人の世界が終わる。


今日も難問の答えは見つからない。私はずっと向き合っていくのだろう。どうせ急いだところで何も変わらないのだから。

日は昇り、夜が明ける。そして私は今日も仮面をかぶる。ごく平凡でなにも悩みなんてないようなモブキャラへ……その仮面の下の涙を隠しながら



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