表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
川を流れる花の名は  作者: 一条悠
9/22

宮廷の祝賀会

あっという間に二日が経ち、宮廷に行く日が来た。

いつもより早く起きて準備をする。

髪を梳くことから始まる長い過程の後しっかり化粧され、先日買った簪と若君にもらった簪を刺す。

二本合わせることでより一層華美な装いになる。

宮廷に行くにはやりすぎなくらいがちょうどいい。



支度をして母上と馬車に乗り宮廷へ行く。

幼い頃に何度か来たことがあるらしいが、花琳の記憶にはないため感覚的には初めての宮廷。

馬車を降りると見たことがないくらい立派な門で中にたくさんの建物があるのが見える。

「花琳、わかっていると思うけどくれぐれも気をつけるようにね。何事にも冷静に。」

屋敷での茶会とはわけが違う。

宮廷は色んな人たちの陰謀が渦めいている。何もしていなくとも知らずのうちに何かに巻き込まれることも有り得る。

呆けていないでしっかりしろという母上の本音が遠くから聞こえてくる。

花琳は気を引き締めて母上と馬車を降り中へ入る。

案内役の女官についていく。

宮廷の庭はこれでもかというほどきれいに整えられており、塀は高く、立派な建物が並んでいる。

人が増えるにつれて会場に近づいていることがわかる。

花琳と母上が通ると皆お喋りをやめこちらを見る。

大勢に見られて穴があきそうだ。

やりすぎなくらい着飾ってきてよかった。



「あの方が徐家の………」

「娘は皇子と婚約するらしいですわよ。」

「素晴らしい簪をつけてらっしゃるわ。」

「あの簪こそきっと皇子にもらったのよ。」

「まるで天女のようですわ。」

「徐夫人も相変わらずお美しいですわ。」


「あの娘、先日下位の方とお話していたのを見たような気がしますわ。」

「徐家の娘がそんなことするわけないじゃない。」



おしゃべりが止んだかと思えば絶えず聞こえてくる小さな話し声。

人の目というのはいつどこにあるかわからない。

下位の方というのは楊宣のことだろう。商人を下級貴族の人と見間違えたようで安心したが、なぜ他人のどうでもいいことを覚えているのか。花琳が誰と話そうと誰といようと他のものには関係ないはずだ。

生まれで決まる身分が花琳は嫌いだ。

煌煉国において身分というのは絶対で、四大貴族が侍女を介さず下級貴族や平民と直接話すというのは良しとされていない。上級貴族以下であれば下級貴族と直接話すことができる。

ちなみに、皇族が直接話せるのは四大貴族だけである。

厳格に守ってしまうと普段の政などに支障が出るためゆるっとした決まりであるが、街でおしゃべりというのは論外な話である。


人の噂というのは恐ろしい。

話が大きくなって噂として巡らなければ良いが。



花琳が皇子とは婚約するらしいという噂は嘘である。

四大貴族の長女であるため皇子と婚約するだろうとは思うが、まだまだ直接そんな話は出ていない。

そもそも皇子と会ったこともない。

花琳には二つ下の妹がいる。妹は皇子と故意にしているようだから、婚約するらしいという噂は妹のことかもしれない。

といっても、妹もまだ婚約の話は出ていないし、以前皇子のことをどう思ってるのか聞くと友人という返事が返ってきたため詳しいことはわからない。


皇子にもらったらしい簪は、曹家の若君にもらった簪のことだろう。

天女は言い過ぎだと思うが、それくらい素敵な自覚はある。

今までで一番豪華に着飾ってきた。



会場につくと大勢の貴族や、官吏、警備をしている侍衛、準備に忙しそうな女官など色んな人とすれ違う。

皆一様にきれいに着飾っている。

四大貴族の徐家である二人は皇后の席から比較的近い席に案内される。上座から皇帝皇后、妃と皇子、四大貴族、上級貴族、中級貴族、下級貴族、平民の順になっている。

皇帝皇后の席から向かって左が役人たちの席で、右が妃賓、女子の席となっている。


隣にいる母上がわかる範囲で誰が誰か教えてくれる。

大体の貴族の名前は覚えているので簡単に覚えられそうだ。

広い通路を挟んで反対側ではあるが徐家の当主である父上と次期当主の弟がいる。弟は二つ下の妹と双子である。

弟も今回が初めての宮廷で、後々の将来のために人脈を作るようだ。まだまだ幼いのに今から人脈作りとは立派な弟だ。


始まりの時間が近づいてきて皆席に着く。

曹家の者も皆参加しているようだが若君の姿はない。宮廷で会おうと言ったくせに本人は来ないのだろうか。

花琳は辺りを見回す。それに気づいた雨桐が耳打ちをする。

「曹家の若様はまだお見えになっておりません。 左前方の皇子の席が空いているので皇子と来るかもしれませんね。」

花琳は左前方を見る。たしかに三席ほど空いていた。

妃賓は既に席に着いているというのに皇子はまだ来ていないようだった。

このままでは遅刻になるんじゃないかという頃、賑やかな声とともに若い数人のグループが来る。

すかさず皇子たちだと雨桐が教えてくれる。

曹家の若君の姿もあった。背が高い若君は遠くからでもよくわかる。

皆がそれぞれ席に着く。

曹家の若君を見ていると目が合った。

花琳は急いで目をそらす。


皇帝皇后が来る合図が告げられる。

皆一斉に椅子からおり、頭を下げてお迎えする。

目の前を通り過ぎていく気配を感じる。

しばらくして表を上げよとの号令がかかる。

初めて見る皇帝はとてつもないオーラを放っており、隣に座る皇后も見とれるほど美しい。

それから料理が運ばれてきて宴が始まる。

楽器の演奏や踊り子の舞はとても豪華で宮廷ならではの豪華さなのだろう。


飽きてきたところで花琳は厠へいくと言って席を立った。

最初は豪華な演奏や踊りが珍しくて楽しんでいたが、ずっと見ていると飽きてくる。

音楽は聞いていてだんだん眠たくなるし、踊りも踊り子が変われど結局はどれも似たような感じで変化がない。



せっかくなのでお庭でも拝見しようかとぶらぶらしていると男女の言い争う声が聞こえる。

宴の前に母上が色々教えてくれたおかげで何となく顔と名前は覚えている。

影から覗くと、黄家の娘と呂家の子息がいた。

黄家も呂家も上級貴族だ。

祝賀会というめでたい日に宮廷で口論とは情けない話だ。

物陰に隠れて二人が去るのを待つ。

しばらくして黄家の娘が呂家の子息に手巾を押しつけて泣きながら去って行った。


少し先に庭園が見えているのに呂家の子息がなかなか去らないため行けない。

目の前を素通りするわけにも行かず、花琳は挨拶だけして庭園に行くことにした。

「ごきげんよう。呂家の御子息殿」

「あぁ。」

チラッと花琳の方を見てたったそれだけ。

振られて機嫌が悪いのはわかるが、せっかく話しかけたのにそのような態度をとるのは如何なものか。

あまり身分の事を言いたくないが、四大貴族の娘と上級貴族の息子。どちらが上かは言わずともわかる。

相手のことをを知らなければ相手の身分など正確にはわからないが話す相手が誰であろうと敬意を払うのが普通ではないか。

呂家の当主が上級貴族の中でも上の官職についていれば態度が大きくても許されると思っているのだろうか。

楊宣のように心を許した相手であれば構わないが、花琳は礼儀作法には厳しい。

それに壁にも目と耳があると言われる宮廷でその言動はさらにまずい。

花琳の身分を知らなかったでは済まされない。

告発して鞭打ちの罰でも与えようかしら。

だが、ここは宮廷。徐家の屋敷ではない。

母上から冷静にと言われたのを思い出し考えを改める。

騒ぎを起こしては父上と母上に迷惑がかかる。

ここは何事もなかったかのように去るのがいいだろう。

花琳はこれ以上呂家の子息に関わらず庭園へ行くことにした。

「待て、庭園へ行くならば私も御一緒しよう。」

「いいえ。一人で行きたいの。」

ろくに挨拶しないかと思えば、急に人を呼び止めるような礼儀知らずのこの男といたら何かに巻き込まれそうな予感しかしない。

花琳は庭園に向かった。


曹家の若君の身長は185cmくらい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ