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川を流れる花の名は  作者: 一条悠
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街でのお買い物②

おまたせしました!

許可された外出時間は日没まで。

日が傾き始めるまでにあと一刻と少し。

早く買い物を済ませないと日が沈んでしまう。



花琳は装飾品のお店へ向かった。

数多くあるお店の中で一番多くの種類の簪を揃えてあるお店で、最初に店を見て回った時に決めていた。

宮廷へ行く用に何か素敵な簪を見つけたい。

好みを店主に伝えて奥からもいくつか出してもらう。

「お嬢様、まだしばらくここにいらっしゃるようでしたら私は奥様に頼まれたお遣いへ行って参ります。」

「ええ、ここで待っているわ。」

どれもいい簪ばかりですぐには決められそうにない。

雨桐は花琳が勝手に店を出ないよう店主に頼んで出かけていった。

どれにしようかと悩んでいると簡単に半刻が過ぎる。

花琳以外にも客が来て帰っていくのも気づかないくらい花琳は没頭していた。

「いい目を持っている。」

すぐ真横から手元をのぞき込まれ、花琳は我に返る。

顔を上げると横には背が高くかなりの美形の男が立っていた。

目が合うと男は花琳を凝視してきた。

「私の顔に何かついてますか?」

美形の男性とはいえ初対面の人にいきなり顔を凝視されるのは心地いいものではない。

男はクスリと笑ってなんでもないよと首を振った。


「三本とも買わないのか。」

花琳の手には三本の簪があった。

どれも素敵で一本がなかなか決められない。

本当は店に入って一番最初に目に付いたものが欲しかった。

だがあまりにも高くて諦めるしかなく、それ以外で気になったものを選んだ。

だが、三本とも買うにはやはり高い。

良い物はそれ相応の値段がする。

男の身なりはとても良さそうだ。きっとこの男なら三本とも買えるだろうが四大貴族の娘といえども花琳には難しい。

「一本だけで結構です。」


三本のどれにするか決められず、やはり他のものがいいかもしれないと思って他の簪も見てみる。

それでも一番惹かれるのは一番高価な簪。

他の簪が見劣りするくらい素敵だがこんなに高価な簪を一体誰が買うのだろうか。

花琳は隣の男の存在を忘れて再び簪選びに没頭する。

持ってる衣や簪を思い出して頭の中で手の中の三本を合わせてみる。

どれがいいだろうか。

この木地の簪がいいかもしれない。

「この簪がいいんじゃないか?」

すっかり忘れていた隣の男の手が横から伸びて木地の簪を取り花琳の頭に刺す。

(これにすると決め始めたところで、この男と意見が被るなんて…)

「鏡を見るといい。よく似合っている。」

男にそういわれ鏡を見る。

手に持って見るのと、実際に刺してみるのとでは印象が変わる。

長々と悩んでいたのがなんだったのかと思うくらいしっくりきた。

一番高価な簪を忘れられない気がしたが、そんなことないかもしれない。

この木地の簪は十分素敵だ。

だが、この男と意見が被ったのはちょっと気に入らない。

花琳は横を見た。

そういえばこの男、この店に何をしに来たのだろうか。

簪選びに没頭しすぎてよく周りを見ていなかったが、ずっと花琳の隣にいるような気がする。

目が合い、男はにっこりと微笑む。

花琳はさっと目をそらし、雨桐はまだかと外を見る。

少し遠くに雨桐が見えた。

花琳と目が合った雨桐は小走りで店に戻ってきた。

「お嬢様、お待たせして申し訳ありません。」

「いいえ。ちょうど決めたところだからよかったわ。」

雨桐は店主に簪の代金を払って、2人は店の外に出る。

「お嬢様、何かありましたか?」

鋭い侍女は主の変化にはわずかな変化にすぐ気づく。

特に何も変わってないと思うがどこを見て気づくのだろうか。

雨桐は店の中を覗くとお辞儀をした。

知り合いでもいるのかと思い店の中を覗くと先ほどの男がこちらに向かって手を振っていた。

花琳はイラッとして雨桐の手を引く。

「早く帰りましょう。もうすぐ日没だし母上が待ってるわ。」


雨桐が一目見ただけでお辞儀をするくらいだから貴族の子息だろうがどこの方だろうか。

身なりだけでなく、上等な香の香りもほのかに漂っていた。

貴族の中でも上物の香を使う人は限られてくる。きっと四大貴族かそれに近しい上級貴族辺りの者だろう。同じ四大貴族の人ならばいずれ再びどこかで会うことになるかもしれない。

それに店の中では気づかなかったが、今思えばどこかで会ったことがあるような気がする。



ありがとうございます

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