街でのお買い物①
お待たせしました。
1人目が出てきます
母上からの許可も出て街へ出る。
滅多に行かない街はいつ来ても緊張する。
「お嬢様、なるべく離れないようにお願いしますね。」
雨桐は花琳がいるからか少し警戒して周囲を見ているような気がする。
包子の屋台や装飾品のお店、布のお店、紙のお店、化粧品のお店など数々のお店が建ち並んでいる。
普段馬車の中からサッと流し見する程度だったため、こんなにも多くの店が並んでいるのかと驚いた。
飴細工の屋台ではリスを模った飴を買った。
さすが職人技といった所だろうか。
細かな細工が施された飴細工はどれも素敵で食べ物とは思えないくらいである。
「すごくかわいいわね。食べるのがもったいないくらいよ。」
花琳は目をキラキラさせている。
その横で雨桐は魚の飴を舐めている。
「リスやうさぎにするとかわいくて食べれないので魚とかを買うんですよ。代わりに食べましょうか。」
「嫌よ。絶対にあげない。」
こんなに可愛い飴を雨桐にあげてたまるか。
だが、雨桐が舐めている魚の飴も十分に可愛らしい。
きっとどの飴を買っても食べるのに少々勇気がいるだろう。
ひとしきり眺めてからようやく飴を口にする。
きつすぎない甘さで優しい味がする。
「美味しいわ。」
あまりのおいしさに顔がほころぶ。
聞けば、この飴細工の屋台は雨桐のお気に入りで、それだけでなく街の女の子からも結構な人気のあるお店だそう。
その後も化粧品のお店や仕立て屋も見た。
「屋敷に来る商社よりたくさん種類があるし、見たことがないものも多くて楽しいわ。」
初めてのお買い物はとても楽しい。
「お嬢様、とても楽しそうですね。こんなに楽しそうなお嬢様を見るのは初めてですよ。」
そう言う雨桐も楽しそうだ。
書物で読んだ時はあまり気にならなかったが、お買い物というものはとても楽しい。
寧ろなぜ今まで街へ来てお買い物しなかったのかと思う。
雨桐は街のことをいっぱい知っていて色んなことを教えてくれる。
たくさんのお店が並んで、たくさんの人がいて色んな声が飛び交う。
馬車の中からでは決してわからない。
実際に街を歩いて初めて、街というものを感じる。
贅沢な暮らしをする花琳とは違う平民の生活も少しだけ覗けたような気がした。
自分の世界の狭さを実感する。
街が好きかもしれないと花琳は思った。
いくつかお店を見て回り、気になったお店は雨桐に伝えておく。後で再び見に来よう。
装飾品は商人が屋敷に売りに来る量と比べ物にならないくらい多くの品物が飾ってある。
きっとどれを買うかなかなか決められないだろう。
のんびりぶらぶらと歩いていると後ろから怒号が聞こえる。
振り返ると後ろから数人が物凄い勢いで走ってくる。
運悪く雨桐はギリギリ手が届かないくらいのとこにいた。
「お嬢様!」
雨桐が叫ぶが足がすくんで動けない。
目前まで迫り目を瞑ると誰かに腕を引かれた。
「大丈夫ですか。」
目を開けると男の人の顔が目の前にあった。
花琳は男の人の腕の中に抱かれていた。
「あ、ありがとうございます。」
何が起こったのか理解が追いつかず、緊張しすぎてお礼を言うのが精一杯だった。
「お嬢様、申し訳ありません。私の不手際にございます。お怪我はありませんか、どこも痛くありませんか。」
雨桐は今にも泣き出しそうな顔をしている。
雨桐が少しはなれたとこにいたのはたまたまだ。
ぴったり隣にいなかったのは仕方がないこと。
「雨桐、大丈夫よ。心配してくれてありがとう。この者が助けてくれたのよ。礼を言うわ。」
花琳は男を見る。
柔らかくてどこか秘めた鋭さを感じる瞳に今時の装いをしている。
「礼には及びませんよ。無事でよかったです。」
男は爽やかな笑みを浮かべる。
きっとこの笑みに倒れる女子は少なくないだろう。
笑った時の笑顔は魅力的だ。
「お嬢様から離れなさい。」
急に何かに気づいた雨桐が花琳の手を取る男の手を払う。
先ほど腕を引かれてから、男は花琳の手を掴んだままだった。
「申し訳ありません。すっかり忘れておりました。」
男は残念そうな顔をして手を離す。
雨桐が横目で男を睨む。
怒った雨桐はちょっと怖い。
「雨桐、そんなに睨まないであげて。先ほどはこの方に助けてもらったのだから。」
「わかりましたよ。行きますよ、お嬢様。早くしないと日が暮れてしまいます。」
雨桐はため息をついて言う。
ちょっと怖い雨桐の機嫌をこれ以上損ねないためにも花琳は場を離れることにした。
「では、ごきげんよう。」
花琳はにっこりと微笑んで男と別れた。
ありがとうございます。
次話は2月中に更新する予定です。




